香苗の恋

高瀬甚太

 年頃になって、結婚の話が持ち上がるたびに香苗は勇次のことを思い出して悩んだ。
 二十四歳になってすぐの年、親戚の叔母が香苗に見合い話を持ち込んできた。
 「こんないい縁、もう二度とないよ。だから断るんじゃないよ」
叔母はそう言って念を押した。
 香苗のことをわが娘のように心配する叔母の愛情に応えるために、香苗は仕方なく見合いを承諾した。
 ――勇次さん、早く私を迎えに来てよ!
 見合いの前日、香苗は勇次のことを思って眠ることができなかった。だが、行方のわからない勇次からは未だに何の音沙汰もなく、居所すらつかめかった。
 京都の円山公園近くの料亭で見合いをすることになった。相手は繊維会社の御曹司で、香苗に一目惚れをして、先方が香苗の叔母に頼み込んで来たと聞いた。
 見合い当日、朝から激しい雨が降った。香苗には叔母が付き添い、先方は父母が同行していた。
 香苗はその日、叔母のすすめで振袖を着た。明るい花柄の色合いが、控えめで大人しい香苗によく映え、元々美しい香苗をさらに美しく華やかに見せていた。
 「ご趣味はなんですか?」
 無難な問いかけをしてくる見合い相手の男は、松本隆と言った。品のよい、いかにも大会社の御曹司といった気品に溢れた好男子だった。年齢は三十歳で香苗より六歳上になる。
 「あまり大した趣味はございません」
 香苗が応えると、それを否定するかのように叔母が口を挟んできた。
 「香苗ちゃん。あんた、日本舞踊が趣味だったじゃない。それにお茶とお花」
 「あら、いまどき、お珍しいですのね」
 見合い相手の松本の母親が驚いたように言う、その母に向かって叔母は、
 「この娘は本当にやさしくてよく気がつくいい娘なんですよ」
 と、ここぞとばかりに香苗を売り込む。
 その時、松本が香苗を意味ありげな視線を香苗に送った。
 「私、香苗さんにお会いしたことがあるんですよ。以前、友人の誕生日パーティで」
 松本の話を聞いて、多分一年前のことだろうと香苗は思った。勇次と一緒に行ったパーティーのことを松本は言っているのだ。
 五十人ぐらいの人たちが集まったパーティに松本が居ただなんて気づきもしなかった。そういえば松本は印象の薄い、個性の乏しい顔をしている。明日、街で出会ってもきっと気付かないだろう。それほど記憶に残らない男だ。
 「香苗さんに初めてお会いした時、ぼく、体に電流が走ったような衝撃を受けました。自分の求めていた人にようやく出会えた。あの時、心からそう思ったんです。でも、あなたとはあの日、話を交わすことも挨拶さえできなかった。もう一度会いたい、そう思ってあなたを探し続けました。だけど、あなたのことがわからなくて……、一年かかって、ようやくあなたを見つけることができました。すぐ身近にあなたがいたのにずっと気が付かなくて、私の取引先にあなたが勤めていたなんて、本当に奇遇だと思いました。最初はそちらの会社の社長に中に入っていただこうかと考えたのですが、それではあなたにプレッシャーをかける、そう思って、あなたの親代わりである叔母様にお願いしました」
 松本の話は、香苗の耳に届いてこなかった。感情の籠らない喋り方だったせいもあるし、乏しい表情のせいもあっただろう。だが、それよりも何よりも香苗の中の勇次の存在があまりにも大きすぎた。
  
 香苗が勇次に出会ったのは二十歳の成人式直前のことだった。その頃、香苗は大学生で、食品化学の研究に没頭していた。サークルにも入らず、バイトもせず、ひたすら研究に没頭したのは、研究所のリーダーである准教授に憧れを抱いていたからだ。しかし、相手は妻子持ちで、年齢も四十五歳と、香苗より二十六歳も年上だった。無論、香苗が慕っていることなど相手はまるで気付いていなかった。すべて香苗の片思いに過ぎなかったのだが香苗は十分満足していた。
