着物の湯のし と 地直し
みなさんが反物を買われて
着物に仕立てようとなさる時、
仕立と共に「湯のし」とか「地入れ」という加工名を
ご覧になったことがあると思います。
それと良く似た言葉で「地直し」というものもあります。
良く似た言葉ですが 内容は全く異なるので
説明しておきたいと思います。
まず、湯のし、もしくは 地入れ というのは
反物を裁断して 仕立てる前に
生地幅や地目を整えるための工程です。
折角 採寸しても生地が歪んでいたら
仕立上がりも歪んでしまいます。
それを防ぐために
布に蒸気を当てて シワや縮みを伸ばして
地目を整えながら反幅を調整していく作業です。
湯のし機、という機械を使うことが多いですが
絞りや特殊な生地の場合には
二人掛かりで手作業で行なうこともあるので
その場合は 手のし、と呼ばれます。
先日、仕立士さんと話をしていたら
縮緬は とても生地が狂いやすく
裁断する前にきちんと湯のししていても
仕立る間に生地が伸びてしまったりするので
裁断してから2日ほどは衣桁に掛けて
歪みを直して 仕立てて又吊るして歪みが
出ないかをチェックする手間が必要なので
時間が掛かるそうです。
でも 一番難しいのは 紬の仕立で
ごまかしが効かないから・・・と。
うちの反物は仕立士さん泣かせだそうです。
でも その分遣り甲斐もある、という
嬉しい言葉を頂きました。
それに対して 地直しとは
商品としての反物になる前の段階で
織りムラや 染加工の場合には
染料の飛びなどの不良ヶ所を修正する作業です。
また、どうしても落ちないシミなどを
完全脱色して白地に戻してしまいます。
そして新たに 周囲の色目に合わせて
色注しを行なう、という
経験と勘を必要とする作業です。
と、いうのも
同じ染料でも 生地の種類によって
発色が違うし 湿度や温度にも左右される
難しいものなのです。
反物が着物になるまでに
表には出ないけど 沢山の人の手を通って来ます。
作家と呼ばれる人たちの作品でも
名前の出ない様々な人たちの手がなくては
出来上がらないのです。
仕立屋さんも国内はギリギリの人数です。
そういった職人さんも減っているので
作家さんが残っても 着物にならない、という事態が
起きる可能性が出てきています。
着物、結構絶滅寸前です。。。
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