iPS細胞…活用されています!
今年の8月に東京大学医科学研究所が発表した【がん化メカニズム】に関する研究をご存知でしょうか?
難しい内容なのですが、この研究を要約すると以下の通りです。
① がんは、遺伝子配列の傷(遺伝子変異)の蓄積により発生すると考えられています。
② 生体内で細胞初期化(iPS細胞化)を誘導できる遺伝子改変マウスを使用することで、全能性(1つの細胞から個体を構成するすべての細胞をつくりだせる能力のこと)の特徴を持つがんである胚細胞腫瘍(一般的に生殖細胞が起源となって発生するがんのこと)の発生過程には、遺伝子配列の傷(遺伝子変異)とは独立した、エピゲノム制御(DNAのメチル化やヒストン修飾など、DNA塩基配列の以外のクロマチンの高次構造の変化を介する遺伝子発現制御のこと)の変化にもとづいた細胞の初期化が重要であることを明らかにしました。
③また、がん細胞をiPS細胞へと変化させることでがん細胞の性質を打ち消すことに成功しました。
④この結果は、このがん細胞の発生は遺伝子配列の傷(遺伝子変異)のような不可逆的なプロセスを経るのではなく、可逆的なエピゲノム制御の変化を介して起こることを示唆しています。
⑤Dmrt1遺伝子が胚細胞腫瘍の発生や、細胞の全能性状態への初期化(リプログラミング(細胞のもともとの性質を他の性質に変化させること。なおリプログラミングは遺伝子の配列情報の変化ではなく、エピジェネティックな変化によって誘導される。))に関与すること、さらに、この特徴がヒト胚細胞腫瘍の治療標的となることを見出しました。
⑥がん細胞を経由するiPS細胞の新しい樹立経路を提示するとともに、特定の遺伝子変異が見つからないがんの発生メカニズムの解明や、その特徴に着目した新規がん治療法の開発につながる可能性を示しました。
詳細はこちらをご確認下さい。
https://www.amed.go.jp/news/release_20210819-02.html