静岡旅行

静岡旅行に来ている。一人旅である。今、御殿場アウトレットに向かって高速バスが走っていて、私は窓際の席でこの文章を書いている。静岡に行きたいと思った理由は色々あって、まず私はコンサートやイベントのために遠方に赴く「遠征」が好きなのだけれども、しばらくそのようなイベントは無いので「遠征の、イベント抜き」をやろうと思いついたのだ。もうひとつは、静岡の街が大好きということがある。私と静岡にどんな所以があるかと言えば「母の地元」なのだけれど、祖父も早くに亡くなり祖母も東京に来てから、ほとんど行ったことがなかった。しかし、練馬区という無味乾燥な土地が地元の私にとって、心の故郷はなぜか小さい頃行った静岡であった。母と話したのだが「明日練馬区が破壊されるので杉並区に強制引越しを行います」というお達しが出たとしても、私は喜んで杉並区に引っ越す気がする。そのくらい思い入れがないのだ。私は田舎とも違う生活感のある街並みがとても好きで、アニメで喩えると「ちびまる子ちゃん」の映画版の風景が近い。そういうことで、私は静岡旅行を計画した。それに加え、松田昇大さんのCDお渡し会を3個キャンセルしたのもある。私はすごく依存性が高いので基本彼のイベントは全て行くようにしているのだが、その生活にも結構飽き飽きしてきた。6000円のお渡し会(本当にひとこと添えて渡されるだけである)を3個キャンセルすると18,000円が浮いた。高速バスや格安ホテル予約サイトなどを駆使すれば静岡旅行は日帰りなら余裕で行ける(結局1泊泊まるのだが)。私の好きな人は本当に悪どい商売をしているなぁと浮いたお金を見て思いしみじみとした。
さて、当日の朝はとにかく眠い。渋谷マークシティ発のバスに乗るのが初めてということもあって渋谷にバスの出る1時間前に着いてしまった。が、マークシティは行ったことないけれどおそらくあそこだな、という見当をつけていたのだがそれが当たり、かなり暇になってしまった。
話は変わるが私はダイエットをしていて、49kgから43.9kgに減らすのが目標だった。なぜ.9kgという中途半端な小数が目標かと言うと、使っているダイエットアプリ「あすけん」ではBMI18.5未満の目標登録が出来ず、私の登録出来る最小値がその数字だったからだ。7月1日からダイエットを始めて今は8月14日なのだけれど、今日朝体重を測ったらちょうど43.9kgになっていた。目標達成は喜ばしいが今日から旅行である。体重計にもしばらく乗れず、色んな美味しい静岡のものを食べてすっかり元通りになっていたらどうしよう、と戦々恐々である。
バスは無事に来て、静岡の御殿場という所まで私たちは運ばれた。御殿場という言葉は小さい頃によく聞いた。祖母の家の墓があるのだと思う。御殿場について私は唖然とした。そういえば、御殿場駅、ではなく御殿場アウトレットモールが目的地なので、「ここから御殿場駅」と検索すると1時間とか出てくるし、そんなことしてたら今日は観光できない。途方に暮れる私の横を「御殿場ゆき」と表記されたバスが通り過ぎた。???Google乗り換えにそんなバスは載ってなかったぞ。しばらく考えて謎が解けた。シャトルバスがあるのだ。シャトルバスはもちろん無料だったので、アウトレットで何も買い物してないのに……と申し訳ない気持ちになりながら乗り込んだ。御殿場駅に着くと、御殿場、という大層な名前とは裏腹の小さな駅がやってきて、とても美味しい手毬寿司弁当を食べた。電車はみかん色で可愛いし、富士山は静岡からより近いし、ニコニコ。
まず静岡に着くと用宗という港町に行った。るるぶか何かに載っていたが観光地とは思えないすごく静かな場所で、本当にちびまる子ちゃんの世界だった。用宗の浜は泳げないけれど、少し足をつけた。東京にはこんな気持ちいい水を感じることはない。私は聴覚過敏なので常にイヤホンで音楽を聴いているが、ふと外してみるととても心地よく、なんの問題もないのに感動した。静岡駅に戻りおでん屋さんを探した。私は小学三年生くらいの時に黒いおでんを静岡で食べた記憶があるのだが、ウロウロしていたらまさにその店が出てきて感動した。注文はタッチパネルになっていたけれど何も変わっていなかった。ホテルは静岡のおばあちゃんの家と反対側にあり、そこで勇気を出して梅サワーを頼んだらものすごく濃くてびっくりした。私は「ほろよい」シリーズの影響で梅のお酒はまろやかだと勘違いしていたのだ。しかし、20歳女子の1人居酒屋もドンと来いな静岡の治安に感動した。駿府城公園は一部閉鎖されていたが、治安が良さそうだったのでしばらく散歩した。驚いたのが、女子の2組3組が点在して話し込んでることだ。静岡には駿府城で語らう文化があるのだろうか。
翌日は大井川鉄道で終点まで行ったら次の電車まで4時間とか言われたので慌てて戻り金谷で散歩した。何故か嵐を聞きたい気分だったのでラブソースイートとかをずっとリピートしていた。金谷駅から新金谷まで行く途中に小さな橋と祠があり、「もしかしたらここが大叔母さんの家かな」と思った。大井川も遊べる雰囲気ではなかったが、金谷の家々はどれも植木鉢をしげらせていたり置物がユニークで、「普通の人々が豊か」という古の時代を思い出した。
旅の最後になにか食べようと静岡駅を歩くとジェラピケとJILLSTUARTとアフターヌーンティーのティールームが並んでいた。ティールームでクレープを食べていたら赤ちゃんを一族総出で可愛がっている家族が隣にいて、なんだか懐かしい気持ちになった。

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