幸運の赤いタクシーと青い蜂
「今日の新聞の一面、見て! すごくいいニュース!」
ルームメイトのジャップが、新聞を片手に嬉しそうな顔でやってきました。
ジャップが手にしていたのは「バンコクポスト」という英語新聞。タイの英語新聞といえば「バンコクポスト(Bangkok Post)」か「ネイション(The Nation)」と言われるくらい、人気のある新聞のひとつ。タイに住んでいたころ、わたしもバンコクポストには目を通していました。英語の勉強にもなるし、日曜日の「PEANUTS(スヌーピー)」の漫画がたのしみで。笑
1面にはその日も いろんな写真と見出しが躍っていました。
そのひとつに、タクシーの運転手さんが、ナンバープレート「7777」の赤いタクシーの前に座り、親指を上げて(good!いいね!というジェスチャー)にっこり笑っている写真が目に飛び込んできました。
見出しには、
「あぁ赤ん坊よ! その日は運転手さんの幸運な日だった」
とあります。
記事はこんな出だしから始まっていました。
タクシー運転手のサイヨンさんは、その朝仕事に出かけるときに、「今日は絶対に幸運な日になるに違いない」と確信していた。なぜなら、その日は07年07日07日で、彼の運転するタクシーのナンバープレートは「7777」だからだ。そして彼は正しかった。
読み進めていくと、サイヨンさんがその日の早朝、タクシーを運転しながらある通りを通りかかったとき、ひと組のカップルが通りから転がり出てきたそうです。なんと女性の方が産気づいている! タクシーに乗せて病院に向かいますが、病院に着くまで間に合いそうもありません。そのままタクシーの後ろの席で女性は出産。無事に女の子が生まれたそうです。サイヨンさんは出産に立ち会った後、病院へ送り届け、赤ちゃんと赤ちゃんを産んだお母さんはそこで必要な処置を受けてそのまま帰宅。サイヨンさんはその日の仕事終わりに そのカップルの家を訪ねて様子を見に行き、その後お寺にお礼参りに行った、という内容の記事でした。
こういうニュースが、新聞の「1面」を飾ってくるタイ。
わたし、いつも楽しみに新聞を見ていました。
「7777」も「07年07日07日」も偶然にすぎない! と言われたらそれで終わりなのですが、そこに見えない力というか、奇跡というか、そういうものの存在を感じさせるようなニュース。そしてそれを堂々と素晴らしい出来事として、新聞の「1面に」持ってくる!
こういうところが、本当にタイの好きなところ。
そして、新しい命の誕生に関わることになった運転手さんが、そのことを素晴らしいことだったと感謝し、その日のおわりに「お礼参り」する。そんな姿にもこころがじんわり…。
また、タイの新聞やテレビで驚くことのひとつに、
「包み隠さず見せる」
ということもあります。例えば、ぐちゃぐちゃの事故現場の写真、意識不明で入院中の有名俳優が人工呼吸器のまま寝ている顔写真、遺体まで…
すべて見せます。
それらの映像や写真はとても衝撃的なのですが…
隠さない。
特に、英語新聞よりもタイ語新聞の方がびっくりするくらい目を背けたくなる写真も満載です。
日本はどちらかというと見せない方が多いのかな、と感じます。「配慮する」という名目の下で。タイの新聞は、そういう意味でもかなりのカルチャーショック。
でもすごく人情味というか、人間味というか、それを感じるのです。タクシー運転手さんの1面記事もそうですが、すごく人間臭くて嘘がない…。
だからとても惹きつけられる。
タクシー運転手さんのぴかぴかの笑顔を見ながら、なんだかほっとするこのきもち。赤ん坊はその後「セブン(7)」という名前になったそうです。笑
素敵なこと、奇跡のような出来事は、日常のいろんなところにあふれている。日々流れてくるニュースは、今は重たい気持ちになるものが多いのかもしれないけれど、足元にある美しさやよろこびにも意識をいつも向けていたいな……、ナンバープレート「7777」の赤い車とすれ違い、そんなことを畑で想う朝。
少しずつ、今年お近づきになれた青い蜂、ルリモンハナバチくん。
青色ブーツがおしゃれ✨
ハネにもアオをひめている🥺
飛ぶときも猫背😁
かわいい☺️