転生物語としての『機動戦士Vガンダム』
Youtubeのガンダムチャンネル配信で『機動戦士Vガンダム』を久しぶりに観た。
Vガンの本放送を観たときワタシは大学生だった。
模型との馴れ初めはガンプラ。しかしながら、初代ガンダムは最初のガンプラブームの時の再放送。ΖとΖΖも部活や塾と時間が被っていて、本放送をきちんとは見られていなかった。
そんなワタシにとって、Vガンは初めてガンダムをリアルタイムに追える喜びとともにあった。だから、今でもガンダムシリーズのなかでもとりわけ思い入れが強い。
そんなVガンについて、ぼんやりと考えていたことがある。
「シャアとアムロを転生させて、それぞれ逆の立場や環境に放り込んだ物語ではないか」と。
配信を観たのをキッカケに、少しだけこのアイデアと向き合ってみようと思う。
ネタバレや作品のイメージを壊されたくない方は、読むのをここで止めよう。覚悟ができた方は、他愛のない戯言にしばしお付き合いを。
ブロンドと赤毛
ウッソとシャア、クロノクルとアムロは生まれつきの部分というか、形質的な要素がそれぞれ似ている。
ウッソはシャアほどバリバリの金髪ではないが、やや濃い色のブロンドで白人系の出で立ちだ。ガンダムシリーズの主人公の多くが日本人寄りの肌・髪色であることを考えると異色だ。制作側に何らかの狙いがあったのだと思う。
一方のクロノクルも赤褐色のクセ毛で、肌の色もウッソよりは濃い。長髪・短髪の違いはあれど、同じ髪色の天然パーマを持つ日系二世・アムロと同じである。
加えてウッソ(シャア)とクロノクル(アムロ)をつなぐ少女・シャクティ(ララァ)が褐色の肌に黒髪であることも、単なる偶然として見逃す気にはなれない。
アースノイドとスペースノイド
次に社会的・後天的な要素に注目する。いちいち書くと面倒くさいので、ウッソとアムロ、クロノクルとシャアの共通点を一覧表にしてみた。
ウッソとして生まれ変わったシャアは、独善を暴走させたスペースノイドたちの侵攻と戦うハメになったのである。しかも白いモビルスーツ・ガンダムに乗って。逆シャアの尻ぬぐいや罰ゲームをやらされてる感がでてくるなぁ。
レジスタンスという、思想的に片寄った環境のなかではあるのだけど、両親をはじめとする大人たちからは曲がりなりにも愛情を受けられる環境ではあったウッソ(シャア)。
MSパイロットとしての成長についてはご存知の通り。「スペシャル」な活躍で最後まで生き残った(その分、悲しい経験も重ねちゃってるけど)。
装甲越しに敵パイロットの鼓動を感じ取り、最終話ではオデロをはじめとする死者の念を受け取ってエンジェルハイロゥのキールーム破壊を思いとどまる。シロッコも「ニュータイプのなり損ない」とは言わないだろう。
対するクロノクルはというと、ザンスカールでの権力争いに巻き込まれる中で、カテジナ以外に信頼できる味方の存在が劇中にはみられない。ウッソにとって強敵ではあったものの、結局ラスボスにもなれない物足りないライバルで終わってしまった。
カミオン隊潜入中に寝ぼけたスージィの面倒をみたり、最終決戦ではカテジナの声に気を取られてリーンホースJr.のとどめを刺し損ねて結果的に特攻を許してしまったりと、所々に垣間見える甘さは、ブライトに殴られてた頃のアムロに通じるだろうか。カガチに「愚劣な青二才」と断じられるのもむべなしだ。
物語の解釈は見る側の自由だ
さて、慣れない映像作品のレビューが長くなってしまった。
ただ、ウッソの母親のファミリーネームはシャアのパートナーと同じ「ミゲル」だ。クロノクルのファミリーネーム「アシャー」は「シャア」を逆にしたアナグラムでもある。
細かい演出にも気を配るあの富野御大が、何の意図もなしに、こんな憶測を招くような主要キャラの名前にするとも思えないのである。
ワタシは隠された制作側の意図を感じ取れたのか、あるいはただの拡大解釈なのか。
まぁこんな切り口もあるよねと思っていただければ、それだけでも幸いである。