50の手習、サックスを吹く 第5話
2回目のレッスン日もあっという間にやってきた。モチベーションは相変わらず高い。今日はどんなことを教えてもらえるだろう?教育はやはり教えてもらう側の気持ちを如何に高めていくかが大事だということを改めて認識する。
教室に入ると、パンク先生の毛先がピンクになっていた。そして我々生徒は先週同様のメンバーだ。前回教えてもらった通りにサックスをセッティングし、音出しをする。『ド』以外も出してみたりして、さりげなく…いやまあまあ大胆にアピール兼ウォームアップをしてみた。しかしパンク先生はスルー。クールだ。
「ちょっと音出ししててくださいね。私は〇〇さんのセッティングを見ますので」
登山はチームで登頂するとき、1番ペースの遅い人に歩を合わせて山の頂を目指すという。この教室も〇〇さんのペース合わせ、生徒全員で上達を目指す…はずである。しかし〇〇さんは先週教えてもらったことはほとんど覚えてないようで、初回と全く同じことをやっているのだ。そして2回目のレッスンも我々はまさかの『ド』で終わるのである。
2回のレッスン『ド』止まり。つまりこのままでは1オクターブを覚えるのに、5ヶ月ほど掛かってしまう計算になる。まさかそんなことはないはず、次回からはきっと新しいチャレンジをしていくことになるだろう、そう思い教室をあとにした。
いきなり結論から言うが、私は3回目にして『〇〇○大人の音楽教室』を退学するのである。理由は至って単純で、
3回通っても『ド』だったからである。
絶対にサックスを吹けるようになろう、そう決意して入会した教室をまさか1ヶ月で辞めることになるとは思わなかった。もうすぐ50歳になる私は、モタモタしている場合ではないのだ。退会手続きを電話でした際に、
「え?もう辞められるんですか。入会金は戻ってきませんが…」
「はい結構です」
え〜い、損切りだ!と思い切った。今回勉強したことは、モチベーションの高い人はグループレッスンに合わないこと、そして『ド』だった。この高い授業料から学んだことを直ぐ生かすべく、パソコンに向かって『サックス・個人レッスン・〇〇市』でググってみる。私が住んでいる〇〇市に個人レッスンがあるところは、例の『〇〇○大人の〜』教室以外ないのだが、車で約30分ほどの隣り街にあることが分かった。車で30分は若干ネックであるが、何よりも『個人レッスン』にという文字に釘付けである。
そしてすぐにその教室に連絡をしてみた。
つづく