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[TOR]Andres GimenezとNick Sandlinを獲得

サムネイルはこちらからお借りしています。
https://x.com/BlueJays/status/1866699499327938677?t=T8xkhPUgPUsJOwWTnFM06A&s=19

※この記事は、全ての商用的利用或いは著作権侵害の意図を放棄しています。


ご覧いただきありがとうございます。
BlueJaysファンのとりすきです。

 
 現地12月10日、ウィンターミーティングにて行われたドラフトロッタリーは大敗北に終わり、悲しみと順位発表を行った同地区BAL所属のColton Cowserに対する恨みを募らせていた矢先、とんでもないトレードが成立しました。

TOR獲得
Andres Gimenez(INF)
Nick Sandlin(RP)

CLE獲得
Spencer Horwitz(1B/2B)
Nick Mitchell(OF)
マイナー

 
 ということで、今回はこのトレードに関する所感について述べていこうと思います。



獲得&放出した選手の紹介

 
 トレードの感想を書く前に、まずはこのトレードに関与した選手の概要について簡単にご紹介。



[獲得]Andres Gimenez


https://www.mlb.com/player/andres-gimenez-665926

 ゴールドグラブ賞3回プラチナグラブ賞1回オールスター選出1回というとんでもない実績を誇る俊足堅守の内野手。

 2022年以降は2Bをメインに毎年DRS+15超、OAA+12超、FRV+9超と傑出した守備力を発揮。
 また足も速く盗塁は三年連続で20以上を記録し、総合的な走塁貢献を図る指標BsRでも全てのシーズンでプラスを稼いでいます。

 一方の打撃はというと、2022年のキャリアハイ時は557打席で本塁打17本、OPS.837、wRC+142と飛び抜けた活躍を披露していましたが、その後二年間はパッとしない成績
 
 また打球指標もリーグ最低クラスで、さらに空振りこそ少ないですがゾーン管理もそこまで得意とはしていない印象です。

https://baseballsavant.mlb.com/savant-player/andres-gimenez-665926


(上手い)



[獲得]Nick Sandlin

https://www.mlb.com/player/nick-sandlin-680704


https://baseballsavant.mlb.com/savant-player/nick-sandlin-680704?stats=statcast-r-pitching-mlb

 
 Nick Sandlinは右投げの変則リリーフ。
メジャーデビュー後4シーズンで209登板、195.1イニングを投げて防御率3.27と安定した成績を残しています。

 特徴はほぼ水平のリリースポイントで、変則的なフォームから繰り出されるスライダーとスプリットがマネーピッチ。特にスライダーのWhiff%はほぼ全てのシーズンで40%を超えています。

 
 一方制球はあまり良くない様子。
BB%は全シーズンで10%超え、適切な場所に投球することが出来る能力を評価したLocation+もずっと100未満となっています。

(このフォームでExtensionがそこそこ長いのよくわからん)



[放出]Spencer Horwitz


https://www.mlb.com/player/spencer-horwitz-687462
https://baseballsavant.mlb.com/savant-player/spencer-horwitz-687462

 Spencer Horwitzはヒットツールに長けた内野手。
昨年にMLBデビューし、今年ブレイクを果たしました。

 ゾーン管理とコンタクト能力に優れており、またフライを打つことも得意であるため出塁と長打をバランス良くこなせる打者と言えるでしょう。

 
 守備位置は主に1Bですが、オプションとして2Bを担うことも一応できます。またマイナー時代はLFを守っていたこともありました。
 
 
 欠点はパワーの不足と走塁のマイナス、そして最も重要な左投手に対するプラトーン介護が必要という三つの点でしょうか。

 こちらは新人が1試合で放った総塁打数のフランチャイズレコードを記録した際の映像。ご覧の通り右打者相手ならあらゆる球を弾き返します。


 一方本塁打になりそうな打球が柵越えしないという、若干のパワー不足を感じさせるようなシーンも…



[放出]Nick Mitchell(マイナーリーグ)

https://www.milb.com/player/nick-mitchell-814455

 
 Nick Mitchell
は2024年ドラフトの4順目終了後補償ラ全体136順目で指名された左打ちの外野手です。

 
 小柄ながら引っ張り方向へ強い打球を飛ばすことができるレベルのパワーは持っています。
またスピードも優秀で、プロデビュー後はCFをよく務めていました。

 ドラフトでTORに指名された後はA-に配置。22試合102打席で打率.289、OPS.817、HR3本とそこそこの成績を記録。

 一方、打球の指標は控えめで、特に大卒選手にも関わらずA-にてハードヒット率23.3%は結構物足りない数字のように思います。




トレードの問題点


 移籍した選手の紹介を終えたところで、ここからは私が思う当トレードの問題点について述べていきます。

 大きく分けて問題点は4つ。

①なぜ2B補強?
②なぜAndres Gimenez?
③なぜNick Sandlin?
④放出したHorwitzのその後



①なぜ2B補強?


