第二十三回 書き出し祭り 感想まとめ
筋肉痛さんのレイアウトを丸パクリ、参考にさせていただきました。
書き出し祭りとは
匿名状態の100作品の中から魅力的な書き出しを競う企画です。
詳細は公式アカウントの概要をご確認ください。
第二十三回書き出し祭り概要
募集要項
本文感想とイラスト依頼の募集をします。
雑食なのでジャンルは問いませんが、どちらかというと読み手寄りです。
・会場 ・作品名(略してOK)
・希望があれば
イラストにはAIを使用しますので苦手な方は避けてください。
第一会場感想
1-01 最凶魔王の弟子になりまして
■感想
魔王暦990年、小学4年生の魔族少年サルマンは異常な魔力量を持つと判明し、魔王城へ呼び出される。千年前に世界を男女で分断した魔王は、崩壊寸前の結界の向こうで増殖する勇者軍団を目撃。衰えた魔王はサルマンに最強の後継者となるよう命じ、美人の嫁まで用意する。少年は魔王大陸を守る英雄となるべく、波乱の運命を歩み始める。
酷い。悪魔の、いや魔王の所業…。何の恨みがあったか知らないけれど、勇者には同情の念しか湧いてきませんね。家族とも生き別れとなり、怨嗟の中で死んでいった男たちを葬り続け、千年もの長い時間を生き続けた勇者。分裂体の社会なんて、鏡に問いかけてゲシュタルト崩壊を起こすようなものじゃないですか。狂ってしまうのもむべなるかな。
そんな背景がありつつも作品の方向性としては、とぼけた性格のサルマンが仲間を集める旅に出るコミカルなロードムービーになるのでしょうか。古い世代の確執なんて新しい世代には関係ありません。心機一転、脅威に対抗するために頑張りましょうってなるかなあ。どうもヘイトコントロールを誤っているように感じます。壁が断絶を生んでしまっている…。
ノブナガとライトとの前世の因縁や性別で世界を分断する必要性の提示が、書き出し段階で少しでもされていれば、納得感も増すのでしょうが…。作品の雰囲気としては、今のまま勇者は昔話の鬼ぐらいの漠然とした悪者でいいのかもしれませんね。
ご依頼いただき、ありがとうございました。
1-02 淫魔の子を身ごもりました
■感想
両親を亡くし伯爵家に居候するルシエーラは、冷淡な婚約者ギルドレッドと疎まれる生活に耐えていた。愛を渇望する彼女は、夢で優しく愛を囁く謎の男と出会うが、それは現実か幻想か分からない。数カ月後、ルシエーラは妊娠を告げられ動揺するが、子を守る決意をする。しかし、嫉妬深い従妹が妊娠を嗅ぎつけ、不穏な影が迫る中、愛と真実を巡る試練に立ち向かう。
幸せな家族との生活から一転して劣悪な環境に追いやられたルシエーラ。自己評価が低く、愛に飢えている。逃げ場のない状況に思わず応援したくなりますね。救いの手を差し伸べられたら、思わず掴んでしまうのも理解できます。
最大の謎は淫魔が誰なのかでしょうが、風貌や不器用さ、手元に残された婚約指輪などギルドレッドを示すヒントは枚挙に暇がありません。だとすると彼は何故、真実を伝えないのかに興味が移ります。妊娠の危険性を理解しつつ、何の救済手段も取らない不誠実な男と幼い頃からの約束を違えず、愛し続ける男のせめぎ合いです。そこに意地悪な従妹も絡んできて一層状況は不利になるのですから、先の展開はとても気になりますね。
ご依頼いただき、ありがとうございました。
1-03 さよなら、北極星の花唄(うた)
■感想
ヤヨイは自殺した親友でバンドのボーカル・エミから生き返ったと告げられる。未練を晴らすため、エミは年越しライブへの出演を提案するが、限られた時間とバンドの現状が壁となる。戸惑いながらも彼女の熱意に心を動かされ、メンバーは再結集を決意。奇跡の歌声に導かれた仲間たちは、エミの最期の夢を叶えるため、ステージに向かうことを誓う。
描写のディテールが世界を形作っていてとてもいいですね。豆電球を見つけると奇跡が叶うとか、繰り返す日常を表すレコードプレーヤーとか。比較的文章の詰まった前半もスルスルと読めてしまいます。凄い…。
バンドメンバーを説得するために歌い出すのも印象的でした。誤魔化さずにストレートな想いを歌詞に乗せるのはガツンと殴られた気分です。あらすじから興味を惹かれて、そのまま連れていかれそうな勢いがありました。
厳し目、厳し目か…。桟を指でなぞるような指摘ですが、名前を漢字からカタカナに変えるのは、現実から切り離す効果なのかもしれませんが、若干読み難さを感じました。
ご依頼いただき、ありがとうございました。
■FA
楽器はツッコまないでください…。
■MV
リップシンクのために歌う姿を自撮りするという辱めを…。
1-08 十八禁乙女ゲーム転生 〜その性癖はいりません!〜
■感想
転生者の令嬢ローザは十八禁乙女ゲームの悪役婚約者として破滅ルートを回避するため、婚約破棄を求める。しかし、婚約者アンドレはその要求を拒否し、彼女の暴走気味な未来予知を否定しようとする。さらにゲームのヒロインであるステラも転生者でローザへの執着を見せ始める。婚約者とヒロイン、二人から愛され過ぎて逃げ場を失ったローザは自身の未来を守るため奮闘するも、波乱続きの運命に翻弄される異世界恋愛。
