車窓の行方
景色を見られない電車に乗せられる?
まるで昔のテレビ番組「電波少年」みたいだ。
JR東日本が発表した新型車両・HB-E220系の完成予想図に驚く。
客を乗せる列車なのに、窓が少ない。
「高崎・盛岡エリアに新型車両を投入します」
(JR東日本ニュース:2024年11月21日付)
驚いたのはワタシだけではないようで、SNS上でも様々な反応がある。
ただ、言われているほど悪いモノなのだろうか?
とりあえずJR東日本の言い分を聞いてみよう。
「乗りものニュース」のインタビュー記事(※1)では、
「扉数を片側3か所とした他、車椅子対応洋式トイレや機器室を設置しているためです。」と素っ気ない。
情報を補いながら、もう少し細かくみていこう。
デザイン画を見ると、新潟や秋田に導入された最新型ディーゼルカー・GV-E400系によく似ている。ただ、GV-E400系の扉の数は片側2か所だ。これが3つに増えるということだ。
これで通勤通学の人が多くなる時間帯でも、乗り降りがスムーズになる。
近年では戸袋窓が省略されるのは普通のことだ。まず、これで窓が減る。
車椅子対応洋式トイレはGV-E400系にもついていて、その部分に窓がないのもHB-E220系のデザイン画と同じ。そもそも、GV-E400系自体もこのトイレのある側は窓が少ない。
機器室はおそらくGV-E400系より増えている。
というのは、GV-E400系はディーゼルカーであるが、HB-E220系はハイブリッドカーだからだ。
しかしながら、JR東日本の従来型ハイブリッド車(※2)の屋根に乗っていたバッテリーがデザイン画には描かれていない。これが客室内に移されるのであれば、機器室が増える理由としてつじつまが合う。
つまりJR東日本としては、GV-E400系を下敷きにしてサービス向上や環境に配慮した要素を足したから、しかたなく窓を減らすことにしたと言いたいのだろう。
そう、「しかたなく」だ。
もしJR東日本が鉄道車両の窓を減らすことをネガティブな要素ととらえているのなら、可能な範囲内で窓を残そうとするのではないか?
そう思ってデザイン画を見直すと、一つの疑問が浮かぶ。
反対側ってどうなってるの?
従来のディーゼルカーであれば、2両編成の場合は片運転台の車両を背中合わせに連結する。2両ともほぼ同じ形で、うち1両はトイレを省略することが多い。GV-E400系も例外ではない。
対してデザイン画では2両目もトイレがない部分以外は窓が増えていないように見える。ほら、やっぱり窓を減らしているじゃないか、との声が聞こえてきそうだ。
ただ、JR東日本のハイブリッド車はこれまで、メンテナンスの都合からか、機器の向きや配置を几帳面に揃えている。
となると、デザイン画に描かれていない裏側には今までの車両と同程度の窓が残されているかもしれない。GV-E400系がそうであるように。
というか、左右両側に機器室を設けてしまうと運用に支障が出そうだ。
通路が狭くなるので、ワンマン運転時のスムーズな降車の妨げになる。防犯カメラがあるとはいえ、運転席からの視野が狭まれば客室の様子もわかりにくい。無賃降車を許してしまってはコスト削減の意味もなくなる。
そう考えると、デザイン画に描かれていない裏側の窓を少なくする理由が乏しいとさえ思えてくるのである。
まぁ、実物がどうなるか見てみよう。批判も議論もそれからだ。
注釈
※1:「埼玉県唯一の非電化路線」が大変化!新型車両が「ロングシート」になったワケ JRに聞く(乗りものニュース:2024年11月28日付)
※2:小海線のHB-E200系、仙石東北ラインのHB-E210系、そして「リゾートしらかみ」などの観光列車で使われているHB-E300系
※2025年2月4日:細かな言い回しなどを修正しました