55、現金がなくなり路上でタイマッサージで稼いで帰国した
60ヶ国目、キューバ。冒険心をくすぐられる社会主義国。
自由を奪われたような、個性のないボロボロの建物群。
軍隊じみたモニュメント達。やたらと多い『勝利』というキーワード。
そして、まるでタイムスリップをしたかのような錯角。
燃費悪そうな古い車が黒煙を出しながら走る。いまだに馬車や人力車も。
小汚い路上、ヘドロ、ウ○コ、ゴミ、動物の死骸、有機物と無機物が絶妙な感じで発酵しあい、なかなかの有り様だ。カリブ海特有の陽気な国民性、そして暇そうにしてる連中が多く、やたらと絡んでくるキューバ人。
昔から観光業が主産業の一つらしく、外国人をみてはやたらとぼったくってくる、そしてせびってきたり、たかってくる連中。やたらといる売春婦。(売春夫も多いらしくそのせいなのかは分からないけれど欧米系の一人旅のおばちゃんも多い)
旅人達の中でここは絶対行った方がいいと言われてる国であり、社会主義国の中ではかなり評判のいいキューバ。しかしながらやはり半世紀たった今、資本主義と社会主義では、資本主義が圧倒的に差をつけて栄えてしまったらしい。
僕自体、物質ばかり追い求め、心の貧しくなる資本主義には疑問を持ってるけれど、実際に社会主義の国がこんな感じである現実。
もし仮に、世界が一つになり政治家のみんながみんな国民の幸せを第一に考えるくらい優秀であり、国民みんな同じ気持ちでマジメに働き、みんなで共産・共存・共栄・共貧の気持ちをシェアすることができるのであれば、共産主義として理想的な世界になりそうではあるけれど、、、まあ今のところ現実的にそうはいかない。人それぞれ違ってて当たり前のことであり、はからずとも資本主義の方が自然で自由。だけどいずれにしても不完全、そもそもどこの政治も完璧といえるところは今のところありえてないと思うからそれを言っても仕方ないのかな。
と、ひどいことばかり書いてるけれど個人的にこういった国が旅行するのには一番楽しかったりするものだ。底無しにノー天気な人が多くて自然とこっちも明るい気持ちになる。特にハイテク進み心の豊か遅れる我が国はこういう国から沢山学ぶべきことあるんじゃないかと思う。
今回の旅で6年ぶりに南米に戻ってきて、残念な方で一番顕著な以前との違いというのが、スマホの普及だった。若者の多くはスマホの画面ばかりに視点を奪われて、人と人とのコミニケーションが少なくなってしまった。あの、無駄に絡んで来ていた連中が急にいなくなってしまう、、、一人旅するものとしてこれは本当に淋しいことだ。陽気なラテンアメリカなのに、、、
しかしまだまだキューバはスマホ普及率は低く、インターネットも使えるけれど、庶民にはある程度規制されていてかなり使いづらい。なので、先進国みたいに中毒者もいなければ、スマホゾンビを見ることもない、そこらへんはこの国は健全だ。言われてるように資本社会に走りすぎた日本やアメリカなんかよりは平均的に幸福度は高いと言われてるのもなんとなくうなずける。
それにキューバはラテンアメリカにしては奇跡的に治安もよい、お互いに悪いことしないような監視の態勢があるらしく、そして外国人を強盗でもしたら問答無用で懲役20年らしい。これ、治安の悪すぎるラテンアメリカ全部の国に取り入れてほしい仕組み。ただ、やっぱり国民のことを考えると、自由は奪われてるなーと。
2週間くらいキューバの滞在日数をとっておいたので、特に目的地も決めず、あてもなく島を一周することにした。自衛隊の大型トラックの後ろを思い出させるような、カミオンというトラックに乗ったり、、、小便臭い電車で長距離移動したり。外国人お断りの地元人向けのバスに無理やり乗せてもらったり。
たまには馬車だったり、ここでのヒッチハイクスタイルであるんだけど小さい額のお札をびらびらなびかせて乗せてもらったり。道中仲良くなった人の家に泊めてもらったり。ありとあらゆる交通手段で南下してゆく。
噂に聞くように現地の通貨が二種類あるキューバ。
これ何の意味があるのか、最後までわからなかった。だいたいどこでも、どちらの通貨も手に入れれるしどちらも受け取ってくれる。元々はもっと顕著に分かれてたんだろうか、、、今(2018年当時)はもう必要なさそうなシステムでありいづれ溶けていきそうだ。