 詳しくは以下のnoteに書いていますが、若手の台頭によりTORは2Bの層が他のポジションよりも比較的厚くなっていました。

 Ross AtkinsGMもデプスの厚さに言及しており、こちらを利用してトレードを行うことも示唆しています。
 
 そのため人員の放出は理解できるのですが、それで新たなセカンドベースマンを獲ってくるのはよく分かりません。

 
 3Bや両翼といった明確な穴が存在するにも関わらず、最初の野手補強がなぜ2Bなのでしょうか?



②なぜAndres Gimenez?


 セカンドベースマンの補強はまだいいとして、それによって選ばれたのがなぜAndres Gimenezなのかも理解しがたい。

 2024年シーズンのTORはいつにも増して貧打に苦しんでいました。チームOPSは全体18位(.703)、HR数は全体26位(156本)と2021年以降最低の数字を記録。

 
 球団のエグゼクティブも、今オフの課題として打撃の柱Vladimir guerrero jr.を補佐するパワーバットの追加をたびたび発言しています。

 にも関わらず、今季OPS.790 wRC+127の選手を放出して補強したのが、直近の2シーズンでwRC+100を割っているAndres Gimenezです。
 
 確かに2022年は素晴らしい成績を残していますが、曾ての打棒が都合よく復活するなんて楽観視が出来る状況ではないでしょう。

 
 更に厳しい問題が、彼の年俸。
Andres Gimenezは2023年シーズン開幕の直前、古巣CLEと7年106.5M(+CO最大24M)の契約を結んでいます。Spotracによると契約金4M+2023年ペイロール約1.5M、2024年が約5.6Mであるため、TORは残り5年で約95.7M(+バイアウト2.5M)を確実に支払わなければなりません。

 
 また、AAVはトレード時に再計算されるため、残り金額を年数で割ると約19.3Mとなります。
 

https://www.spotrac.com/mlb/player/_/id/24208/andres-gimenez

 
 もちろん実年俸も高いですが、それよりAAV約20Mの契約が最低でもあと5年も続くため、編成の柔軟性を大きく損なうことになり、この点がキツい。
 
 
 さらに、実際のペイロールとAAVどちらのことかははっきりしませんが、球団社長Shapiroが来季の給与を大幅に引き上げる事はないと発言している以上、トレード以前よりも限られた予算のなかで打線・先発デプス・リリーフの補強を強いられます。

 
 
とはいえ、wRC+100以上の成績を再び記録できるようになれば、球界トップクラスの守備も相まってお得な契約へと早変わりするのですが。



③なぜNick Sandlin?


 今オフのTORは、リリーフ陣の再建が最優先課題となっていました。

 
 チーム防御率は全体29位(4.82)。その下はクアーズフィールドを本拠地とするCOLなので、事実上の最下位です。
 それを示すかのように、FIPは29位COLに約0.2ポイント差をつけるダントツのワースト(4.84)を記録し、結果・内容共に2024シーズン最悪のブルペンであることを証明してしまいました。

 
 さらに、これまでフランチャイズ史上3番目に多い105セーブを記録したチームの絶対的守護神Jordan Romano怪我と来季の年俸上昇を理由にノンテンダー。その後彼はPHIと契約したことで、オールスタークローザーを失う結果に終わります。

 クオリティの高いリリーフ及びクローザーを内外から集める必要に迫られたTORですが、補強第一弾として選ばれたのが

 
 Yimi Garciaの再契約と、今回のトレードにて行われたNick Sandlinの獲得でした。

 
 ところで、打力に優れ現在最低年俸且つ後5年保有出来るHorwitzを放出し、言い方は悪いですが契約が重いAndres Gimenezを引き取ってまでして獲ってきたリリーフがSandlinで良かったのでしょうか?