 恋に恋する、香苗はまだそんな年齢だったのだと思う。准教授の存在も、香苗の妄想の中で生まれたラブストーリーだったに過ぎない。ただ、この頃の香苗は、まだそのことに気付いていなかった。
 研究所のメンバー全員で催しをすることなど一年に一度もなかった。ところがその年の年末、急に忘年会が開かれることになり、全員参加が義務づけられ、香苗も参加することになった。
 予想していた通り、盛り上がりに欠ける忘年会になった。メンバー構成は、男子七名、女子四名、それに准教授の多田陽一の十三名で、午後七時に始まり、午後九時に散会した。
 騒ぐ者は誰一人としておらず、ただ酒を呑み、それぞれに会話をするという地味な忘年会になった。八時過ぎに二人が脱会し、終了時間の九時には五人ほどしか残っていなかった。
 「山科くん、せっかくだ。もう一杯付き合ってくれないか」
 宴会場を出て、すっかり暗くなった夜の街を香苗が一人で歩いていると、追いかけてきた准教授の多田に声をかけられた。香苗は、心を弾ませながら、迷わず「はい」と返事をして、多田に従った。
 多田は、繁華街から少し離れた雑居ビルに入り、エレベーターに乗って三階で降りた。そのフロアには、数件のバーやスナックがあり、多田はそのうちの一軒、『沙羅』という店のドアを開いた。
 「あらぁ、先生、いらっしゃい! どうしたのですか、かわいい女の子を連れて」
 店のママらしき人物に声をかけられた多田は、
 「今日は研究室の忘年会があってね、その帰りなんだ」
 と説明をしてカウンターに腰をかけ、香苗に隣に座るようすすめた。
 「どうだ、研究室はもう慣れたか?」
 水割りの入ったグラスを呷るように口にした多田が、香苗を覗きこむようにして聞いた。
 多田の酒臭い息を身近に感じた香苗は、自分のイメージしている多田とのギャップに少したじろいだ。
 「はい、どうにか……」
 「そうか。それはよかった。さあ、もっと酒を呑んで」
 香苗が緊張していると感じたのか、多田はしきりに香苗に酒を強要した。酒を強要しながら、多田の指や手の平が先ほどから香苗の背中や腰の辺りにまとわりついてくる。それを香苗は避けようと体をよじるのだが、多田の指はさらに大胆になってくる。
 「先生、やめてください」
 香苗の言葉でようやく多田は手を引っ込めた。香苗は安堵の表情を浮かべて、
 「もう遅いですし、ここを出ませんか?」
 と、香苗は多田を促した。多田は素直に立ち上がると、ママに、「ママ、お勘定」と言って財布を取り出した。
 店の外に出ると外気が冷たかった。夜更けになって寒さは一段と増したようだ。並んで歩くうちに、多田の手が香苗の小さな手をわしづかみにした。香苗は、酔っているのだと思い、しばらくそのままにしておいた。
 「山科くん、きみ、ぼくが好きなんだろ?」
 多田の言葉に香苗は驚いて立ち止まると、多田は、その手をぐいっと引っ張り、体を引き寄せて香苗の唇を奪おうとした。抵抗する香苗を、多田は無理やり引っ張って行こうとする。目の前にラブホテルの看板があった。
 「きみの思いを今晩かなえてやろう」
 多田は下種な笑いを浮かべると、香苗のか弱い体を羽交い絞めにして、ラブホテルの中へ入ろうとする。
 「やめてください。先生、お願いです」
 必死で抵抗する香苗を無視し、多田はさらに強い力でホテルの中へ押し込めようとする。
その時、急に香苗の体が自由になった。えっと思って多田を見ると、多田は路上に仰向けになって倒れていた。
 「おい、早く逃げろ」
