エンタメの感想で「良い/悪い」とか言うから面倒なことになる
「良い/悪い」「正しい/間違ってる」の判断基準は、人それぞれ違っているのに、それを「全員共通」という前提でぶつけ合うとろくなことにならない。
エンタメに対する感想なんて、全部個人的で主観的だ。「一般的なルールがあり、照らし合わせて判断した結果…悪い!」みたいに聞こえる感想は、感想ではない。
当人が感想を述べているつもりでも、自分勝手なメッセージや憶測になっている場合が多く、製作者や演者を傷つける可能性が高い。
エンタメの感想は「面白い/つまらない」「好き/嫌い」でいい。
もちろん、面白い⇔つまらないの間にはグラデーションがある。好き⇔嫌いも同様。
この作品が、好きかor嫌いか、どっちか選べ!という話ではない。
それを見て、読んで、感じて、作品に対してどう思ったのか。それだけでいい。
よし悪しとか、正誤とかの判断はいらない。
こういうことを強く思う機会があった。
先日観に行ったアイドルライブの、ある曲のパフォーマンスで、出演するはずのメンバーがステージ上にいなかった。
その後のMCタイムには姿を現したのだが、涙目でなんとも形容し難い表情をしていた。
ライブ直後からSNSでは、その一連が様々な憶測を呼んでいた。
基本的にはメンバーの体調を心配するものが殆どだったが、不在や険しい表情の理由については、憶測の域を出ないものばかりだった。
(もちろん本人の口からは語られていない)
なにより自分がモヤモヤしたのは、ファンの多くが「良くない出来事が起きた」と捉えているらしいことだった。
実際にライブを観ていた時、確かに自分も驚きはした。目の前で起きている出来事を理解するまで、短くない時間を要した。
でも、ライブが終わって帰りの電車に乗っている時に、あの不在も、ひとつの表現でありエンタメだなと思ったのだ。
そしてそれこそが生のエンタメの面白いところだと感じたし、ああ、ステージの上の彼女も、めちゃくちゃ生きているんだなと、当たり前だけど実感していなかった事実を、肌で感じた。
それらを全部ひっくるめて、自分は面白いなと思った。
「メンバー全員でのパフォーマンスが見たかったので残念…」という感想ならわかる。
でも、「ステージに出られないほどメンバーが追い詰められるのは良くない!」というのは、勝手な憶測だろう。
もちろんメンバーの体調を心配する気持ちは痛いほどに分かる。
でも、それでも、エンタメとして体を張って表現してくれている以上、「面白い/つまらない」でしか語れないし、「好き/嫌い」でしか語るべきではない。
こんなことを考えられたというだけで、この日のライブに時間とお金をかけた甲斐があると強く思った。
だからやっぱり、面白かったのだ。