しばいぬとオレ 〜ペットロス編〜
溺愛していたからこそなんだが、ロッキーが亡くなってから嫁さんの落ち込みが酷い。まあ無理もなかろう、時が解決してくれるだろうと思っていた。
リビングでテレビを一緒に見てるときに、ふと横を見ると嫁さんの頬に涙が伝っている。ロッキーのことを思い出しているんだろう。あまり思い出さないようにした方がいいよと言うと、
「だってしょうがないじゃん!ロッキ〜!!」
と言って、また泣く。毎日一緒にいたロッキーがいない。寂しい、悲しい。
その通りなんだが、しかし、この状態はいつまで続くんだろうか?
ペットロス。
ペットを亡くした飼い主が悲しみや悔いで落ち込むこと。酷くなると心の病や身体的な病気を患ってしまうこともある…。
ロッキーが亡くなるまでは、ペットロスは他人事と思っていた。いざ最愛のペットを失ったとき、今がまさにそのときであるが、ここまでとは思わなかった。毎日一緒に過ごし、我が子以上に可愛がっていたのだ。
我が家は、このとき二人の息子たちがアメリカの大学に進学していて、冬休みになれば帰ってくる。今11月末だから、あと2週間もすれば我が家は賑やかくなるだろう。そうすれば、多少気が紛れるかもしれない。
嫁さんの頬を涙が伝う日々が続く。
2週間が経ち、先にシアトルの大学に通う二男が帰国した。コミュ力高めで、ユーモアあふれるこの子が嫁さんを癒してくれるだろう。そんな期待を抱いていたが、嫁さんの元気は戻らない。
ペットロスはペットでしか解消されない。
ネットでこの記事を発見した。若干ペット産業のマーケティングかと思いもしたが、やはり新しい犬を迎え入れよう。そう提案すると、
「ロッキーに代わる子はいない。」
そりゃそうなんだが、これでは堂々巡りである。
乗り気でない嫁さんを二男に託し、ペットショップまで行って良い子がいるかどうか?見てきたらどう?と提案したところ、渋々ながらも見に行くことになった。
「良い子がいたら、連れて帰ってきていいから!」と言ってオレは会社に出かけた。
その日の昼過ぎだったろうか、
「良い子がいた!優しい顔した子が!!連れて帰るからね。」
と電話が掛かってきた。即決!?、嫁さんは思いっきりが良い。
家に帰ると、そこには利発そうで優しい目をした、でもプルプルと震え、やせ細った薄い茶色のしばいぬがいた。
これが我が家のしばいぬ2代目、『ハチ』との出会いだった。