 若い男が香苗に叫んだ。香苗は立ち尽くしたまま動けないでいた。多田は起き上がってくると、若い男に暴言を吐いて飛びかかって行った。
 しかし、再び男に転がされ、その時、ガツンと腰を打ったようでしばらく起き上がって来なかった。
 それを見た男が、
 「おい、行くぞ。今のうちだ」
 そういって香苗の肩を抱くようにしてその場を離れさせた。
 香苗は憧れていた多田の思いもよらぬ本性をみて、少なからずショックを受けていた。
 呆然自失となっている香苗をみて、若い男は少し休ませた方がいいと思ったようだ。遅くまで開いている喫茶店に香苗を誘った。
 若い男は香苗を椅子に座らせると、ホットコーヒーを二つオーダーし、香苗が気持ちを落ち着かせるよう図った。
 「大丈夫か?」
 コーヒーが届くと、男は、
「温かいうちに飲んだ方がいい」
そう言いながら、香苗を気遣った。
 男は無言で煙草を吸い、コーヒーを飲み、香苗が気を取り直すまで待った。
 「すみません。もう大丈夫です。本当にありがとうございました」
 ようやく気を取り直した香苗が男に礼を言うと、男は、
 「いいんだ。これから気をつけるんだな」
と言い、
「ここから一人で帰れるか? タクシーを拾ってやるよ」
 喫茶の代金を支払った後、入口に向かいながら男が言った。
 二十代半ばだろうか、派手な原色のジャケットを着て、一見遊び人風に見える男は、肩まで伸びた長い髪を揺らしながらタクシーを呼び止めた。
 「金は持っているか?」。
 気が動転していた香苗は、「はい」と応えてタクシーに乗ったものの、男に礼を言うのを忘れていた。それどころか、名前を聞くことさえ忘れていたことにタクシーが発進してから気が付いた。だが、タクシーはすでに男の元を離れ、高速道路へと入っていた。
 多田准教授への失望感から香苗は時を置かず立ち直ることができた。研究室で顔を合わせても意識することはなかった。多田は香苗に対して忸怩たる思いを抱いていたようだが、香苗はそのことすら気にしなくなっていた。香苗はそれよりもあの時、自分を助けてくれた男のことが気になっていた。
 印象に残る顔と残らない顔の違いは、顔の造りや特徴だけでなく、その人の心の内なるものが表面に現れることにあるのだと、香苗は気が付いた。
 香苗を助けてくれた男は、ごく普通の、どちらかといえばきれいな顔をしていたが、それでも香苗の心に深く印象付けたのは、男の内なるものが表情に生き生きと現れていたことだ。香苗は一度しか面識がないのに、その男の顔をはっきりと覚えていた。
 高校時代の同級生と休日を利用して野外で行われる音楽のイベントに香苗が参加したのは、それから一か月後のことだ。
 出場者は無名のミュージシャンがほとんどだったが、広い会場は人でうずまっていた。
 「後半に登場するミュージシャンなんだけど、心に染み入る歌を聴かせてくれる歌手がいるの。わたし、彼の大ファンなの」
 笹江みどりが興奮した口調で香苗に語った。みどりの熱狂ぶりに香苗もつられてやって来た。だが、香苗にはみどりのように贔屓にするような歌手はいなかった。
 数千人を呑みこんだ会場は、舞台が幕を開けるとすぐに熱狂のるつぼと化した。
 潮風が吹きすさぶ冬の会場ではあったけれど、大勢の観衆が押し寄せるここは、寒さなどとは縁遠い熱帯地域のようであった。
 「次よ、次、出てくるから」
 みどりの声がかき消されるほどの歓声の中、一人の男がギターを持って登場した。イントロが流れ始めると、一瞬のうちに場内が静まり返り、男の歌声が海上全体を包んだ。
 聴く者、それぞれの胸に熱く問いかけてくる男の歌声は、やさしく強く、時には温かく会場を覆い尽くした。
 「この歌って何?」
