【ラグビーワールドカップ】準決勝・肉弾戦の先に見せたウェールズの武器
予想通りの結果。予想通りの展開。
ただひたすらに身体をぶつける我慢比べ。
勝ったのは世界一のフィジカルと称される南アフリカ。
ハーフウェイ付近を中心に繰り広げられた陣地の奪い合い。ボックスキックとFWの縦突進。
戦術や攻めの多様さ、派手さはなくとも「これぞラグビー」と思える男の肉弾戦は、やはり観ていて清々しかった。
南アフリカは1番から15番までフィジカルの強さを前面に押し出せる選手が多い。司令塔の10番ポラードもいざとなったら当たりに強い。そもそも190センチ近くある。
それに対して、ウェールズはビガーやジョシュアダムズなどBK陣は決して大男揃いではない。
その選手たちがヘビー級の相手に一歩も引くことなくバチバチ身体を当てる。時々その技巧であっと言わせる(ビガーのハイパント処理やジョシュアダムスの走力を生かした突破など)ものの終始重苦しい展開。
ただ、ウェールズにはキックで試合を決められる選手が3人いる。ビガー、ハーフペニー、パッチェル。このことが想定以上に接戦を呼び込んだ。
ウェールズは元々アンスコムというスタンドオフの選手が主力を務めていたが怪我で出場できず、その代わりとして今大会ではビガーやパッチェルが10番のポジションを担ってきた。ビガーは今や代名詞となった落ち着きのないルーティン、最後に静止してから始動する正確なプレースキックが特徴。この日もプレースキックをことごとく決め冴え渡った。またボックスキックの処理でも華麗なキャッチを見せ、数少ないウェールズのチャンスを演出。
途中出場のパッチェルはピッチに立って早々、タッチキックで相手ゴール前5mのところでラインアウトを獲得する好タッチキック。30m級のタッチキックを何事もなく簡単に決めたキックに自信を窺えた。これには「すげー」と唸らざるを得なかった。結果的にこれがウェールズ唯一のトライに繋がっている。
そして極めつけはハーフペニー。9-16で負けている中、ウェールズがこの試合初めてのトライを取って14-16。残り15分でここはキックを決めて同点にしたいところ。ただ、かなり角度の厳しい端からのプレースキック。更にビガー退いた後の1本目のキック。プレッシャーもかかる。そんな状況でも集中してキックを蹴り上げ同点ゴールを陥れた。
ウェールズ3人のキッカー。
それぞれがそれぞれの持ち場で最高のキックを魅せる。
ウェールズと言えば、統制の取れた激しいディフェンスが持ち味。
もちろんこの日のディフェンスも素晴らしかったが、より目立っていたのは数少ないチャンスをモノにする飛び道具のキック。試合の流れすら変えてしまう一つのキック。そんなプレーを随所で魅せたウェールズ。
ただただ、その一つ一つのプレーに感嘆の声をあげるしかなかった。
そして日本が今後より先のステージに進むためのヒントもそこに詰まっているような気がした。
ウェールズのラグビーは守備中心で、時に攻め手を欠くように見える。いや、そういう風に思っていた。ただ、この試合からはウェールズが誇る3人の右足を活かすために、準備された守備がある逆説的な見え方。
残念ながら決勝進出には至らなかったものの、最後まで南アフリカを追い詰めた試合巧者ぶりは「流石」の一言。今後もウェールズのラグビーに注目していきたい。
しかし、ダンビガーのプレースキックのルーティン。クセが強くて大好きです