 
 彼の実績は申し分なく、また奪三振力は非常に優秀ですが、与四球と被弾があまりにも多い。ここ二年間のFIPは4点台後半から5点台、xERAも4点台かそれに近い数値と安定感のなさが際立っています。
 
 
 
投手育成に長けたCLEならともかく、一度ブルペンが崩壊してしまったTORが変則的でクセのある彼を使いこなせるのか、正直な所不安です。

 (※上記のようにスライダーがHeartゾーンへ集まってしまい、結果被弾するというパターンが散見されます。)


https://www.fangraphs.com/leaders/major-league?pos=all&lg=all&qual=0&type=8&season=2024&month=0&season1=2024&ind=0&rost=0&age=0&filter=&players=0&team=5&stats=rel&sortcol=7&sortdir=default&pagenum=1

 
 では他に獲得できる投手はいなかったのか。
 
CLEのブルペンを見ると、まず守護神Claseと新人王票を一部獲得した(超すごい)Smithはアンタッチャブル、またGaddisHerrinら残りの勝ちパはとんでもない対価が必要であるはずなので、彼らはノーチャンスだとみて良いでしょう。 
 また、Hentgesは怪我、Avilaはマイナーオプションが残っていないため敬遠するはず。

 
 となると、別のメンバーを候補とするべき。
残った有力なリリーフは、今回獲得したSandlinの他、若手のSabrowskiWaltersになります。

 
 TORはGenesis Cabreraをノンテンダーしたことで左のリリーフ層が薄くなっているため、球速は遅いものの非常に質の良いFBを持つLHP、Sabrowskiが最もフィットするのではないでしょいか。
 出力の高いWaltersももちろん魅力的ですが。

 
 しかし、CLE側は若手の二人を次代のコアリリーフと見做しているはずなので、仮に要求した場合の対価はつり上がっていた可能性があります。

 
 一方のSandlinですが、彼はスーパー2の調停2年目(来季)であり、それを除いても残り2回の調停を残しているため、スモールマーケットのCLEには将来の負担となる可能性がありました。
 また、彼は今年のNLCSロスターに入らない程あちらの中では序列が低かった模様。

 
 
そういった2つの点から、CLEにとってはSandlin
今回のトレードで最も放出しやすいリリーフだったのでしょう。

 
 となると、二つの選択肢の内、TORフロント陣は上を選んだのかもしれません。

Sandlinで妥協する
・もう少し対価を増やし、より質の高いリリーフを獲得


④放出したHorwitzのその後


 はっきり言ってこれが一番気に食わない。
TORとCLEの件が報じられてから数時間後、今度はCLEとPIT間でトレードが起こります。

CLE獲得
Luis Ortiz(SP)
Josh Hartle(SP)PIT傘下17位 マイナー
Michael Kennedy(SP)PIT傘下15位 マイナー

 Horwitzが転売されるのは分かるんですよ。正直CLEでは余剰戦力気味に思えたので。
 しかしPIT側が出した対価に・Luis Ortizの名前がある、これはいけない。

 
 高騰している先発を余剰戦力で獲得できるチャンスだったのに、どうしてうちは直接PITと交渉しなかったのか


https://www.fangraphs.com/depthcharts.aspx?position=ALL&teamid=14#DH

 ここでFangraphsのデプスチャートを確認。
TORの先発は4番手まではそこそこのクオリティ。しかし5番手が暫定イニング及び球数制限ありのYariel Rodriguezと急に内容が不安になってきます。

 またマイナーの層も非常に薄く、今のところ戦力として計算できそうなのは菊池雄星のトレードでHOUから獲得したJake Blossのみ。次点はAAでの成績が芳しくなく肘に問題を抱えた Adam Mackoという、怪我人が複数発生した場合かなり危うい状況です。


 実際にTORはローテーションを担う先発だけでなく、控えの選手も狙っているとのこと。

 また、Atkins GMは新たなローテーション投手を加えた場合Yariel Rodriguezのリリーフ再転向の考えを示しており、一回の補強で先発・リリーフのグレードをグッと上げることができます。

 

 そんな状況下で、中々の出力とイニングイート能力をもち、先発・リリーフ双方で運用可能、さらに最低年俸でオプションも残っているLuis Ortizを獲得できる機会が実際にあったのです。

 
 しかし優先順位が低いはずの2Bと比較的安価なRPの補強を敢行した結果、一定のクオリティを持った先発の獲得チャンスをみすみす逃し、ALのライバルがそれを行っている様を指をくわえて見ることしか出来なかったフロントは無能。

https://www.mlb.com/player/luis-l-ortiz-682847
https://baseballsavant.mlb.com/savant-player/luis-l-ortiz-682847