 初めて耳にした男の歌声に、香苗は驚きと懐かしさ、底知れぬ愛を感じ,立っていることができないほどの震えを感じた。
 男の歌が止むと、観客から期せずしてため息が漏れた。香苗は、歌い終えた男の顔をもっとしっかりとこの目に刻み込みたいと思い、みどりの持っていた望遠鏡を借り、ステージの男を注視した。
 「……!」
 香苗はそこに、香苗を助けてくれた男を見た。紛れもなくあの男性だ。一度しか会っていなくても心の奥深く刻み込んだ男の顔を忘れるはずはなかった。
 「真田勇次と言うの」
 みどりが興奮冷めやらぬ様子でその歌手のことを語った。
「まだ無名で、デビューも果たしていないのに、ファンクラブができるほどの人気なの。素敵でしょ。私、大ファンなの」
真田勇次――。その日、香苗はその名前を何度となくつぶやいた。でも、自分とは縁遠い人だと思うと、何となく寂しい気持ちになった。

翌年、大学を卒業した香苗は北九州への卒業記念旅行をみどりと共に企画した。だが直前になってみどりが急性の盲腸炎を患い、仕方なく香苗は一人で旅に出ることになった。
 宮崎まで飛行機で行き、車を借りて温泉を巡る予定にしていた。キャンセルをしてもよかったのだが、支払った金がもったいなくて、すべて予定通りに行動することにした。
霧島温泉郷に到着した香苗は、その夜、霧島ホテルに宿を取り、硫黄漂う庭園温泉を堪能した。食事を終え、百年杉の繁る庭園を一人歩いていた時のことだ。香苗の耳に勇次の歌声が響いた。最初はレコードが流れているのかと思ったが、やがてそうではないことに気が付いた。あろうことか、勇次が香苗の目の前でギターを鳴らしながら歌っていたのだ。
夢ではないかと、香苗は思わず耳を疑った。だが、庭園の片隅で歌っているのは紛れもなく勇次だった。なぜ、勇次がここにいるのか、誰一人いない夜の庭園で歌っているのか、わけもなく興奮した香苗は、その背中に思わず、「勇次さん」と呼び掛けた。
勇次はゆっくりと振り返り、驚いたような顔で香苗をみた。だが、香苗のことを覚えているはずがない。それでもよかった。どういう理由であろうと、勇次に再会できた、そのことが香苗には嬉しかった。
「いつぞやは助けていただきありがとうございました」
香苗は勇次の元へ近づくと、以前、勇次に助けられたことへのお礼を述べた。勇次は最初、何のことかわからなくてぽかんとしていたが、やがて、「ああ、あの時の…」と思い出し、その頬に小さな笑顔を浮かべた。
香苗が勇次の歌を聴いて感動したとが告げると、勇次は「歌を廃業したんだ」と寂しそうに言った。
香苗が聞いた、あの時の歌を最後に勇次は突然、歌の世界から消えてしまった。香苗の友人のみどりも一時、そのことを話題にして残念がった。噂では、薬物違反で捕まったのだ、という説と、女性問題のスキャンダルでデビューが頓挫した、などの噂が流れたが、どちらも噂に過ぎず、そのまま勇次は歌の世界から消えた。
「歌をやめたのは、突然、声が出なくなったからだよ。デビューが近づいていよいよこれからという時だったからショックだった。医師の判断では喉にポリープができて、それを除去しないとダメだということになった。かなりひどいポリープだったようで、悪性の疑いもあったからポリープを取り除けばそれでいいというわけでもなかった。結局、ぼくのデビューは流れて、せっかく入りかけた歌の世界から離れることになった」
勇次はそう語り、実家が霧島だから、あの後すぐに帰郷して、今はこちらで実家の手伝いをしているのだと、寂しげに語った。
香苗は予定を変更して、卒業旅行の残りの日程をすべて勇次と共に過ごすことにした。勇次の声は一年ほどして回復し、今は以前にもまして素晴らしい歌声を出せるようになっていた。だが、今の勇次は歌手になる希望も情熱もそのすべてを失っていた。
