【モータルコンバットはやってるうちに観に行け】モータルコンバットはやってるうちに観に行け
【真田広之は世界最強の忍者】
俺はいまモータルコンバットを見てきた。
原作には詳しくないが、そんなことは問題にならなかったことをまず伝えておく。
見に行け。
映画モータルコンバットは現代最高のニンジャアクション映画であり、その証拠に浅野忠信の目が発光している。
真田広之がゴリゴリのアクションをやる機会は今後何回あるかわからないが、ラスト・サムライとかエンドゲームとか、ウルヴァリンSAMURAIとかのハリウッド出演作はモータルコンバットのための準備運動に過ぎなかったことがよくわかる。
真田広之の役は最強の忍者ハサシ・ハンゾウである。冒頭、彼は冷気を操る中国忍者ビ・ハンによって妻子を殺戮され、怒りのカラテを振るってメチャカッコいい流星鏢アクションを全解放するが、敗れ、死ぬ。
彼の遺児は目が発光している浅野忠信が保護するが、ハンゾウ自身の魂も400年もの間地獄で復讐の機会を待ち続けているのだ。
つまり真田広之はフジキド・ケンジであり、ニンジャスレイヤーである。
つまり今回の映画モータルコンバットは実写版ニンジャスレイヤーとしての側面を持つのだ。
この時点で、この映画を見ない選択肢が失われた人間がいることを確信している。
フジキド・ケンジの声に森川智之が当てられたときも感動したものだが、実写版を真田広之がやっている(ものとする)と考えると、感動もひとしおだ。
理想だ。理想の配役である。見ないという選択肢があるだろうか。
見るか見ないかではない。見るのだ。
洋画の忍者アクションといえば、Netflix版デアデビルシーズン1に出てきたヤクザ忍者、ノブを思い出す。距跋渉毛というやたらマイナーな鎖武器を自在に操る強敵で、これがメチャクチャ良かったのだが、
今回の真田広之の流星鏢(まあロープ付きクナイだ)アクションは映像効果もあってそれを上回る派手さである。
ヤバい速度で回転突きを繰り出すのでジョー・タスリム(ビ・ハン役)に刺さるNGシーンがあるんじゃないかと疑うレベルだ。
もちろんクライマックスでアレするので刮目して待てばよい。
【人類の守護神は目が発光している浅野忠信】
……現代!
『魔界があること』『次負けると人類は魔界に支配されること』が3行で説明される。
そうだ。それでいい。魔界はある。いいね?
それで、アレだ。魔界があるので、人類は選ばれし戦士をアレして戦わないといけない。
体にモータルコンバットマークがある奴等は人類代表だが、他の奴が殺すと殺した相手にマークが移動する。アバウトなシステムである。
主人公が出てきたりとか色々とアレするが、なんやかんやあって人類の守護神である目が発光した浅野忠信の寺院に集まる。
浅野忠信の目は発光している。
人類の守護神なんだから当然だ。なんか杖を振るうと電光が出て、瞬間移動したりバリアを張ったりできる。その間も目は発光している。
浅野忠信の浅野忠信みを目を発光させることで適切に調理するとは、恐るべき鬼才がいたものだ。
沈黙サイレンスでは折り目正しい武士官僚の顔をさせることで浅野忠信の浅野忠信みを綺麗にアク抜きして、(え、これ浅野忠信みたいな顔してるけど浅野忠信なの?)と、スコセッシに驚かされたものだが、それほど浅野忠信はアクを抜くのが難しい難度Aの食材なのである。
目を発光させれば良かったのか……!