・まとめ


 今回起きたTOR←→CLE間のトレードについて、問題点提起とその批判を行いました。

 以下はそのまとめです。

①なぜ2B補強?
大きな穴であった3B・両翼より先に、若手を中心に層が厚かった2Bの大型補強に動いたのは謎。

②なぜAndres Gimenez?
打力に課題のあるチーム状況にも関わらず、打撃より守備走塁がウリの選手、しかも金銭的に負担の大きいAndres Gimenezを獲得したのは謎。

③なぜNick Sandlin?
崩壊したブルペンへのカンフル剤にNick Sandlinというのは些か力不足感が否めないけれども、CLEから彼以上の選手を引き出すのは難しい。
しかし、個人的にはもっと対価を奮発してでもよりハイクオリティなリリーフを獲って欲しかった。

④放出したHorwitzのその後
一定のクオリティを持った先発の獲得チャンスをみすみす逃し、ALのライバルがそれを行っている様を指をくわえて見ることしか出来なかったフロントは無能。

※トレードの駒としてHorwitzが選ばれたこと自体は妥当と考えているので、文句はありません。
残念ではありますが。





フロントの思惑


 ここまで政権批判をこれでもかというくらい行ってきましたが、では何故フロントはこのようなトレードを行ったのか、特にAndres Gimenezの獲得に至った理由について考察していきます。

・走塁に対する期待
・打撃改造に対する自信
・Bo Bichetteの後釜として
・フロントの寿命




・走塁に対する期待


Atkins:“As a baserunner, adding that level of speed and that level of athleticism, plus him being here for a long time, all of that was very attractive to us.”

(訳)
走者として、あのレベルのスピードと運動能力、そして彼が長い間ここ(TOR)にいること、そのすべてが私たちにとって非常に魅力的だった。

https://x.com/KeeganMatheson/status/1866639704805777895?t=I5wMQBgOti33bVxcaQllWA&s=19

 Atkins GMは、Andres Gimenezの走塁能力に大きな魅力を感じているとのこと

 確かに、baseballsavant曰く彼のsprint speedは上位11%。また選手紹介の項目でも触れましたが、彼の走塁による貢献は全てのシーズンにおいて+の評価がなされています。

 
 一方、TORの既存野手を見るとその能力に欠けている選手が非常に多い。
 2024年シーズンに於けるチーム盗塁数は30球団中全体27位(72個)、総合的な走塁貢献BsRも同じく全体27位(-12.7)とかなり低調な成績です。
(※そもそもTORはここ数年走力が弱く、ここ3年間の合計BsRも全体26位)

 
 個人で見てもチーム最多盗塁盗塁数はGeorge Springerの16個。二桁盗塁を決めたのは彼の他にDaulton Varsho(10)とErnei Clement(12)の3名のみ。
(KirkやVladdyは見た目からして走塁貢献マイナスでしょ)

 
 得点の不足(今季全体23位)に悩まされたことヘの対策に、フロントは直接的な打撃だけでなく、違うアプローチでも改善に取り組もうとしたのかもしれません。その結果がAndres Gimenez獲得?

 
 走塁貢献(あと守備)が打力に優先されるなんてそんなバカなことあるかい、と思う所もありますが、チームに違うタイプの選手が加入するのはまあ良いことなんじゃないですか?

 
 また、走塁より大きな課題であるチーム打力の改善については、既存戦力の有効利用に活路を見出しているのかもしれません。


Atkins:“If you just looked at our projections and the performance of players and did the math on that, you could make the case that we have 10 wins within our roster right now to close (the gap), if we deploy them appropriately and put them in the best positions to be successful,”

 我々の予測と選手のパフォーマンスを見て計算してみると、選手を効果的で最適なポジションへ配置すれば、現時点でのロースターには10勝分(差を)縮められるという主張ができる。

https://www.sportsnet.ca/mlb/article/how-the-blue-jays-are-trying-to-close-their-post-season-gap-this-off-season/

 フロント曰く、現在のロスターにいる選手を適切に配置すれば10勝(WAR10.0)分の底上げが期待できるとのこと。

 
 またAtkinsは積極的なプラトーン起用及びそれに使えるオプションの増加を目指しているらしく、この点が既存選手の効果的な運用に繋がっているのかもしれません。

Atkins:“making sure that we have more options for the platoon effect.”

