今日会社辞めてきたよ
「俺今日、会社辞めてきたよ」俺リチオ40歳、8歳年下の妻チナツに突然告白した。二人は2年前に結婚して子供はいない。
チナツは、突然の告白にショックを受けた。「なぜ前もっていってくれなかったの?」「明日からどうするの?」「私のことなんかどうでもいいの?」
リチオは、上場している不動産会社で10年ほど働き、転職をして地元の不動産会社で賃貸物件の管理や不動産売買の仲介をする仕事をしていた。年収は500万円、チナツは安定した職業の人と結婚したと思っていた。
チナツは、別の不動産会社の営業事務の仕事をしていたので、すぐに生活に困ることはないが、将来が不安で仕方がなかった。
「なぜ辞めたの?」そう聞かれたリチオは答えた。「社長に仕事の成績について問い詰められたので『であれば辞めます』と言ってきた」。リチオは、何かにつけて利益利益という社長の考え方に辟易していた。「お客様の事情よりも会社の利益を優先させる」「下請けを泣かせてでも利益は確保する」そんな考え方についていくことはできなくなっていた。
「明日からどうするの?」
「俺は独立したい」リチオは答えた。
リチオはサラリーマン時代に、宅地建物取引士と行政書士の資格を取っていた。いつの日にかは独立したいと考えていた。今がその時ではないか。
しかし、リチオの貯金は200万円しかなかった。バックアップしてくれるような人もいなかった。今思えばリチオの挑戦は無謀なものだったのかもしれない。
つづく
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