着物を織る。
織り体験をされたことのある方は
判ると思いますが
布を織る、といのは
基本的には 1つおきの経糸を上げ下げして
その間に 緯糸を入れていく、という作業です。
これでシンプルな平織りの布は織れます。
経糸や緯糸に色違いの糸を使えば
縞や格子も同じ織りかたで作れます。
私も織り体験を何度かしましたが
もし 柄を織り出すのなら どんなにか大変だろう、と
思ったものでした。
例えば 袋帯。
唐織や糸錦の 細かく緻密な柄。
織によって文様を描き出す場合には
1本おきに単純に経糸を上下するのでなく
文様に対応して 経糸を選別して引き上げて
そこに緯糸を入れる、という作業になります。
経糸の上げ下げが非常に複雑になるわけです。
しかし 数千の数がある経糸から
その都度 文様に合わせて経糸を選び出して
持ち上げるのは あまりにも大変です。
ですから 柄に対応して上げる経糸で
同時に引き上げる糸を一まとめにする工夫がされました。
そのために作られたのは
空引機(そらひきはた)と呼ばれる機で
なんと 機の上に板を渡し
そこに乗った人間が 経糸の束を吊るした通糸(つうじいと)を
選んでは引き上げ、
そうしているところへ下の機にいる織手が
緯糸を通し打ち込んで 織進めていきます。
上にいる引き手と下の織手の息が合わないと
織ることができません。
想像すると なんだか凄い光景だと思いません?
ところが 1801年にフランスで発明された
ジャガード織機が 一気に労力を減らしました。
このジャガード機で
経糸を制御すために使われるのが 紋紙です。
経糸を操作するために パンチカードのような
小さな穴を開け どの糸をいつ持ち上げるかを
コントロールしていくのです。
緯糸1本につき、一枚の紋紙が作られ
また、色糸の色数分の紋紙が必要です。
1本の帯で 簡単な柄でも8,000枚
ものによっては20,000枚以上、
トラック1台分が必要とされます。
紋紙に柄のデーターが保存されるので
誰にでも いくつでもその柄が織れるようになったのです。
かつては この紋紙も手仕事で
柄を方眼用紙に写し それを元に
1つ1つ穴を開けていく職人さんがいました。。
1つでも位置や順番を間違えれば
その帯は難物となってしまう 神経を使う作業です。
そんな紋紙も 今はフロッピー1枚に取って代わられました。
すぐにコピーして
あちこちの産地で作ることもできるようになったのです。
今日 新作として発表された帯も
明日には 地方や中国で同じ柄が
織られているかもしれないのです。
しかし、フロッピーは既に生産中止になってしまったので
USBに変わっているところもあるそうですが
機械を変えるにもお金がかかるので
フロッピーのままの機場が多いですし
西陣以外に地方では まだ紋紙が使われているところも多いです。
紋紙は1本の帯を織るにも
柄によっては軽トラック1台分ほどの量が必要なので
場所を取ります。
なので 保管のため倉庫が必要になり
西陣では市内に置き場のための土地確保に滋賀県などに
機場を移動した工房も多かったのです。