 プラトーン効果のためのオプションを増やすことだ。

Atkins:“We put more right-handed hitters up to the plate than any other team in baseball last year, so just accounting for that,”

昨年、我々は野球界の他のどのチームよりも右打者を多く打席に立たせたので、その点を考慮に入れた

https://www.sportsnet.ca/mlb/article/how-the-blue-jays-are-trying-to-close-their-post-season-gap-this-off-season/
なお、当記事内でTORの打撃不振は打者の右左 如何ではなくレギュラー選手の流出だと突っ込まれている模様

 そういえばAndres Gimenezって左打者じゃん。その点も踏まえて獲得に踏み切ったのでしょうか?


 とにかく、打撃力の向上は既存野手の有効活用及びLF/DH系を中心とした後の補強に任せ、Andres Gimenezには違う方向での貢献に期待して獲得した可能性があります。
(そんな上手くいくはずないと思う。)




・打撃改造に対する自信


 Atkinsが“some upside in the bat.”と発言しているように、フロントはAndres Gimenezの打撃面でのアップサイドに期待しています。

 
 やはり2022年の素晴らしい成績を見るに、打棒の潜在能力に惹かれる所があったのでしょう。

 
 また、TORには彼のようなお世話にもパワーヒッターとは言えない打者の成績を改善させた実績が複数存在

 
 元CLE所属のErnie Clementや、今季のTDLまでTORに在籍していたIsiah Kiner-Falefaは強打者ではありません。
 しかしこちらに移籍してからは大きく飛躍し、前者は12本塁打を達成して平均的な打撃に成長、後者はサンプルこそ少ないですが281打席でHR7本、OPS.758 wRC+118という彼のキャリアからすると考えられない結果を残しています。

 
 とはいえ、その功績の大部分を占めるであろうMatt Hagueコーチは11月にチームを離れているのですが……

 
 彼の打撃改造については、新任のDavid Popkinsが担うことになります。着任早々責任重大な使命を果たさなければなりませんが、彼の手腕に期待するしかありません。




・Bo Bichetteの後釜として


 

Atkins:“The elite defense speaks for itself and we have acquired him to play second base for us,”

そのエリート守備は物語っている。我々は彼を二塁手として獲得したことを。

https://www.mlb.com/news/blue-jays-guardians-andres-gimenez-trade

 AtkinsはAndres Gimenezを2Bとして獲得してきたと話しています。2025年シーズンはもちろん正二塁手として起用するでしょうが、再来年以降はどうでしょうか?
 MLB.com TOR番記者のKeegan Matheson氏は、2026年シーズン以降、彼をSSとして起用するのではないかと指摘しています。

 
 来季オフ、数年間TORの正遊撃手としてチームを牽引してきたBo BichetteFAとなる予定です。

 
 今年こそ怪我の影響でダウンイヤーとなりましたが、元々彼は強打の遊撃手として複数シーズン活躍してきた実績があります。
 
 
 もし来シーズン復活して素晴らしい成績を残し、満を持してFAとなった場合、市場のインフレや2026年開幕時28歳という若さも相まって、今オフWilly AdamesがSFと結んだ7年182Mを超える巨額の契約に膨れ上がることは間違いありません。

 もう一人のフランチャイズプレイヤーにしてチームの柱Vladimir Guerrero jr.の引き留めという至上命題を抱えているTORにとって、正直Bichetteとの契約延長にまで手が回りません。移籍の可能性が高い以上、彼を諦めて代役を探す必要があったのです。

 
 Andres Gimenez
の主要ポジションは2Bですが、SSを300イニング以上守った2021年には、そこでDRS+5、OAA+4と少ない守備機会にも関わらず積み上げ指標でハイクオリティな成績を残しています。

 
 SSへコンバートした上で、打力さえwRC+100ちょっとにまで復活させることができれば、そのエリート守備も合わさってBichetteの穴を埋められる選手になり得るとフロントは判断したのではないでしょうか?

 
 また、彼の保有年数もフロントは気に入っているようです。

Atkins:“As a baserunner, adding that level of speed and that level of athleticism, plus him being here for a long time, all of that was very attractive to us.”

