
教育現場におけるAI・ICT活用事例(C県私立高校)「classiの実際」(後編)
前編において、classiが教員の負担を減らすきっかけとなった事例について展開した。後編では、実際に生徒へと配信する学習教材、及びその効果について述べていくこととする。
生徒への学習課題として、本校では「中学校での学習の振り返り」をテーマとして行っているクラスもあれば、予習で活用しているクラスもあり様々なアプローチを教務部が主導となって行っている。まず最大の利点は、個人へのアプローチ方法を選べたり、少人数のグループを作成して、同じ問題やテストを配信できたりするところが、最大の利点であると考えられる。このグループを作成するのが、校内グループメニューとなる。


校内グループの作成は、あっという間にできる手軽さなのでストレスを感じることはない。年度が変わると生徒が1年から2年に学年が変更するため、自然とそのグループから生徒は削除されることから、新しく教科担当や担任を受け持つ先生方でも、新たに設定し直さなければならない作業が発生するが、煩雑な作業にはならず、むしろ昨年度の実績を元にして、習熟度別に更に細分化できる可能性もある。先生方で相談しながら個々人の指導計画も立てられるきっかけもできるため、効果的とも言える。
その校内グループを利用して、課題を配信するのだが、ここでも他にはない多くのメリットがある。それは配信するための、膨大な量の問題数があるということだ。写真の通り、英語の学び直しに利用する(中学英語)だけでも選定するのが困るくらいの量があり、それを生徒へと配信することが可能なのだ。模擬試験のデータや定期考査のデータ等を照らし合わせ、各教科の先生方にもアドバイスをもらえれば、グループ作成は非常に役に立つ。かつ、グループを正確に作成できれば学習効果が上がるだけではなく、配信しようとする課題の専門教科でない先生方でも問題を選定して配信することが可能になるため、教員間の負担も格段に減ることになる。


課題を配信するメニューが、「学習トレーニング」のメニューである。写真を見てもわかる通り、膨大な問題数が用意されているため、個人にあった最適な問題を選択して配信することが可能になる。写真は英語の課題について表しているが、これは他教科でも同様であり、本校では国語・数学・英語を重点的に課題配信を行っているが、苦手分野や項目に対してアプローチすることが可能になっている。難点があるとすれば、英単語で言えば基本的な単語の反復練習には向かないことだろうか。後述するが、Webテストを行った後で、紙ベースにして何度も行わせるくらいになるが、どうしても手間がかかってしまう。また数学で言えば、数多くの計算に当たらせたい場合には、同じ問題しか配信されないことだろうか。つまり、漢字や英単語、計算問題などのように、問題へのリーチ数を稼ぎたい場合においてのみ難点があるくらいだろう。「学習理解」という点に関しては、スタディサプリ(リクルート)のように受験特化、学習特化型のアプリではないため、スタディサプリには劣るかもしれないが、classiも理解を促すためのコンテンツとしては非常に高いものであり、特に英語の専門教員が教える内容と同等の課題を別教科担当の教員が配信できるということで、教員間で差が生まれにくく、ある一定の学習効果を見ることが可能になり、かつ前編で記した通り、生徒管理もclassiでできることを考えると、学習効果としては非常に高いアプリであると言える。また、「おすすめ演習」の設定をしておくと、AIが個々人に応じた演習を配信してくれる。この演習を楽しみにしている生徒も多い。
「学習トレーニング」機能でさらに言えることとしては、教員からの一方的な課題配信だけではなく、自主学習機能を搭載している点は外せない。特に本校では校内の模擬試験はすべてベネッセに頼っており、GTZ(学習到達ゾーン)の認知もあるため、自分自身が目標GTZを設定すると、それに応じた課題を自分で選択して自主学習を進めることができる。自主学習ほど定着が進む学習方法はないと想定されるため、前編での学習時間調査と同様に、生徒への学習促進へと誘うツールとして、担当の先生方が一生懸命サポートをしている。
「学習トレーニング」と併せて、その隣りにある「webテスト」も利用して効果を上げるようにしている。


「Webテスト」はその名の通り、テストを作成してグループや個人にテストを配信することができるツールである。学習トレーニングで配信した課題に応じてテストを作成することができ、問題数や目標点数まで設定して配信することができる。正答、誤答の問題や誤答内容も含めて確認できることも非常に効果的である。下図のように、明らかに目標点数より低い生徒へのアプローチも、間違えた内容等を精査して確認することができるため、次の課題配信にも繋がっていく。また、テスト自体を紙ベースに印刷もできるため、誤答問題を何度も一緒に確認することが可能になる。


このように個人へのアプローチは非常に充実していることはわかるが、細分化されすぎてしまい、すべてを確認するのに非常に時間がかかるのが難点である。つまり、配信した生徒数が少ない場合には非常に効果的になるが、30人を超える単位での配信になると一人一人のチェックに膨大の時間がかかる。その分だけ生徒に対してのアプローチが疎かになるため、このあたりの機能をもう少しスムーズに使えるようになれば、非常に効果的な機能であるため、学習効果はより高くなると想定される。
classi利用方法としては、以上のような使い方を本校では行っている。約5年間の蓄積があるため、教務部の方である程度の利用方法や生徒さんへの支援方法についてはマニュアルを作成して、新任教員へも配布している。学年が移行したり、クラス替えがあったとしてもスムーズに行えている所以でもある。クラスや学年単位での利用方法として、朝学習におけるWebテストの配信やその成績上位者への表彰、自主学習時間ランキング上位生徒の表彰などを行い、学習意欲の向上へとつなげている。また、classi利用時間と模擬試験、定期考査、共通テスト(センター試験)との相関関係のデータも蓄積されてきており、自主学習の大切さを訴えるツールとしても役立っている。いずれにしても、生徒自らが学ぶ姿勢の確立と教員の雑務負担減を目指して始まったclassiの利用が、大きな成果を上げていることは間違いない。全教員へと周知徹底してくれた先生方の努力も忘れてはならないが、利用頻度を高めようとした担任の先生方の努力とチームワークも称賛してここで締めることとする。