04 あいた口が塞がらなくなった。のが吉だった件
これは様々な奇行を息を吸うように繰り出す相方による、記念すべき最初の珍事である。そして、幸せが歩き出す。
ひと昔前、地球には、コンポというそれなりにでかい機械がありました。
ズバリ、音楽を聴くための装置である。
パッと見ため、3つのカラムみたいに分かれていて、両サイドがスピーカー、真ん中にプレイヤーやアンプが層になっていた。
その真ん中の層に、CDをかけるプレイヤーやらカセットをきくプレイヤーやらがそれぞれあり、層のように積み重ねられていた。
■ おばあちゃんのミニコンポ
その巨大なシステムをひと回り、ふた回り、小さくしたものがミニコンポである。
ちょうど、私たちの世代が中学生になる時、それを自分の部屋に持つのが、流行りに流行った。
中学ステイタスである。
その前時代は、CDラジカセというなぜか丸みのある、深海を泳ぐサメのような色・形をしたやっぱり同じように両側にスピーカーのついた、そして出前一丁のような取っ手が着いた一体型が流行していた。
話を戻そう。
そのミニコンポは、ぼくが祖母に買ってもらったものだった。
祖母に育てられたぼくの身の回りのモノは、ほぼ全て祖母が買い与えてくれたものだったが、ある程度オトナになったこの部屋の中で、その最長老がミニコンポだった。
祖母は、2年前に亡くなっていた。
この部屋の中で、そのミニコンポだけが、少しダサく浮いた存在だったけど、大事に使っていた。
朝である。
昨日は、改めて出会いの日であった。
編集者とデザイナーあることを知った我々が再会を誓った日であった。
木曜日の仕事を終えた僕らは、新宿の伊勢丹の前で待ち合わせると、
新宿三丁目にある居酒屋に入った。
母と息子、親子ふたりで営む年季の入ったその居酒屋が好きで、度々通っていた。
せがれが同じ美大のOBだったことが分かると、一層通いやすくなった。
気心知る店で、彼女と初めて対面で話した。
話は弾んだ。中盤、
彼女『ひとつ聞いていいですか?ゲイですか?』
直球である。
物腰と場所柄、それらの条件から導き出したようであった。
思えば、この頃から、彼女の片鱗は隠れていない...
そして、おしゃべりとお酒は尽きず、
そして、終電はなくなり、
そして、朝がきた。
朝である。平日なので、仕事である。
起こさないように支度をして、先に家を出た。
『ポストに鍵入れておいてよ作戦』である。
そして、仕事が終わり、
帰宅すると...
■ アーバンな空間に異質なシルエット
いつもの薄暗い部屋に入ると、
なにやら違和感が。
ミニコンポから飛び出したままのCDのトレイ。詰まるCD
(脳内で再生されるブルーハーツ『TRAIN TRAIN』)
裸足のままかよ!
解説1)ひと昔前のコンポは、△のリジェクトボタンを押すと手前にウイーンとCD-ROMがトレイにのって引き出されてくるのです。PC版のROMをイメージしてもらえると同じ構造です。
解説2)ブルーハーツは現ザ・ハイロウズの前身バンドです。そして、名曲『TRAINTRAIN』の歌詞の出だしが「裸足のままで飛び出して〜」である。
テーブルの上に置き手紙が。
『ごめんなさい...壊してしまったようです。汗』
大事に大事に中学生の頃から使っていたミニコンポが…
あゝ無情®
怒りというよりも脱力...
『おばあちゃーん...』であった。
ここから私たちは始まった。
■ 時は過ぎて、私は青森にいる
東京っこの私には、田舎というものにご縁がなかったわけですが、
今や、彼女は人生の相方となり、彼女の実家である青森県に住んでいる。
波平、フネ、波平の母、たま、たらちゃん、たらの姉と7人で暮らすマスオとなりました。
人〜生〜って不思議なも〜のですね〜
うちの猫のオヤツが豪華になります