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ラブなホテルの開きかたを終えて|#1
12/2に開催されたルームツアー&トークイベント「ラブなホテルの開きかた」を終えて2週間が過ぎ、薄れゆく賑わいの余韻を肴にnoteを書いています。満員御礼となったトークショーではオーディエンスから様々な意見が飛び交い、たいへん示唆に富む夜となりました。そこで出された重要な二つの問いについてぼくなりに考えたことを書き綴ってみよう思います。
Question 1
観光ホテル化するにあたって、この場所の特性をどのようにプランに取り入れるのか。
Question 2
ラブホテルであったことを、観光ホテル化した後にどのように語るのか。
Q1場所性/Q2ナラティブ
一見異なるものから普遍性を見い出し、繋がるはずのないものを繋げようとばかり考えてきたせいだろうか、この二つを問われることで、改めてぼくは場所性やナラティブについて警戒心をもっていることに気付かされました。場所性、ナラティブ、このふたつは固有性を創出あるいは取り戻そうとする価値観に支えられています。グローバル化の行き詰まりによって普遍的価値が揺らいでいる時代だからこそ、固有性に焦点が当たることは理解しているものの、ネットによってここまで繋がりあった社会の中では、固有性を創出しようとする行為が新たな弊害をつくり出してしまうような気がしていて、あっさり受け入れることができずにいます。それはまるでノーブランドを掲げた無印良品がブランド化してしまうような、ミイラとりがミイラになるような、争うことのできない大きな力に飲み込まれてしまうのではないかと恐れを感じています。
少し話が横滑りするようですが、そんなぼくの抱えている警戒心を解くできごとがありました。イベント後にアーティストの前田真治さんとOVELの方針について長い時間をかけて話し合ったのですが、デザインとアート、マスとコア、動物と人間、普遍性と固有性、これらの特性について話し合うなかで、相反するふたつを融合するのではなくパラレルに走らせようというアイデアにたどり着きました。それはつまり「ひろくあさく・せまくふかく」このふたつを並走せることで「ひろくふかく」というイリュージョンが創出されることに期待しようという考えです。この「ひろふかイリュージョン創出案」は、ぼくにとって普遍性と固有性を考えるための道具となり、場所性とナラティブに向き合うための動機を与えてくれるものでもありました。どちらか一方に頼りきったり対立させるのではなく、並走(パラレル)させることで新たな価値を創出できるという希望を得た瞬間でした。今思えば、前回のイベントに集まった方々の顔ぶれを見るかぎり、アートという「せまふか」な取り組みと、極めて大衆的な「ひろあさ」なラブホテルが並走しているユニークさを感じとってくれた結果なのかもしれません。
改め、場所性について
建築においての場所性は、地形、景観、風土、文化、などをプランに反映させることで固有性を創出することを目的としています。しかしこのプロジェクトは改装工事であるため、そこまで広い範囲にアプローチすることはできません。であるなら、観察スケールを小さくしたり、観察対象を変えることによってこの場所のもつ固有性を探り当てたいと考えています。
一方で、表現の世界では場所性についてサイトスペシフィックという言葉を用います。ぼくが考えるサイトスペシフィックとは、場所と表現の固有性がぶつかり合うことで、それぞれの特性が顕になることを目的とした表現手法のことです。これをこのプロジェクトに当てはめると、場所はホテルという施設にあたり、表現はゲストの習慣性にあてはめることができます。この表現手法を用い、さまざまな方面で活躍するアーティストにこの場所のもつ特性を顕在化してもらうことからスタートしたいと考えています。おそらく第2回目のイベントはそのような会になると思います(まだ妄想ですが)
改め、ナラティブについて
ナラティブがこれほどポジティブな言葉として用いられるようになったのはいつからでしょう。時代を遡れば、ナラティブという言葉は「逃れるべき対象」としてネガティブに使われてきました。社会の側から押し付けてくるナラティブに苦しむ人たち、生まれの差別、歴史修正主義、プロパガンダ、これらから逃れるために「解放・自由」という言葉を掲げてきた時代を知っている世代だからこそ、この言葉をあっさり受け入れることができないでいたのかもしれません。しかし先ほど記したとおり、普遍性と固有性のどちらか一方に頼りきったり対立させるのではなく、うまくバランスをとりながら並走させることに希望があるのなら、固有性(ナラティブ)についてもういちど考えてみようと思い直しました。今はまだ答えはありませんが、この試行錯誤や「ラブなホテルの開きかた」というイベントそのものが物語りの一部となっていくことに期待しています。
最後に
今はまだこの二つの問いに応答することはできていません。しかしこの数日のディスカッションを通して少し兆しが見えてきたような気がしています。いつか創出できるであろう「ひろふかイリュージョン」を感じるためにも、2024年は実行の年にしたいと心を新たにしました。そしてなにより、このイベントを支えてくれた 服部さん、三宅さん、塩満さん、そして熱い参加者のみなさま、ほんとうにありがとうございました。今後とも見守っていただけると幸いです。それではまた次回イベントでお会いしましょう。
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