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大正ロマン・昭和浪漫?
この頃 ちょっと下火になったようですが
大正ロマン着物、というものがあります。
実父は大正時代に生まれていますので
私にとって大正とはそれほど遠いものとは感じませんが
実は 現存する大正きものは意外と数が多くありません。
それは 関東大震災と戦争によって焼かれたり
また、焼け残ったものの、戦後のものの無い時代に
染め直されたり 作り直されたりで
姿を変えているものが多いからです。
大正というのは きもの業界においては
訪問着と名古屋帯が考案され
大正デモクラシーや白樺派、または竹下夢二に
象徴されるような
自由とゆとりのある時代であり、
きもの以外でも多くの新しいものが生み出された時代です。
産業、工業様々な分野が活気に溢れ
受注生産が主だった晴着が既製品として
百貨店の展示会に並ぶようになりました。
この頃から展示会商法が発展してきたのですね。
地元の百貨店で着物が買えるようになると
東京では 江戸趣味や東京好みと呼ばれる
縞や小紋が流行したのですが
京都の染め工場では配色たデザインが
東京好みを理解しがたく
その上 京友禅の需要が減っていたこともあって
三越が直営の染め工場を高田馬場に設立しました。
それに続き 白木屋(東急日本橋店)や
高島屋も直営の工場を近くに建てたので
元来が神田中心だった東京友禅や型染めなどの
染色業者が 高田馬場や下落合の
神田川上流に沿って移住しました。
その頃の名残が今も何件か残っています。
しかし、当時の腕の良い一流職人は
いわゆる職人気質で 工場に雇われるのを嫌い
直営工場では最高級のものは作り得なかったそうです。
きものが日常のものとしてあったこの時代には
女性も男性にも粋好みの中にも
江戸、明治からとは違うモダンで斬新な
新しい型を作った時代と言えるでしょう。
既に 大正どころか昭和ロマン、という言葉もあり
朱色を多用したコーディネイトを代表に
ちょっと懐かしい雰囲気です。
この先、何十年か後に
令和のきものとは どのような時代であったと言われるのでしょうか
多くの良いものを失った次代だと言われないよう
今あるものを 育てていきたいと思います。