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親ガチャ論争に思う

自分の親は選べない、まさにおもちゃのガチャガチャのように当たりハズレがあるものだ、という意味で「親ガチャ」なる言葉が流行っています。
私は普段note以外のSNSをしないもので、流行には疎く、彼女によく怒られております。
そんな私でさえ目に入るということはよっぽど世間を賑わせているのかなと思って、少し調べてみました。

テレビでも取り上げられたり、ヒロミさんや橋下徹さんといった著名人、果てには自民党総裁選候補の岸田さんまで言及しているというから、すごく話題になっているようですね。

語源は先程述べた通りですが、「ガチャ」というのはおもちゃのガチャガチャでもあり、スマホゲームのキャラクターを当てるためのガチャでもあるみたい。
多分両親や祖父母は訳が分からんと思いますので補足しますと、スマホゲームには強いキャラクターを手に入れるために、時にはお金を払って(=課金して)、ガチャと呼ばれるそれこそおもちゃのガチャガチャのようなものを擬似的に回す、ということが行われるのです。
欲しいキャラクターや好きなキャラクター、またはレア度の高い(=出る確率が低い)キャラクターを求めて、多くの人が今日もガチャを回しているのです。

そんな「ガチャ」を、産まれてくる環境や親に当てはめたのが「親ガチャ」。なるほど。
例えば、お金持ちの家に産まれたら「親ガチャ成功」なのでしょうか、その塩梅は分かりません。

私の場合、優しくて家族思いの両親と祖父母がいますし、明日食うものに困ったことも無いので、「親ガチャ」で言えば大当たりなんだと思います。
でも、なんだか自分で書いていて、この言葉、とても失礼な言葉だなと思いました。
親が子のためにどれどけの労力、体力、財力、精神力を投じるのかという点が、語感の良さでかき消されているように思える。
だからこそ、この言葉が流行っていることには、それなりの理由がありそうですね。
ちょっと考察してみます。

①自分の親や育った環境を良く思っていない若者が多い説

やはり真っ先に思い当たるのがこれです。
茫漠たる不安の尽きないこの世の中、その矛先が親に向かっているというのも有り得る話。
現代において、インターネットは生活に根付いておりますので、そうした声が大きく増幅されているという面もありそう。

②子を育てるという経験の希薄化

少子化と言われて久しいように、恋愛や結婚願望が無い若者も多いです。そうした「子を育てた経験のない」人々が、純粋に子どもとしての立場から親を評する言葉として流行っている説です。
自分が親になって初めてわかる子育ての大変さ、という側面が、「親ガチャ」という言葉から感じられないのは、その経験が社会全体で希薄化しているからかも?

③家庭環境が悪化している説

他所の家庭環境は分かりませんが、本当に日本の家庭環境が悪化しているのだとしたら...これほど恐ろしいことはありません。
少しズレますが、内閣府がまとめた家庭内暴力の相談件数は、2020年度は前年度に比べて1.6倍に増えているらしく、こういうところも関係しているのかな。

④格差の拡大

これは深刻な問題です。
富める者は富み、持たざる者はより貧しくなる資本主義社会の弊害です。
実力主義といえば聞こえはいいですが、弱者が見放される状況が悪化すれば、社会から活力が失われてしまいます。
トマ・ピケティ氏が説いた「r>g」(r=資本収益率、g=経済成長率、資本家の富が増えるスピードは、労働賃金の伸び率よりも大きい)の世界は、コロナによってさらに明確化されたような気もします。

多分ほかにも色んな理由があるのでしょう。
人生において親から受ける影響は計り知れませんから、家庭環境が生育上マイナスに働いた場合、「親ガチャ」としては失敗にあたるのもうなずけます。

しかし、私は先程も述べたように、「親ガチャ」という言葉が好きにはなれません。私だって子育てはしたことないですが、私を育てるのがどれだけ大変だったかは何となくわかるものです。そんな私を育て上げてくれた両親に対して、少なくとも私は「親ガチャ成功して良かった」とはとても思えません。

ただ、無機質感が一切隠れていないこの言葉が流行るということ自体、現代日本を端的に表しているような気もして。なんだか悲しい気持ちになるし、世の中が精神的に貧しくなっているのかなと思う反面、本当に親のせいで辛い思いをしている人も中にはいます。
そのような人々とどう接して行けばいいのか...
考え出すとキリがありませんね。

長くなりましたので最後にひとつ。
社会人になって思ったのは、両親と過ごせる時間は加速度的に減っていく、ということ。
NHKの「チコちゃんに叱られる」で昔やっていたようですが、

母親が生涯わが子と一緒に過ごせる時間は約7年6ヶ月(約65,700時間)、父親は約3年4ヶ月(約29,200時間)

だそうです。

こんなに短いのか。
そう思ったら、それぞれの家庭にそれぞれの問題があれど、「会える時に家族に会う」ことがとても大切なことのように思います。
「親ガチャ」と言って時に親を煙たがったり、大事に思えない時があったとしても、時間は有限なので...
私は、そういう思いから、暇を見つけては実家に帰ろうと決意しています。

話がだいぶ長くなりましたが、読んでくださった皆様のなにかの気づきになれば幸いです。
それでは、おやすみなさい。

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じとめん
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