霧島を去る時、香苗は勇次と連絡を取り合うことを約束した。手紙でもメールでも電話でもいい。必ず私と連絡を取ってほしい。そうでなければ、私、死んでしまう。脅しではなかった。本気で勇次に迫った。勇次はなかなか承諾しなかった。だが、香苗が車で霧島を去ろうとしたその瞬間、ようやく、小さな紙切れに自分の住所と電話番号、メールのアドレスを書いて香苗に手渡した。
それから約半年間、香苗はメールを送り続け、電話をし、勇次を励まし続けた。
「あなたの歌を待っている人たちがたくさんいる。私もその一人です。もう一度、あなたの歌声を多くの人たちに聞かせてあげてほしい」
香苗はそういったメールを何通も勇次に送り続けた。それが、香苗の精一杯の愛情表現であるかのように――。しかし、勇次からの返信は少なかった。それでも五通に一通の割合で香苗の元へ届けられた。そこには、歌の世界のことは何も書かれていなかったが、勇次の日増しに元気に、明るくなっていく様子がみてとれた。それだけで香苗には十分だった。
だが、半年ほど経った頃、突然、メールが届かず、電話も不通になった。心配した香苗が、霧島の勇次の実家を訪ねるが、そこにも勇次はいなかった。
 両親は、勇次が突然消えたわけを「あの子なりに考えるところがあったんでしょ。最近、ずっと思い悩んでいたから」とあきらめにも似た口調で語った。
 香苗はずっと勇次のことを考え続けていた。だが、勇次からの連絡はあれ以来、一切届くことはなかった。

 見合い相手の松本は相変わらず饒舌にしゃべり続けていた。だが、彼の言葉に心を動かされることはなかった。叔母は必死になって松本の両親に香苗を売り込んでいる。その姿を見て、香苗は申し訳ないなと思うのだが、動かない自分の心はどうしようもなかった。
 「少し散歩しませんか?」
 松本が料亭を出て円山公園を散歩することを提案した。ずっと座って松本の話を聞いているよりマシかもしれない。そう思った香苗は松本と共に料亭を出ることにした。
 料亭の一階、待合室に大型のテレビが置いてあった。玄関を出ようとして、ふとテレビから流れてくる声に耳をやった香苗は、その声を聴いて思わず立ち止まった。立ち止まり、大急ぎで玄関を駆け上がり、テレビの前に立った。
 ギターを抱えた勇次が画面いっぱいに映し出されていた。
「突如、現れ、聴衆の心を根こそぎ奪った素晴らしい歌手の登場です」
司会者はそういった言葉で勇次を紹介し、勇次が司会者に促されてマイクの前に立った。
 「私、長い間、歌う喜びを忘れていた時期がありました。声が出なくても、どんなに調子が悪くても、歌う喜びさえ忘れなければ本物の歌手になれる。その苦悩の時期にそうやって励ましてくれた人がいました。私は、その人のおかげでこうやって再び、歌を取り戻すことができました。香苗さん! 長い間、連絡をしなくて申し訳ありません。この歌はあなたへの思いを語る愛のメッセージです。もし聞いてくださっていたら、ぜひ受けとめてください。愛しています」
 勇次の歌声が流れ始めると、香苗はその場に突っ伏して人前構わず泣いた。晴れ着がしわくちゃになるよ、と叔母が叫んだのも、松本が大声で、子供みたいにこんなところで何をしているんだ、と叫んだのもまるで気にならないほど、勇次の歌声に夢中になって聞き入った。
 見合いはもちろん破談になった。叔母の怒りは相当のものだったが、香苗は平気だった。最高の良縁を得た、その確信が香苗にはあったからだ。
<了>


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