着物のヤケ。
夏の間は日陰を探していましたけど
日向が恋しくなりました。
猫たちも 窓際の日が当たる場所に陣取っています。
ところで着物も日焼けします。
着物のヤケには二種類ありまして
空気(酸素)によってヤケるものと
光によって起こるものとです。
酸素によってなるものは酸素に直接触れている部分がヤケるので
箪笥に仕舞いっぱなしの着物が
畳まれた外側だけヤケていて いざ着ようと広げて
初めて気が付かれることが多いようです。
光によるものは
管理の悪い呉服屋のショーウィンドウでも起こります。
ものによっては一日でヤケるものもありますし
室内に展示していても照明でヤケが起こることもあります。
ヤケとは結果としては退色なので
色の濃いもののほうが目立つように感じますが
実際は水色や薄紫、グレーなどが目立ちます。
ぼかしと思ったらヤケだった、とか
マネキンから脱がせたらおはしょりの内側だけ色が濃かった、など
笑えない話も聞いたことがあります。
一番はっきりするのは 訪問着などで
仮絵羽という着物の形に仮仕立てにしてある着物です。
脇などの縫い目の部分をよく見ますと
表と内側で色が違っていることがあります。
光にも酸素にも晒されにくい縫い目の内側はヤケないのです。
同じことが仕立て上がった着物でも起こります。
お母さんから貰った着物の裄を長く直そうと
解いたら縫い目の内側は色が違っていて
そのまま裄出しすると色の差が段になってしまうことがあります。
紬よりも後染めのものに多く起こります。
ヤケ易いかどうかを判断するのに
堅牢度という基準があります。
これは生地の質ではなく染色の検査です。
本場結城紬は堅牢度の基準が高いことで知られていて
堅牢度の低い染料は使うことが出来ません。
草木染めでも 植物や染め方によって
堅牢度に差がでます。
藍は強いほうですが(堅牢度と色落ちは別物です)
花弁を使用する染めは発色はきれいでも
堅牢度が低いものが多いです。
部分的にマダラに退色するのは困りますが
着ていて自然に全体が馴染むように色が変化するのは
着物と一緒に齢を重ねるるようで好ましく感じます。
特に草木染めでは 使い込まれた家具が艶を増すように
着る人と共に深みを増すのは愛おしいものです。