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50の手習、サックスを吹く 第4話

サックスを手に入れた。念願のSELMERだ。手にしただけですでに上手くなった気がする。間違いなく気のせいだ。

実際手にして分かったことは、サックスといっても色々なパーツが分かれている。大雑把にいうとサックス本体、ネック、マウスピース、リード、ネックストラップ。これらを合体連結させれば、サックスの出来上がり。眺めるだけで、うっとりだ。しかし、これで満足してるわけにはいかない。

と言ってもズブの素人のアラフィフおじさん。当然の如く、サックス購入時にHow To 本も購入した。サックスはマウスピースに取り付けたリードを振動させて音を出す。で、そこで大事なのが『アンブシュア』だ…

『アンブシュア』…うーん、初めて聞く単語だ。しかも英語っぽくない。ネットで検索すると、やはりフランス語だ。『〜シュア』のとこで鼻に抜けるように言ってみると、おぉ!なるほどフランス語だ。しかしそんなことはどうでもいい。この『アンブシュア』が如何に音を出すために大事なことがとうとうと書かれているのだ。ちなみに『アンブシュア』は口の形のことである。教本にはマウスピースを咥えた口の断面図が掛かれているが、正直自分の形が合っているかどうか?さっぱり分からない。

ここで私は決断した。

「よし!スクールに通って先生に教えてもらおう!!」

それは調べるとすぐに見つかった。『〇〇○大人の音楽教室』。謳い文句は『初心者でも安心!』。で、早速電話して予約を入れるのだが、個別レッスンが満員のためグループレッスンしか空いてないそうだ。

「グループレッスンでお願いします。」

迷いはない。とにかく教えを請う、きっとこれが上達への近道だ。

レッスン日が待ち遠しい。ピアノを習ってた頃の小学生の私は絶対にこの心境にはならなかった。あれから40年、人は成長するのだ。当然のことながら、それまでは家でとりあえず吹いてみて、音は出せるようになっていた。そしていよいよ『〇〇○大人の音楽教室』の門を叩く日がやってきた。

教室までは我が家から車で5分ほどで、この近さも選んだ理由の一つである。2階にある教室に入っていくと先生らしき人を発見する。金髪、毛先は緑がかっていて、鼻にピアスな若い女性。これが私の『師』となる方…。ロック…、いやパンクだ!きっと前衛的な激しいサックスの音色を聞かせてくれるだろう。悪くない。

そして私とサックス奏者になるために一緒に練習することになる仲間たちはというと、推定70歳くらいの男性と恐らく60歳を超えたくらいの女性…私がどうやら最年少のようだ。

グループレッスンは月3回、60分/回である。先生から自己紹介があると、早速サックスを組み上げるところからスタートする。まずはマウスピースにリードを取り付けるところからスタートする。リードの先端がどの位置にあれば良いのか?パンク先生は親切に教えてくれる。3人とも取り付け完了すると、あとは合体ロボのようにマスピースをネックに挿入し、さらにそれを本体にガッチャンコする。で、首に掛けたネックストラップに引っ掛ければ準備完了だ。

さあ、いよいよ音出しだ。まずは左手の中指で上から2番目のポタンを押さえて息を吹き込む。いわゆる『ド』だ。予め家で吹いていたお陰ですんなり『ド』が鳴る。仲間のひとりである女性も、ほどなく『ド』が鳴る。あとは…男性だ。『ド』がいきなり難産だ。結局パンク先生も諦めたようで、おもむろにメトロノームを鳴らし、「一緒に吹いてください!」と言って『ド』を先生と同じように吹く。そこで記念すべき1回目のレッスンはタイムアップ。

初回『ド』だけであったが、まずはこんなもんだろう。次回からきっと色々な音を出し、正しい『アンブシュア』も教えてもらえるだろう、ひょっとしたら曲も吹けるかもしれない。そう思い、教室をあとにした。

つづく


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