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御所解き紋様


昨日の茶屋辻模様の中で 御所解き、という言葉が出てきましたので
今日は御所解き、の説明を。
そう言えば、私は前世を視てもらった時に
「御所に縁のある衣装のデザイナー?」だったそうです。

御所解、と簡単に言いますが思えば不思議な名前です。 
描いてあるものは 宮中の楼閣や庭の様子。
四季の花や池、流水、扇面や御所車などの道具類などで
全体に雅で華麗な柄です。
元々は江戸時代の公家、大名、武家の女性の
小袖や夏の帷子に用いられた意匠で
町中で見られるものではありませんでした。
職位や家筋によって模様付けが決まっているものもありました。
源氏物語のモチーフの小道具を描いて その場面を連想させる、など
教養を問われるところもあり、上流階級に好まれたのです。

ところが 江戸末期に文久の改革で
人質として江戸に住まわされていた大名の妻子が
国に戻ることとなり、
今まで 大名の御用を引き受けていた呉服商が
大打撃を受けました。
売り先の大名が居なくなってしまったのです。
そこで 大名家用の品物を市中で安売りしたところ
今まで見たことのない柄に商家や町人が飛びつきました。
このような品は「御殿もの」と呼ばれました。

また、大名が国に帰ると同時に
御殿女中も一斉に職を失い宿下がりとされましたので
不要になった小袖は古着として売りに出されました。
この時は古着ですから 解いて洗い
表地と裏地を別々に売ったりしましたので
これは「江戸解」と呼ばれました。

明治になり 御殿模様や 江戸解き模様を模した
新しい着物が作られるようになり
御所車や扇面、御殿の様子などを意匠化したものを
「御所解」と呼ぶようになったのです。

本来、公家の好んだ柄は宮中で使われた道具や建物を
大らかに、華やかに描いた小袖で
江戸の武家が好んだ柄は風景画が多かったのですが
宮中も武家もなくなり、
柄のもつ意匠も伝えられなくなって
現在は訪問着などの模様の様式の名称となっています。
格の高い柄、とされますので紬にはあまり合わせることはしません。

 

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