物価としては物資が少ないけれど人件費が安かったり、ものによっては国が負担してくれたりするものもあるのでお陰でものすごく安いものもあったり、意外なものがものすごく高かったりするので物価感覚に慣れるのに結構時間が掛かった。さらに何かと外国人に対する料金がものすごい顕著、そもそも公共交通機関まで外国人料金が設定してあるなんて、、、だけど現地人に紛れてこっそり、もしくはこそっと少し賄賂払えばすぐに現地人価格にしてもらえたりもする。
ものすごく旅行するのに不便な国。
情報が何もないから人に聞くしかない。素敵な人に出会えたと思っても、現地人はインターネットを持ってなかったりするため、もう二度と連絡も取らないかもしれない、と思うと少し切なくなったり。
こんなクラシックな感じの旅行。あまり観光的な見所はないけれど、その国そのものが見所といった感じでありその辺を歩いているだけで楽しい。きっと、昔のバックパッカーってこんな感じだったんだろうなーと、思いを馳せてみたり。
しかし、今回の旅行も最後の最後にしてネタ発生してしまった。
島の反対側まできたところでクレジットカードが使えなくなってしまった。
というのも今回の旅、エクアドルで最初にスリにあってしまって、いきなりカード類を全部失った、そして、3ヶ月の期限付きの緊急カードを再発行して、それが唯一の現金を引き出す方法だったんだけど、、カード利用期限が切れる前の最後の日に引き落とそうとしたら日本と時差があることをついつい忘れてしまっていてその時はすでに日本時間ではカード利用期限が切れていたので利用できなかった。(マヌケ)
その時の所持金は現地通貨で2000円くらい、残り一週間、首都ハバナまで帰らないといけないんだけどさすがにこれでは足りない。
これは困った。ここは島の反対側までたどり着いてたものだから、ハバナまではすぐには帰れないので大使館に相談にいくことも出来ない。日本人旅行者も見かけない。日本にいる誰かにたてかえてもらい、ウエスタンユニオン経由で送金をお願いするのも考えたけど、そもそもこっちのウエスタンユニオンがちゃんと働いてくれるのか?時差もあるし、ネット環境も考えたらまったくスムーズに行く気がしない。
聞いてみると、その町には日本人女性が宿を経営してるそうなので、何かいいアイデアないかなと相談しに行ってみることにした。
しかしそれがものすごい強烈なおばちゃんだった。
物凄い説教してきては、他人の人生否定までする。
『あなたが今まで甘えた人生を送ってきたからよ』
『キューバ人なんか信じてんの、あなたバカじゃないの?』
と鼻で笑いながらこんな発言をする人。
海外ではたまにこういう日本人に出会う。
日本人本来の良さを忘れてしまって、完全に上から目線でいろいろ説いてくるけれど、残念ながらところどころ的外れな情報混じりだ。
もしかしたら、本来の日本人の美しさよりも必要なのはそこで生きるバイタリティ、真面目さや丁寧さ謙虚さで普段の生活をしていたら現地人から舐められてしまう傾向があるから自然とそういう風に変化してしまったのかもしれないので仕方ないのかもしれない。
しかし同じ宿業を営むものとして、そこらへんは反面教師とさせて頂きます。ご指導ありがとうございました。とグッと心の中に秘めてその場を立ち去る。
結局、誰かの助けにすがろうとするのはやめて、自分でどうにかすることにした。2000円あれば、しばらく食べるものには困らないわけだし、、、暖かくて治安のいいキューバではいざとなればどこでも寝れる。
こんな時に何か特技でもあれば路上でお金作れるのかもしれないけれど、自分は何もできない、、、と思っていたけれど、思い出した。一年前にゲストハウス開業前にタイで二週間くらいマッサージを勉強していたんだ。
この際、料金は安くして、、、(それでも現地人には払えない金額であるため、外国人向けになるけど)
『協力お願いします!クレジットカードが使えなくて現金に困ってます。タイマッサージできます。1時間10CUC(約1000円)』
と英語で書いた看板を掲げて町の中心で物乞いのようにして待機。
現地人がなんだなんだとわさわさと寄ってきては、あーだこーだと好き勝手にアドバイスしてくる。そして、そこにいた路上ミュージシャンが、西洋人マダムの客達を捕まえてきてくれた。本当にありがたい。
結局、その日はマダム達を揉んで、少しばかり稼ぐことができて、さらに無条件で寄付してくれる人達もいた。こういう時にそういう人は神に見える。
それ以降はとにかくいつもの貧乏旅行以上に切り詰めて切り詰めて。
なんとかハバナに帰ってくることができ無事に日本へ帰国できた。