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彫刻展「演劇的」
8月に目黒(白金台)のPottariにて陶彫刻展を開催しました。
昨年から準備はしていたものの、6月の「坐禅熊展」からわずか2ヶ月というインターバルだったため大変でしたが、実りある展示になりました。ざっと振り返りたいと思います。
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〈展示基本情報〉
バンドウジロウ 彫刻展「演劇的」
2024. 8/17 sat - 9/1 sun
13:00〜20:00 close. 火・水
Pottari Gallery
〒108-0071 東京都港区白金台3-18-15
instagram @pottari.tokyo
ステイトメントは以下になります。
タイポグラフィの手法によって、意味のある「言葉」に形と力を与える平面の表現を10年超行ってきましたが、コロナ禍を機に立体表現にシフトしてきました。
とはいえ「形」や「構造」「象徴性」など制作の中心軸は継続しており、今後再び文字表現をミックスしていく可能性もあります。
この3年と少しは、大学で専攻した彫刻と、最近の興味の対象である陶芸技法の両面性をまさに手探りで模索してきましたが、今回は既に発表している「坐禅熊」シリーズ以外の陶彫刻をまとめて御覧頂く初めての機会となります。
「坐禅熊」は仏像を拡大解釈した親しみやすい動物像です。
今回は、土器の誕生からその技術を応用した像の制作、神話の登場人物や特定の権力者の像を表わした彫刻の発祥などを意識しながらも、それを現代社会やネット上の匿名性などと重ね合わせて出来てきた様々な像を展示しています。
酷暑が続きますが、ご高覧いただけたら幸いです。
今回展示したのは、「坐禅熊」と並行して制作していた「祈りの像」、昨年(2023)初頭から作ってきた「立像」と呼んでいる女性像、抽象化された顔のレリーフ、象徴的な動物像、などになります。
それらが展示場所である「Pottari Gallery」の古い調度品と組み合わさることで、独特の雰囲気を醸し出していました。
像に共通するのは、かなり抽象化された形体であること、人物像に関しては顔の造作がないこと、そして、祈りの像や立像など垂直に立ち上がる像は「ひもづくり(ひも積み)」という技法で作られている点です。
埴輪が人や動物の形になる前に「円筒埴輪」というものがありますが、
立像のシリーズは円筒形のスカート部分を立ち上げてから造っています。
これら立体作品を自分では「彫刻」と呼んでいますが、陶芸の歴史に対するリスペクトは持っていたい、との思いがあり像の基本になる部分が器と共通な「中空」であることは大事にしています。
「演劇的」というタイトルは彫刻や陶芸のイメージから少し離れた言葉として即興的につけましたし、作品ごとの意味付けもあまりせずお客さんの解釈に任せる形になりましたが、結果的には様々な感想を聞くことで多くの発見があり有意義でした。最終日までの会話によってやっと作品が成立した感がありました。
・・・・・
シリーズごとに説明します。
◎祈りの像
彫刻再開時から考えていた「抽象化した仏像のようなもの」と徳利など器の形を重ねたものです。頭がスパッときれているのも容器の口のイメージなのですが上面は塞いであります。意図していませんでしたが、向かいの立像群に祈りを捧げているような配置になりました。
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◎立像
今回のメインと言える抽象化された女性像ですが、仮に「立像」と呼んでいたのがそのまま定着してしまいました。スカート部分の円筒形が陶芸の原初の形と考えています。
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◎顔のレリーフ
平面作品のない今回の展示では重要な役割を果たしたと思っています。2022年の「文字と熊」展で発表したタイポグラフィの流動的な形やボリューム感を立体に応用したいと思っていたのですが、結局顔のレリーフのアイデアが出てきて、その年からエスキースを作っていました。表情は作っていませんので髪の毛が主役と言えます。
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◎動物像
世界中には「アニミズム」や「トーテミスム」の流れで神格化された動物が多くそれらの像も多数存在しますが、そうしたものを意識しつつ、ここ2,3年で定まってきた自分らしい造形になっています。目もつけていません。
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来年の活動もよろしくお願いいたします。