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名物ディレクターと大先生


僕がエッセイを書きたいと思ったのは大泉洋大先生のエッセイを読んだことから始まった。大先生のエッセイはエッセイと呼べるものがなく単に締め切りに追われた文字の塊だった。それでもその塊はとにかくおもしろく今でもたまに思い出して読むほどの本である。僕は北海道のローカル番組「水曜どうでしょう」が大好きで今も暇さえあればどうでしょうの番組を見る。その中で大泉洋といつも喧嘩している名物ディレクターがいて、ローカル番組だった水曜どうでしょうを全国までに名を轟かせたのはその名物ディレクターの存在だと僕は思っている。その名物ディレクターも実は最近エッセイをまとめた本を出版した。その名も「笑っている場合かひげ」である。この題名は大先生が以前番組でおっしゃった名台詞でもある。そんな名物ディレクターのエッセイ本を発見したのは岡山駅に直結したイオンの4階にある本屋だった、何気なくぷらっと寄った本屋でそのひげ本を見つけてしまった。大先生のことを「すずむし」と呼び「チリンチリン鳴いてないさいよー」といつもの暴言を言う人。番組ではテキトーなことしか言わず、お酒を飲んだそのままの勢いで企画を経ててしまうような人である。そんな人の本を買わないわけがない。番組を作成する裏方(といってもガンガンテレビ出るし、今や20万にフォロワーを持つYoutuber)の話が聞けるのは水曜どうでしょうに魂を売った人間として読まないといけない命題であった。早速買って読んでみると不思議な違和感を覚えた。そこには番組でテキトーなことしか言わない暴君のような名物ディレクターは実はめちゃくちゃ繊細で、言葉を商売にしてきた人だからこそ伝わる言葉の優しさとセンスの塊。勿論テレビには映らない父親としての言葉や人間味溢れるエピソードはこの人を嫌いになる人間はいるのかと思う程いい本だった。大人になるにつれ自分の欲や思いというのは表に出さなくなる。それは一種の思い込みのようなもので日本人にとってエゴを隠すことは美徳のように思う傾向があるからだと思う。しかしこの名物ディレクターは自分の欲を隠さない。番組の柱を蹴ってまで自分の欲を全面に出す。それが痛快で傑作で我々ファンは企画うんぬん彼の言動から起きる彼らの罵声が飛び交う瞬間を心待ちにしているところはある。勿論これはお互い嘘を言うわけでもなく半ば本気で言い合うからたまらなく面白い。そしてこの本を読んで思ったことは、「人間味溢れる人」はとても可愛らしい人であると感じた。エゴまではいかなくともなんとか自分の思い通りにならないかと企て、動き回る姿勢はある意味素直な人でもあり正直な人でもある。一度でもいいから是非一緒にお酒を飲んでみたいと思う人である。そんな名物ディレクターと大先生、ミスターどうでしょうとカナダのユーコン川で川下りする際に990円のジャージで挑んだカメラマンが作る、水曜どうでしょう最新作が来月公開。いつ大阪で見られることやら

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