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書籍紹介 名倉真悟著 水野二千翔編『ドローン3.0時代のビジネスハック』

 『ドローン3.0時代のビジネスハック』エムディエヌコーポレーション(2023)は、名倉真悟氏による、ドローン技術の進化とそのビジネス活用について詳述したものです。本書では、技術の解説に留まらず、ドローン技術がもたらす新たなビジネスチャンスをどのように捉え、活用するかについても解説しています。以下に、内容を紹介します。

1.はじめに
 「はじめに」では、ドローンがどのようにして私たちの生活やビジネスに浸透してきたかが述べられています。著者は、ドローン技術が未来のビジネスにおいて重要な役割を果たすことを強調し、その可能性を活用することを促しています。

2.ドローン&空飛ぶクルマでビジネスチャンスが広がる!
 第1章では、ドローン技術の基本的な定義や、技術的背景が解説されています。特に「ドローン1.0時代」において、空撮や農業、点検といったビジネスがどのように展開されてきたかが紹介されています。この時代は、航空法により厳しい目視内飛行の制約があったものの、技術の進展と規制の緩和により、ドローンのビジネス利用が拡大しました。

 ドローン1.0のビジネスの多くでは、ドローンが飛行している間ずっと、ドローンの直下とその周辺に人がいないかどうかを管理しなければなりません。そのため、補助者を何人も配置しなければならない状況が多くありました。結果的に、自由なルートで長距離を飛行させることができず、ドローンを人が目で見える範囲内、すなわち「目視内」で飛行させなければなりませんでした。

出所:本書(P11)

 次に、2015年以降の規制緩和や2022年の改正航空法により、ドローンの飛行範囲が拡大し、「ドローン2.0時代」が到来したとしています。ここでは、目視外飛行や人の上空での飛行が許可され、新たなビジネスチャンスが広がったことが説明されています。
 さらに、ドローン3.0時代とは、空飛ぶクルマが町中を飛び交う時代を指し、物流や人の移動が次世代のものとなることを意味します。

3.ドローン1.0のビジネスハック
 第2章では、ドローン1.0時代におけるビジネスの事例が詳述されています。この時代には、ドローンによる空撮ビジネスが注目されましたが、その後、技術の普及に伴い、空撮だけに頼るビジネスモデルの限界を向けたことが指摘されています。
 また、ドローンを活用した点検業務や3D測量のような新たな用途も取り上げられ、これからのビジネス展開の可能性が示されています。

 2016年から始まった未来投資会議では、当時の安倍晋三首相が橋やダムなどの公共工事でドローンを活用し、測量の効率化を図り、建設現場の生産性を向上すると表明しました。これを受けて始まったのが「i-Construction」という取り組み。この中でドローンに期待されている役割が「3次元測量」。 すなわち地形や建物といった対象物を、ドローンが空中から撮影し、立体的なデータを得ることです。この情報を元に、立体画像を作成する、つまり「3Dモデリング」も可能になっています。

出所:本書(P80)

4.ドローン2.0のビジネスハック
 第3章では、ドローン2.0時代におけるビジネス機会が紹介されています。この時代は、目視外飛行やレベル4飛行が実現し、物流、警備、災害対応などの分野で、これまでには考えられなかった用途が現実のものとなったことが解説されています。
 さらに、ドローン技術が社会の課題解決にどのように寄与するかについても述べられております。例えば、「空の産業革命」による地方創生や医療サービスの改善が例示されています。

 空の産業革命ロードマップでは2024年度以降の目標として「へき地において医薬品を配送」を設定しています。地方では病院や薬局といった医療インフラや、交通インフラの維持が難しくなってきています。しかし地方に住む高齢者にとって医療にかかれるかどうかは死活問題。そこで薬については、町の病院や薬局などからドローンで配送し、高齢者の医療へのアクセスを担保することをねらっています。薬はそれほど大きなものではありませんから、小型の物流ドローンでも配送可能です。

出所:本書(P40)

5.ドローンビジネスをするなら一等無人航空機操縦士になれ!
 第4章は、ドローンビジネスに参入するために必要な資格や技術についてのガイドです。レベル4飛行を可能にするためには「一等無人航空機操縦士」の資格を勧めています。さらに、ドローンビジネスに関わる法規制の説明もあり、ビジネス展開の前提となる基礎知識が学べます。

6.来るドローン3.0時代のビジネスハック
 第5章では、ドローン3.0時代に向けたビジネス戦略が提示されています。空飛ぶクルマの普及により、都市交通や物流が大きく変革されることが予測されています。著者は、空飛ぶクルマが普及することで、新たな市場が開かれ、多くの企業がこの市場に参入するだろうと期待を述べています。
 また、バーティポートの整備や関連インフラの開発が新たなビジネスチャンスを提供することも期待され、次世代の交通インフラの整備が経済成長の鍵になると予測されています。

 また2022年6月にはバーティポートの早期実用化に向けて、Urban Air Portと日本のブルーイノベーションが共同開発や日本国内で実証実験を行うことを発表しています。
今後、空飛ぶクルマの離着陸には、当面は空港やヘリポートなどが活用される見通しですが、 これらがない場所でも自在に離着陸させるために、バーティポート整備は欠かせません。空飛ぶクルマビジネスにバーティポート整備から参入するのは十分ありといえるでしょう。またポート内で電源を管理する仕事や、飲食を提供するサービスもできそう。機体に注目が行きがちですが、 これまでのキャリアを活かし周辺にあるビジネスに参入することも検討してください。

出所:本書(P179)

7.ドローンビジネスの未来が見えるインタビュー
 第6章では、業界のリーダーたちとのインタビューを通じて、ドローンと空飛ぶクルマの未来がどのように描かれているかが紹介されています。

8.ドローンビジネスのトップをねらえ!
 最終章では、ドローン3.0時代における成功に向けた戦略が述べられています。著者は、ドローン技術の進化に伴い、ビジネス環境が急速に変化していると指摘し、新たな市場に積極的に参入することを望んでいます。

 空飛ぶクルマが中心となるドローン3.0については、まだ業界自体がほとんどできあがっていません。(略)多くの企業が空飛ぶクルマの機体開発を進めていますが、運航を専門で手掛ける会社が日本にいくつあるのかというと、まだありません。ということは、そこにビジネスの狙い目があるといえるわけです。

出所:本書(P244)

 その際には、技術的優位性だけでなく、社会的な受容性や法規制の理解、そして市場動向を的確に見極めることが成功の鍵になることを述べられています。

9.最後に
 最終章ではドローン技術がもたらす未来のビジネスチャンスについての総括がなされています。以上、本書は、ドローン技術は次世代の産業革命を牽引する存在ともなり得えるかを考察するうえで、参考になる内容です。


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