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カレーもいいけど、おせちもね

「12月に入ると、どこのデパートでもおせちの注文受付を始める」

片付け中、ふと手に取った30年前の雑誌の一文を読み、私は「ひょえっ!」と変な声をあげた。おせちを買わない人には、これの何がおかしいのかわからないかもしれない。だがおせちを買ったことがある人は、違和感に気づくのではないだろうか。

問題は「12月に入ると」という箇所だ。実は現代のおせち商戦は、そんなのんびりしたものではない。早いところでは9月、遅くとも10月に入れば立派なカタログを店頭に置き、予約を受け付け始める。「12月に入る」なんてころには人気商品から売り切れ続出、月半ばにはもう予約を締め切ってしまう店もある。

おせち2013

今年はコロナだったからだいぶ縮小されたが、ほとんどのデパートはおせちを予約するためだけの特設会場を設け、多くの人員を配置する。特設会場が開く初日に整理券を出すデパートも珍しくなかった。人気の店は限定数を打ち出し予約は困難。そのため店側もとにかく早めの予約をおすすめする。この30年の間に、おせちの世界は出足がずっと早くなってしまった。

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皆さんの家のおせちはどんな感じだろうか。

2年前にアンケートをとってまとめたnoteを読んでもらうと、今やおせちをめぐる世界は激しく動いていることがわかる。「嫌い、作らない、食べない、関心がない」と答えた人はぐいぐい増えている。しかし一方「好き、作る、食べたい」人も決して絶滅することはない。そして「嫌いだけど作る」とか「好きだけど作らない」とかのハイブリッドもたくさんいる。さらにいうと「おせちのつもりで料理はするけど、見た目はまったくおせちじゃない」とか「100%購入。食べるつもりはあるけど作るつもりはない」とか、もう百花繚乱の千差万別。つまり、もはや

おせちは自由

なのである。

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ちなみにうちは、2020の正月からおせちを廃止している。もっとも大きな理由は「年末年始にあくせくしたくない」からだ。あの年末の混み混みの喧騒の中、あれも足りない、これも足りない、あ〜これは買っといた方がいいかな、念の為あれも補充するか(ここでメモを見る)しまった!あれを忘れてるじゃないか(そして最初の店へ戻る)...という買い物ブギが心底イヤになってしまったのだ。デパートもスーパーも電車も暑いし、喉は乾くし疲れるし、何か忘れてないかとイライラし、しなくていいケンカまでしてしまう。そんな世界はイヤなのだ。

獅子舞2

よくおせちの起源としてよく語られる「正月くらい女の人が休めるように、年末にたくさん作り置きして三ヶ日はそれを食べる」というが、あれも変な話だ。だってそのたくさんの料理は結局女性に作らせるわけで、年末のクソ忙しい時にいつもの三倍くらいの料理をしなくてはいけなくて、つまり働く日時が偏るだけで、労働の総量は変わらない。むしろ年末に根を詰める分、疲れを引きずって正月が楽しめない。

じゃあ買えばいいと思うかもしれないが、これがまた難しい。どんなに大好きな店のおせちだろうが、必ず、必ず、か・な・ら・ず・嫌いなものが入っている。金出してまで食べたくないものが入っている。伊勢丹の、吉兆の、数十万円のおせちだろうが、必ずいらんもんが入っている。和洋中、高いのから安いのまで、時に「一流料亭が常連客だけにこっそり贈るお年賀おせち」なども試したことがあるが、ダメなのである。「好き嫌いが多すぎ」とか「了見が狭い」とか言ってくれてもいい。いらんもんは、いらんのだ。

まあそんなわけで、我が家は元日にお雑煮とおつまみセットだけ。あとはその時食べたいものを自由に食べることにした。そもそも普段から作り置きができない人生なので、年末に頑張るのは非常にストレスフルだった。おせちをやめてよかった。ほんとに気が楽だ。

2020元日のおつまみセットはこんな感じ。

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2021はどうするか。今の時点ではまだ半分も決まってない。明日の朝になってからお腹とオットと会話してみて、のんびり、無理なく過ごそうと思う。

どうか皆さんも、自分にとって気持ちいい正月が過ごせますように。良いお年を。

めちゃくちゃくだらないことに使いたいと思います。よろしくお願いします。