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朝日新聞「それぞれの最終章」⑤「今日は死ぬにはもってこいの日だ」

これはネイティブアメリカン・プエプロ族の言葉とされる。(詩にしたのはアメリカの詩人だが)。
例えば、西表島の沖、360度水平線を見晴らすヨットの上から見上げた満天の星空。ゴビ砂漠の七色の砂のうねりが続く地平線に沈む巨大な夕陽。
そんな様子をボンヤリ見ていると時間は止まり、確かに「今日は死ににはもってこいの日だ」と、満たされて思う。
悲しいとか辛いとか、そんな人の営みとは違う物に包まれると、ふっとこのまま自然の中に溶け込みたいという気になる。

ただし、ここでの死ぬは「溶け込む」とか「一体になる」という意味で、「飛び込」んではいけない。それはむしろ静かな世界をただかき乱すことになる。死はそっと……世界と一体になる。

大自然の中だけに「死ぬにはもってこいの日」があるわけではないとも思った。


それがいつであれ、どこであれ、「今日は死ぬにはもってこいの日だ」と、いつも微笑んでいることが一番大事なんだとも思った。
そう思いたくて病室で書いた原作だった。

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