食マイノリティのみなさんへ3
以前「みんな大好きだから大っぴらには言えないけど自分はなぜか嫌いなもの」について2回もnoteに書いた。今回はその3回め。そして今回も「えー!美味しいのに」とか「〇〇店で食べたらわかるよ」とか「人生の半分損してるよ」とか言われること必至なやつである。
それは、おにぎりだ。
しかも「ふんわりつかんだだけ」のやつだ。街を騒がす行列おにぎり人気店がこぞって採用する手法のやつだ。「1、2、3、と軽く押さえたらハイ出来上がり」みたいなやつだ。
わかる、わかるよ。ふんわりおにぎりの何が人を惹きつけるのかはわかる。フルーツサンドや温玉に比べたら、理解はできる。でも共感はできない。私にとっておにぎりとは「しっかりキュッと握ったもの」であり「片手で持っても崩れないもの」であり「具や米がポロリという蛮行には決して及ばないもの」だ。しっかり握るから「おにぎり」なのだ。ふんわりつかんだだけならそれは「おつかみ」じゃないか。
うっかり外でおにぎりを頼んでそれが「ふんわりほろり」系だった時の慟哭たるや!「まさか…こっちだったのか...」と心臓がひゅるりと凍りつく。「好きな人が既婚者でした」よりも「テスト問題あと1ページ残ってるの気づかなかった」よりも凍りつく。なんちゅうもんを食わせてくれたんや、なんちゅう、と心の京極はんが号泣するレベルで胸が痛い。
なのですべてのふんわりおにぎりどもには、おにぎりではなく「おつかみ」を名乗っていただけると幸甚である。店頭に、メニューに、おつかみと表記してあれば間違えることはない。うっかり慟哭することもないのだ。
ちなみに私の理想のおにぎりはこれだ。
・米は固めに炊いてある
・炊き立てを握る
・塩はしっかり手につけて
・具材は多すぎない
・海苔マスト
【固め】
固い米を好むのは若さゆえと聞かされていたので「歳とれば変わるかな」と思っていたが、いまだに好みは変わらない。米の粒を感じられるくらいにぷりっとしっかり姿勢の良いご飯が好き。大粒の品種が好きなのも同じ理由。かつて嫌いな食べ物の筆頭として「柔らかすぎるご飯を嫌いな人が握ったやつ」と答えていたくらい、柔らかい米のおにぎりは苦手だ。
【炊き立て】
とにかくご飯が好きなので、米に関してはあらゆる温度帯を愛している。炊き立てのうまさは言わずもがなだが「ぬるい」ご飯も「冷や飯」も「レンチン失敗温度ムラありご飯」も、それぞれ愛してる。もちろんおにぎりも同様で熱々も冷やもぬるめも全部美味しい。だが握る時には熱々の炊き立てがマストである。熱すぎるご飯に両手を真っ赤にしながら「あちち、あちち」とぴょんぴょん踊りながら握るのが、マイスタイルだ。熱々の炊き立てを握るから「冷めても美味しい」が約束されている。
ちなみに米からできている日本酒も同じ。あらゆる温度を愛している。キンキンに冷えたものから、チンチコチンに熱々のものまで、どの温度帯にもうまさがある閑話休題
【塩】
米と塩のハーモニーを味わうのがおにぎりであると言えよう。うまい米とうまい塩があれば、あとはオマケみたいなもんだ。熱々のまま食べる時はやや少なめ、冷めてから食べるのが決まってる場合は気持ち多めに塩をつけて握る。
【具】
具は多ければいいってもんじゃない。上記の通り、米と塩があればあとはオマケなので、具は引き立て役なのだとわきまえて欲しい。コンビニなどに「煮卵丸ごと1個おにぎり」とか「のり弁丸ごと握っちゃいました」みたいなやりすぎたおにぎりがよくあって、実はまんまと私もよく買ってしまうのだが毎回「これじゃねえ」感に慟哭する。
それに具やご飯をポロポロこぼすのが、私は何より嫌いなのだ。多すぎる具材はむしろ悪であると言っても過言ではない。例えば天むすは大好きだが、あれは小さな小海老天を使うもので大海老はやりすぎだ。そりゃピンと突き出た尻尾は見栄えはする。だから理解はする。でも共感はできない。
たぶん、私にとっておにぎりの具とは「味変」の役割なのだろう。三角の上からかじって、ご飯美味しい!ご飯美味しい!もうひとくち美味しい!…ってあたりで具が出てきて「具も美味しい」となるのが理想だ。
【海苔】
そもそも海藻スキーなのだが、とりわけ海苔には目が無い。子供の頃からおやつに海苔をバリバリ食べて「海苔は高いんだからもうやめなさい!」と怒られてたし、今でもあと一杯だけ飲みたい時のつまみに海苔をバリバリ食べて「海苔は高いんだからその辺にしとけ!」と自分で自分を叱ってる。でも海苔って値段と味が正比例するよね。悲しいけどこれって現実なのよね。
ともかく「うまい米とうまい塩」のおにぎりを完成させるものは「うまい海苔」だ。間違いない。香り高い、いい海苔が買えた時など、海苔を美味しく食べるためにおにぎりを作ったりする。そのために米を炊いたりする。
以上は白ごはんおにぎりの場合だが、混ぜ込みタイプのおにぎりもほぼ同じ。ご飯は固い。炊き立てに多すぎない具を混ぜ、しっかり握る。ふんわりじゃない、しっかりキュッと握るのが大事。ただし混ぜ込みタイプは主にオットのために作るので、彼の好みに準拠して海苔レスなことが多い。
昔よく行ってた居酒屋には、おにぎりを握る人をスタッフの中からリクエストできるシステムがあった。あれは好きだったなあ。何度か試したあげく、私はいつもYさんにお願いするようになった。彼は少し手が大きく(おにぎりも大きい)塩がしっかり効いていて、キュッと握るタイプのおにぎりマンで、私の好みのドンズバだったからだ。彼は今でも固めのおにぎりを作ってるだろうか。そうあって欲しい。