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「演劇集団キャラメルボックスを開けてみた」Part.5

城西国際大学メディア学部キャンパス誌「Update Vol.2(https://online.fliphtml5.com/kbtoy/ayak/#p=1)」で行ったインタビューの完全版。
これを読めば、あなたもキャラメルボックスのことをもっと知りたくなる!
7つに分けて掲載しております。こちらPart5です。是非ご覧ください!


Part5 成井さんへ

成井 豊 さん

——演出されるときに大事にされていることはありますか?

成井:長年演出をやっているので、若い頃に比べるとかなり変わってきていますね。かなり性格的にせっかちなんですよ。若い頃は、すぐできない役者たちが許せなくて怒ってばっかりいましたけど、今は割とすぐやってくれちゃうし、あと性格的にも昔よりは若干せっかちでなくなってきたところがあって。なので、せっかちだって昔から分かっていたからつい怒りたくなっちゃうけど、自分はせっかちなのだから待てるときは待たなきゃいけないのだってことを最初の頃から思っていて。でも待てなかった。待たなきゃいけないんだって分かっていても待てなかった。
40代くらいからやっと待てるようになって、今はそんなにせっかちじゃないと思うんだけどね、流石に。役者の力量がついたからそんなに頭にも来ないし。30代くらいまでは千秋楽の前日まで劇場に入っても早入りして稽古して、とにかく千秋楽までに少しでも良くしないといけないと思っていた。でも結局時間切れで、千秋楽になっちゃって終わっちゃった。また完成しないで終わっちゃったよってことの繰り返しで、ずっと怒っていたのですよ。
「こんなはずじゃない、僕のお芝居はもっと面白いはずなのに、なんでこいつらできないのだ」
っていうので、30代まではそうでした。
でも今は初日が開いちゃうとそんなダメ出しはなくて。ここのところがちょっと微妙なんですけど、自分の思い通りの芝居が出来上がっているわけじゃないんですよ。だけど、「これでもいいよ」と思う。キャラメルの役者たちがやってくれている、一本の芝居で台詞って1500くらいあるのですけど、1500の全ての台詞が書いた私の想定通りに喋ってくれているわけじゃない。でも、「これもありだな、これもありだ」っていう風に許容できる。昔は許容できなかったけど、今はほぼみんな許容できる範囲でやってくれる。こうしてほしいっていうものをがむしゃらに役者に共有しても、役者を拘束するだけなので、そしたら僕の要求するものをなぞるだけになってしまうからいいことじゃないだろうとも思いますし。
ずっと性急にならずに待とうと思い続けてきた。この待つっていうことが、自分にとっては、ずっと演出家として最も大事だった。今は待てます。

——キャスティングはどのように決めているのですか?

成井:新作の場合は脚本を書く前にキャスティングをするので、私の劇団で上映する初演は全て当て書きです。再演は現勢力の中でこの役に最も合っている人っていう風にベストキャスティングを組みます。誰もいない場合はゲストを呼ぶこともあります。お客さんは結果しか見ていませんけど、私たちはそろそろ〇〇をやりたいねっていう話が出たら、その仮キャスティングを組んで、組めないことが多いです。この役もこの役もこの役もできる人がいない。じゃあ、この再演は諦めようっていう風に企画で立ち上がっても企画段階で終わってしまうっていう再演はたくさんありました。『クローズ・ユア・アイズ』でいえば、23年空いちゃいましたけど、初演に負けないぐらいのいいキャスティングができた。だから再演しようっていう風に思ったんですね。再演というのは基本的にほとんどそうです。いいキャスティングが組めたから再演している。それぞれの役にすごく合っている役者が揃っている。
この“当て書き”とか“合っている”っていうのは、多田が今回(『クローズ・ユア・アイズ』)でいうと芥川龍之介の役をやっているのですけど、多田なら芥川に合っていて、芥川ができるから多田にやってもらうじゃないんです。そうじゃなくて、”できそう” 。多田に合っているからできそう。“でも、できるかどうかは分からない。できてほしい。”っていうのが僕の当て書きです。できるに決まっている役をやってもらっても面白くないじゃないですか。本人もきっと面白くないのでね。

キャラメルボックス
『クローズ・ユア・アイズ』(2023) (c) 引地信彦

Part6へ!

多田さん・鍛治本さん 役作りについて
https://note.com/jiu_uda_seminar/n/n03a0d597508a


最新情報!(2024年3月時点) 詳細は各HPをチェックしてください!

<演劇集団キャラメルボックス 次回公演予定>
キャラメルボックス2024 クリスマスツアー
2024年12月 大阪・東京公演

<成井豊さん 最新作、鍛治本大樹さん 出演予定作品>
NAPPOS PRODUCE 『湯を沸かすほどの熱い愛』
【原作】中野量太 【脚本・演出】成井豊
2024/5/18(土)~5/26(日) @サンシャイン劇場
2024/6/1(土)~6/2(日) @サンケイホールブリーゼ

<成井豊さん 脚本・演出・作詞、多田直人さん 出演予定作品>
『無伴奏ソナタ-The Musical-』
【原案】 オースン・スコット・カード 【翻訳】 金子司
【脚本・演出・作詞】 成井豊 【音楽】 杉本雄治
2024/7/26(金)~8/4(日) @サンシャイン劇場 ※大阪公演あり
2024/8/10(土)~8/11(日) @森ノ宮ピロティホール

村上

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