コペルニクス的転回、コロンブスの卵、浅野忠信のパラダイムシフトといえる。映画産業に関するハリウッドの集合経験値は、この域にまで達していたのだ。
【ルディ・リンの筋肉がヤバい】
リュウ・カン(ルディ・リン)である。
リュウ・カンは、2D格闘といえばこれが必要でしょというあのキャラ立てであり、頭に鉢巻を巻いて手から炎を飛ばす。
ゲームでは主人公的位置付けだが、「それを映画の主人公に据えるとイマイチになる」という過去の映画群の苦い経験が、彼を仲間ポジションに配置させた。
目が発光している浅野忠信の元で優等生的ポジションをキープしている彼だが、シャツを脱ぐとビビるぐらい体が仕上がっており、誰もそれに言及しないのが不自然すぎて笑ってしまうぐらいムキムキである。
親友のクン・ラオ(マックス・ファン)は鍔が刃物になった帽子を被っており、巷ではお節介焼きのスピードワゴンと評判だが、たぶん元は空飛ぶギロチンである。つまり、メチャカッコいい。
序盤で両手を失う義手軍人マンは、真の力に目覚めると義手が凄くなるんだろうなーと思っていると真の力に目覚めて義手が凄くなる。
ミックスフライ定食を頼んだらミックスフライ定食が出てきた時のようなたしかな満足感だ。明らかに義手の質量が増大しているのはブライ・シンクロン理論の応用で間違いない。
あとは目から怪光線が出る髭や格闘ゲームに出てくる女軍人さんを完全再現した女軍人さんなどが出てくるが、いずれもミックスフライ定食である。
主人公が過去のゲーム版に出ていない、映画初登場のキャラクターであるところにも工夫が見られる。
この種の原作付き実写映画は、人気の確立した濃厚な味付けのキャラクターが出てくることが確定しているので、主人公の配置が結構難しい。
リュウ・カンのところでも少し言及したが、ゲームの主人公的主人公を配置してしまうと、映画として話が回らなくなってしまう危険がある。
そこで、初登場の、適度にキャラクターの薄い白人MMAマンを主人公に配置し、真田広之との関係性をストーリー上でも描写上でも重ね合わせにしておく。
こうすることでクライマックスで真田広之がクライマックス真田広之形態で登場しても違和感がなく、ストーリーの勢いをクライマックス真田広之に食われても全然問題がない。主人公は真田広之の未来であり、子供なのだから未熟でも薄くても問題ない。原作付き実写映画として非常に巧みだ。
細かなところで期待を裏切らない。これは原作付き実写映画を作るときにとても大切なことだ。
凡百の実写映画は余計なところの再現にこだわって雰囲気を破綻させてしまうが、モータルコンバットはそういうところがなく、信頼できる。
サムライミ版スパイダーマンあたりを嚆矢とするアメコミ映画化ブームから、映画版デアデビルなどの苦悩を経て培ってきたハリウッドの経験値、確かな土台を感じさせる。
【ダークナイトの投資家マンから善の金持ちを経て魔界の支配者になったチン・ハン】
シャン・ツン(チン・ハン)である。
彼は魔界の大ボスとして、荒野の真ん中にモルドールの黒門を建設しており、部下を従えて思わせぶりなことを言い、浅野忠信と睨み合う係だ。
演じているチン・ハンは、個人的にはダークナイトで香港の投資家(マフィアの銀行屋)をやっていた印象が強い。最後はジョーカーに札束ごと焼かれるのだが、脇役ながら印象に残るキャラクターだ。
その後、スカイスクレイパーのハイテク高層ビルオーナー大金持ち役をやっているのを見たが、なんと善人にジョブチェンジしており、ドウェインジョンソンをサポートしたり男を見せたりしていた。
いかんせん悪役顔なので、最後に裏切るんじゃねえのという気持ちもあったが、ちゃんと善人であった。これには驚いた。
そしてモータルコンバットでとうとう魔界の大ボスになった。人間界に現れるときには目が全面真っ黒になるので誰だかわからなくなるのだが、魔界に戻るとちゃんとチン・ハンなので安心する。
こういう印象に残る俳優さんというのは大事にしたい。何年か後に思わぬところで見て驚いたりできるのが、映画の楽しみというものだ。
真田広之を地獄に葬ったビ・ハンであるが、サブ・ゼロと名を変えて魔界にいる。こいつはダークニンジャだと思っておけば間違いない。
このサブ・ゼロが悪役として非常に際立っており、登場するときは冷気を纏っているのですぐにわかる。
雪が降り、地面や窓が凍りつく。地面に生じた拳大の氷を無数に飛ばし、砲弾のように街を破壊する。掴めば凍り、手からは氷の刃を出す。イカしたキャラクターだ。
「奴が来たぞ!」という演出が繰り返されるため、ダース・ベイダーのようなプレッシャーを作り出すことに成功している。
クライマックスではこれにクライマックス真田広之形態のニンジャスレイヤー真田広之がドーン!してイヤーッ!グワーッ!?するわけだからもうハズレがない。2兆点である。
【まとめ】
映画モータルコンバットを見ないという選択肢はない。
メチャクチャカッコいいものにメチャクチャカッコいいものを乗せて、メチャクチャなアレにメチャクチャなアレをトッピングしたやつにメチャクチャなアレをメチャクチャ添えているわけだから、
心配すべきことは上映時間中にトイレに行きたくならないかなとかそういうことだけだ。行け。
【おわり】