(訳)
走者として、あのレベルのスピードと運動能力、そして彼が長い間ここ(TOR)にいること、そのすべてが私たちにとって非常に魅力的だった。

https://x.com/KeeganMatheson/status/1866639704805777895?t=ix-KvQWE4yZ9qUgVi4nmWg&s=19

 ただ単に、WARを安定して稼げる内野手を26~32歳の間、FA選手より安い価格でキープできるという
意味で「魅力的」だったのかもしれませんが、私はそこに別の意図もあるのではないかと考えています。

 
 それは傘下有望選手昇格までの「つなぎ」です。

 
 TOR傘下A-には、2023年ドラフト一巡目指名の高卒内野手Arjun Nimmalaがいます。
彼は若干18~19歳ながら、持ち前のパワーと優れた適応力でプロ入り初年度ながら活躍。なんとNYMのスーパースターショートFrancisco Lindorも期待をかけるほど。

 とはいえ、まだまだデビューは先。MLBでまともに出場できるまで最短でも3年はかかるでしょう。

 彼が昇格するまでの間Bo Bichetteの後釜としてSSを任せられ、そのために比較的安価で且つ長期間保有できるであろう選手を探した結果、該当したのがAndres Gimenezだったのかもしれません。



・フロントの寿命


 2021年シーズン開幕前、TORはMark Shapiro球団社長と5年の契約延長を結びました。
そして2025年、来シーズンオフには彼との契約が切れることになります。

 
 また、彼の政権下で生まれたフランチャイズプレイヤーVladimir Guerrero jr.Bo Bichetteの両名がチームに所属している最後の年にもなるでしょう。

 
 つまり、2025年がMark Shapiro(及びRoss Atkins)による体制、シャトキンス政権の終焉、そして彼ら最後の戦いなのです。


 ところで、この記事の「トレードの問題点①なぜ2B補強?」にて、来シーズンのTORは若手を中心に2Bの層が厚いと書きました。
 しかし、そのメンバーはいずれも光るものがあるとはいえ、MLBデビューしたて或いは該当ポジションでの出場数が少なく、全員がレギュラーの座を掴みきれていないという状況です。
 
 言わば(いずれかのメンバーが来シーズンにて躍進する前提で)層が厚いということ。
もっと簡単に言うとギャンブル。

 
 そんな政権のラストダンス、彼らにとっては絶対に結果を残さなければならないシーズンを控える中、若手のアップサイドに期待するような、賭けに出る余裕はなかったのでしょう。

(私は若手に任せて欲しかったですが…)



・まとめ

 
 TOR←→CLE間のトレードを行うに当たって、TORフロントの思惑、特にAndres Gimenezを獲得した理由を考察しました。

 以下にそのまとめを示します。

・走塁に対する期待
Andres Gimenez獲得は、チーム打撃の向上というより寧ろ走塁面の改善という別のアプローチで得点力を底上げする策だった?

・打撃改造に対する自信
Andres Gimenezは2022年に打撃面で素晴らしい成績を残しており、さらにTORはパワー面で優れているとは言えない選手のバッティングを改善させた実績が複数あるため、彼の打撃改造にも自信をもっている。

・Bo Bichetteの後釜として
トッププロスペクトArjun Nimmalaが昇格するまでの間Bichetteの後釜としてSSを任せられ、そのために比較的安価で且つ長期間保有できるであろう選手を探した結果、該当したのがAndres Gimenezだった?

・フロントの寿命
球団社長の任期的にも、フランチャイズプレイヤーの残留期間的にもシャトキンス政権の寿命が迫る中、最後の戦いに挑む上で2Bに若手ではなく強力なレギュラーを配置したかった?

 フロント側の思惑についていざ考えてみると、TORとAndres Gimenezはフィットする箇所も意外とあることに気がつきました。
こじつけや考えすぎかもしれませんが…

 それでも個人的にはトレード反対派というのは変わりませんがね。



最後に


https://www.fangraphs.com/teams/blue-jays

 締めにデプスチャートを見て終わりましょう。

 なんやかんやで2Bに強力なレギュラーが入りブルペンの見栄えも若干良くなったため、戦力の底上げは確実につながったと思います。

 しかし、これだけでは足りません。
同地区が揃いも揃ってソリッドな補強を行っている以上、ちょっとやそっとのパワーアップでは太刀打ちできず、また地区最下位に送り返されるだけ。

 同地区に対抗するためには、今後もパワーバット追加先発層の厚みを増やすといった課題の解決に動き続ける必要があります。

 幸い、報道では上記のような選手をしっかり狙っているとのことなので、我々ファンはフロントの戦いを見守ることにしましょう。
(何かあったら騒ぎます)
 


目指せPS進出できるチーム!!


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参考文献


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