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教育現場におけるAI・ICT活用事例(C県私立高校)「classiの実際」(前編)

教育現場におけるICT導入については、授業はもとより、教員の実務作業量軽減にも使用されて久しい。また、文科省の取り組みとして2019年から「GIGA(Global and Innovation Gateway for All)スクール構想」が立ち上がり、本校でも2019年度から一人1台のタブレット貸与のシステム導入と、教員の負担軽減を目的として「classi」の導入に踏み切り、現在でも活用している学年・コースが存在する。また、それに伴い全ての授業教室(特別教室は除く)の電子黒板化、プロジェクター機器の導入(一部移動式プロジェクターの教室あり)が整えられた。
 それらの機器導入当初は、「生徒に還元する」よりも「教員の作業量軽減」に役立ったことと、「ペーパーレス化」に貢献したことがクローズアップされる。また、教員の年齢層に応じてこれらICT機器に対するネガティブ指数は比例したことも補足しなければならない。GIGAスクール構想と言えども、使うのは年齢層の違う教員であり、特に「classi」の利用に関しては、ある一定の教員だけが上手に利用し、あまり内容を把握していない教員は、教務課や情報科から示されたレールに乗って、小テストのチェックくらいしか利用できなかったのが、導入当初の現状であった。
 本校が「classi」を導入したきっかけは、先述した「教員の実務作業量の軽減」が一番だったが、中学時代につまずいてしまった教科・科目を「classi」の膨大な過去問題や個々人に対するアプローチを変えられるというメリットを活用し、基礎学力の定着を図ることが最大の目的であった。また、「家庭学習」の促進を目標とし、学習時間調査をペーパーレスで行うことができ、家庭学習の習慣をつけるための一つのツールとして利用しようと画策したことが、きっかけになっている。

 実際に利用してみると、これらの導入のきっかけに対して予想していた通りの手軽さとなった。1クラス30人~40人である本校の実情で、学習時間調査や、個々人への学習的アプローチを紙を使って行うことがどれだけ膨大な事務作業になるかは言わずもがなである。その膨大な量の事務作業がブラウザ一つでできることが非常に大きな魅力となった。個々人の設定をしてしまえば、さまざまな小クラスを設定することができたり、メッセージを送ることもできる。「朝学習」の時間を利用したり、「総合的な探求(学習)の時間」を利用したりして、できうる限りの成果も上げることができた。
 また2020年度には、コロナ禍によるオンライン授業の増加や家庭学習期間の増加も非常に多くなり、出欠管理・報告に関しても利用を本格的に始めることになった際も、「classi」の特性を生かした良い成果が出た。学校現場において、教員の個人所有端末を使い、生徒の個人端末とLINE等のアプリでつながることは、決して好ましくない。周囲からの変な勘繰りや、犯罪行為の温床を助長していると言われかねないからだ。実際に本校においては、管理職から生徒とアプリでつながることを禁止している。そのため、学校を遅刻や欠席をするような連絡・報告を、電話で受けていたのが実情である。それをメッセージ機能を利用したり、学習状況を利用したりして、急な発熱(コロナ感染の疑い)などの連絡も、業務時間外や深夜であろうとも「classi」でできることで、担任の把握の迅速化、内容の共有化、学校側の隔離等の対応もスムーズにできるように変化した。学校全体としての効率化を図ることができた。
 このように、教員間で試行錯誤を繰り返しながら、本校に合うように利用をしていくことによって、最終的な目標である「自主学習の促進」を少しずつ達成していくことになる。学習へのアプローチに関しては後編に繋げていくが、家庭学習、出欠管理とともに有効となったのが「生徒カルテ」のメニューになる。

 生徒カルテは、進路や生徒指導に関する生徒管理のクラウドサービスというイメージを持てばわかりやすいと思う。本校でも、生徒管理に関しては基本は担任および副担任が、ワードやエクセルで一人一人作成し、ホームルーム内の係や面接指導の内容、本人の進路希望、検定の取得状況や問題行動による生徒指導状況をまとめて、校内LANに載せているというのが今までの流れだった。教務課でフォーマットは用意してくれているのだが、担任と副担任の負担は大きく、最終的にはそれを次年度に繋げる際には、クラス替えが存在するため、ファイルをそれぞれのクラスに振り分けなければならない作業もあり、非常に面倒な作業となっていた。それを今までの校内テストやベネッセ模試の成績、志望校、アンケート、学習記録などclassiに記録した情報を、生徒・保護者ともに一元に確認することが可能になり、学年進行時には、クラスのメンバーを変更するだけでそのまま引き継ぐことができるようになった。もちろん、問題行動などの教員側のメモは生徒や保護者が確認できないように設定できる。

 これらの情報を学校全体の先生が閲覧でき、記入も可能になるため、部活動の報告や成績、各種検定もすべて担当が入力することで、担任の負担は激減した。学年末に作成する指導要録の参考資料にもなり、資料作成も非常に楽になった。学習記録も確認できるため、苦手科目に対するアプローチの目安にもなり、個別の指導計画の作成に一役買っていくことになった。しかし、問題点や大変な部分も存在する。
「生徒カルテ」を完璧に使いこなそうとすると、「ポートフォリオ」と「アンケート」のメニューを使いこなし、生徒カルテと連動していく必要がある。また、ポートフォリオやアンケート、学習調査の利用をおろそかにしてしまうと、ただの成績閲覧になってしまい、生徒メモを定期的に入れるような環境にないと、宝の持ち腐れになってしまう。そうすると、また紙ベースでの個別の学習指導計画の作成となってしまい、せっかくのツールが従来と何ら変わりのないものになってしまう。また、一人一人に対するアプローチには長けているが、HR全体としての課題や進捗状況を見るには別のメニューからの検索になってしまう面もあり、本当に生徒個人に特化しているという面があることも否めない。この問題点は、システム上の問題点も多少はあるが、基本的には教員が入力を忘れたり、メニュー本来の活用方法を知らなかった教員の人為的問題があるため、解消しようと思えば多くは解消できる。しかし、前述の「家庭学習調査」でも同様だが、生徒自身に活用する意志がないと、その生徒に対する正確なアプローチができないため、生徒自身もclassiに興味を持ち、活用するように仕向ける作業は絶対的に必要になる。この人為的問題は深刻で、特に今まで学習習慣のなかった生徒や学習意欲の乏しい生徒、学力がもう一つの生徒がそのような傾向にある。
「学習記録」のメニューは、メッセージ機能も付いているため、できる限りしっかりと入力をしてくれた生徒に対しては、「数学、1時間もやったんだ。すごい!これからもがんばれ!」といったメッセージを送るようにしていた。しかし、入力を怠っている生徒の多くはclassiを開くことすらしないため、「頑張れ~!」などのメッセージを送ったとしても伝わらないので明朝に各自に話をしていくことになる。

 そのチェック自体はそんなに苦労はしないが、その生徒の自主学習時間の把握にはつながらないため、アドバイスにも繋がらない。成績不振につながる可能性も出てくるため、補習や特別プログラムを組もうと画策するなど、自主学習を促すためのclassiであるのに、本末転倒の結果になっているクラスがあるのも実情である。これらは、後編に話す「学習トレーニング」・「webテスト」メニューを利用した個別学習へのアプローチも同様で、自主学習へと繋がらない問題が出てきている。(後編へ続く)


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