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長期の養育費不払いを時効にさせない ①

時効って誤解されがち

こんにちは、海苔子です。
強制執行を検討した人が最初にぶつかるのが漢字だらけの法律用語、そして数々の制度です。私も始めの頃は債権者と債務者を逆に使って笑われました。はずかしー。
新シリーズ【用語解説】では、調停調書正本トリロジーや債権差押命令申立書マニュアルに登場した法律用語や、聞いたこともなかった制度について解説します。第1回目は私が誤解していた時効について解説します。マニアックです。

※民法と判例は2024年8月7日現在の情報を元にしています。間違いがありましたらご指摘ください。


呪文を復習しましょう

私は債権者、不払い養育費という名の債権を持っている。
あちらは債務者、不払い養育費という名の借金をしょっている。


時効で養育費は自然消滅しないよ

「その話はもう時効にしてー」
数年前の恥ずかしいことを暴露されて、こう返したりしますよね。時効って何年か経過した瞬間に借金が消えるものと思っていて、当然、養育費も時効が来た分=時効成立分は請求できないと諦めていました。これ、完全なる誤解です。

時効の期間が過ぎた瞬間に不払い養育費の請求権が消える! なんてのは、刑事事件と民事事件がごっちゃになった誤解です。養育費問題が含まれる民事事件には、債権者と債務者を救済する時効のマジックがあります。

では、時効マジックをのぞいてみましょう。

確かに養育費に時効はあるけど

養育費の時効は正式には消滅時効と呼ばれ、以下になります。
・裁判所での養育費の取決め(調停調書など) 10年
・公正証書、離婚協議書 5年

毎月払いの養育費は、毎月、時効の危機が発生することになります。

調停調書ホルダーの私のケース

2011年7月末   不払いスタート
↓(約141か月間)
2023年4月中旬  調停調書正本が元夫に届く。任意返済こと白旗返済スタート

2023年9月中旬  白旗返済がストップ 

2023年10月1日付 債権差押命令申立書を送付
↓ 
2023年10月中旬  債権差押命令が発令

不払いから10年(120か月)を経過した分、21か月分が時効で消滅する=時効の完成となる可能性がありました。けっこうな高額です。ところが、任意返済こと白旗返済がスタートしたので進行していた時効期間はリセットされ、白旗返済開始日からのスタートに戻りました。これが時効マジックその1、時効の更新です。(民法第152条)

1000円でいいからでも取り立てよ

債権回収のプロからアドバイスされたのは、1000円でもいいから取り立てること。返済の意志あり=債務の承認とされて時効が更新され、時効期間の起算点がその日からに巻き戻ります。極論、1円でもいいので受け取ったらすぐに記録しましょう。
連絡が取れるなら、メールやSNSで元配偶者から「養育費を支払います」と約束させてもいいです。送信取り消しされる前に即スクショを。これが時効マジックその2、債務の承認です。

ギリセーフ、時効の一時完成猶予

もし、時効の完成までギリギリなら、大至急、マジック3 時効の一時完成猶予を。内容証明郵便で養育費の支払い請求をすれば、時効の完成を6か月間一時停止できます。その間に相手と平和的にお話し合いして債務の承認からの時効の更新でもいいですし、顔も見たくないならササッと強制執行。このマジックは一度しか使えないのでスピード勝負です。(民法第150条)

首の皮一枚で取り返せた21か月分

私のケースです。
時効完成となった21か月分は、白旗返済こと任意返済されたので、債務の承認と見なされます。さらに、うれしいお知らせが。時効完成後に任意返済されると、「時効完成分は払わないよ」宣言(時効の援用)ができなくなる、という判例があります。(民法第146条、最決 昭和41年4月20日民集第20巻4号702頁。)

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