麻・苧麻・ラミ―どう違う?
ニッポンの夏。
サラリと透ける夏着物を着て、日傘をさして涼しい顔でお出かけ。
イイですよね~~~ 見とれてしまいます。
夏の着物は種類が多くて (絽・紗・羅の違いはこちら)
難しそう、暑そう、と敬遠されがちですけど
なんのなんの。麻の着物なら涼しくてラクチンです。
じゃぁ 麻の着物を着てみたい~と探すと
麻にも種類がある!? どゆこと?
はい、説明いたします。
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夏の憧れ、上布。
日本各地に「上布」と名の付く布があります。
越後上布、能登上布、近江上布、宮古上布、八重山上布。
上布とは読んで字のごとく「献上」の上であり「上質」の上なのです。
かつては 上布の下に中布、下布があり
経糸の本数や糸の原料で区別されていました。
上布は本来 麻織物ではなく 苧麻織物を指します。
苧麻と麻は 糸になると似ていますが 糸の細さが違います。
それは 植物自体が 麻が桑科の1年草なのに対し
苧麻は イラクサ科の多年草なのです。
苧麻は績む、という大変な労力を必要とする作業の末に
糸になります。1反分の糸を作るのに数ヶ月かかるのです。
それだけの労力の上で織り上げられた布ですから
昔から 高貴な人のみが着ることが出来る高級品でした。
夏着物の中には 苧麻、麻、ラミーが混在していて
混乱の元になっているようですが
洋服でラミーと言えば 苧麻のことなのですが
手績みの苧麻は つくる工程の困難さと
作る人の高齢化で 極僅かしか生産されていません。
その変りに登場したのが
治末期頃に輸入され始めた紡績麻糸です。
これが 何故か和装業界では 手績みの苧麻に対して
ラミーと呼ばれていて
伝統工芸品の小千谷縮
(じざいやで6万円台~売られている小千谷縮。
手績みの苧麻をいざり機で織ったものは重要無形文化財の小千谷縮)や
綿麻、みやこ麻織りなどに使われています。
手績みの苧麻の良さは 面倒な工程によってケバや節の無い(というか極々僅かな)糸であること。
ラミーは一度砕いた麻の繊維を固めて糸にしたもので
いわば 屑肉を寄せ集めて成形したサイコロステーキみたいなもの?
対する 手績みの苧麻は国産黒毛和牛のヒレを手でカットしたみたいで
長年使ってもケバ立ちやスレが出ません。
もちろんラミーにはラミーの良さがあって
普段にどんどん着て 自宅でガシガシ洗うのに
惜しげが無く 夏の普段着物として最適です。
上布は 夏の大事なお洒落着物。
もちろん自宅で手洗いも出来ますが
質の良い帯で 涼しい顔で着れば
女っぷりも グッと上がる、てもんです。
ラミーにしろ 苧麻にしろ
夏着物ファンの頼れる味方ですから
短い夏に たっぷりお楽しみください。
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この頃の夏は短くないですからね~
濃い目の色でしたら 6月半ば~9月上旬まで3か月着ちゃいます。
1年の四分の一、麻を着るのなら
たっぷり楽しみましょう。
自分で洗えるのだから(洗い方は先日書いた ここ)
大汗かこうが、雨に濡れようが、無問題ですからね。
帯も麻や植物繊維の八寸(帯芯が入らない)にすれば
怖いもんなし、です。
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