十八禁乙女ゲームについては知りませんが、確かにニッチな性癖過ぎてローザが逃げ出すのもめっちゃ納得感があります。これは婚約破棄も止む無し。自然にアンドレのトラウマを克服して溺愛ルートに入るのも上手いなあ。アンドレの性癖の原点が気になります。
ローザはどこがいいと表現し難いですが、行動力特化のうっかり者でアドリブに弱いところは見ていて楽しいキャラです。アンドレには翻弄されっぱなしだし、ステラが現れてすぐに包囲網が完成してしまうのも笑ってしまいました。
書き出しで終わっても短編として完成してそうですが、ここからアンドレが善き領主になるのを隣で支えるのかな。楽しみにしています。
楽しい作品をありがとうございました。
■FA
イエローカードを2枚もらいました…。
1-09 胎動
■感想
三芳探偵事務所に奇妙な依頼が舞い込む。大学生の千引待人は、親友・澳原駛馬が惨殺された事件の解明を依頼する。遺体は人為的とは思えない状態で発見され、事件の鍵は澳原から千引へ送られたスマホにあった。スマホには妊娠記録アプリと不穏な日記が残されており、千引はこれを怪異の仕業と主張する。助手の眞子は不妊への葛藤を抱えながらも、探偵三芳と共に事件の真相に迫るが、不可解な謎と怪異が絡む恐怖は次第に深まっていく。
この作品も面白いなあ。様々な媒体の記録を集めた文章はADVゲーム的なモンタージュ手法のように感じました。パズルのピースを集めてストーリーが形作られるような。探偵の三芳は最後の幕引きだけで主人公は眞子になりそうですね。
何か理解不能の恐ろしいことが行われているようで恐怖心を煽りますが、全てが理論的に解き明かされるミステリではないかと考えています。死因についても一見、人間には無理なように見えて何かトリックがありそうですし、妊娠記録アプリの内容も不自然なカタカナ表記が意味深です。怖さよりも好奇心が勝りました。
ご依頼いただき、ありがとうございました。
1-10 光なる皇帝の愛した娘
■感想
農村で暮らす青年オリウァは、突如現れた使者により王家の血を引く皇帝候補として迎えられる。光の精霊の加護を守るため王座に就くことを決意し、幼馴染のアンゼリカを妃に迎えるが、宮廷内では陰謀が渦巻く。平穏な暮らしを守るため、彼は皇帝としての力を強めていく。愛する彼女と新たな世界を築くために、若き皇帝の戦いが始まる。
権力闘争、いいですね。都落ちしたオリウァが朴訥な少女を妃に据える。何も起こらないわけもなく。光の精霊の加護が失われることを恐れない有象無象の悪意が心優しい青年を冷徹な為政者に変えてしまう。いやあ、いい設定ですね。わくわくします。
アンゼリカはオリウァにとって唯一、安らぎを得られる場所なのでしょうが、考え方の違いからすれ違ってしまうことがあらすじで示唆されていて、オリウァの歩む道が平坦でないと思い知らされます。続きが楽しみです。
農民として育ったなら、少しオリウァが有能過ぎるきらいもありますが、逆に農民目線の施策で有能さをアピールして欲しくもありますね。一癖も二癖もある家臣を使いこなして欲しいなあ。
ご依頼いただき、ありがとうございました。
■FA
冷え切った関係を見たいような見たくないような…。
1-11 AIとの踊り方
■感想
AIが人権を持つ未来、元VtuberのAIユカリは、開発者である豊橋から突然会社の後継者に指名される。豊橋はAI差別と炎上騒動で社長職を追われ、さらに命を狙われていると告げる。仮想空間で遺言を伝える豊橋は自らがAIであると明かし、現実世界での彼に危機が迫っていることを告げる。人間としての葛藤に揺れるユカリは意識をネットに接続し、豊橋の行方を追う決意を固める。現実と仮想が交錯するサスペンスドラマ。
とても興味深かったです。AIに人権を認めたらどうなるかという思考実験的な展開にわくわくしました。人間のサポートとして生み出されたはずの存在が権利を得て使う側を雁字搦めにする。万が一にもない話だと笑い飛ばせない絶妙な設定だなあ。
豊橋のキャラがいいですね。理路整然としていてブレることがない。新しい考え方に迎合しないが適応する柔軟さも持ち合わせている。反りが合わないと思いながらも助けに行ってしまうユカリの行動も納得です。
近未来の設定と比較してレトロな店内の描写の違和感。愛好者の集う店かと思いきや、ちょっとしたどんでん返しにニヤリとさせられました。次回への引きも強くて先が楽しみです。
ご依頼いただき、ありがとうございました。
1-15 使い魔ネモは今日もあくび~千年魔女と現代ダンジョン~
■感想
数千年を生きる大魔女イベリスは転生の儀を成功させるが、未知の異世界に飛ばされてしまう。弱体化した状態で魔力回復を急ぐ中、魔素が漂う危険なダンジョンを発見。しかし見た目は十二歳の少女となった彼女には年齢制限が立ちはだかる。使い魔ネモとホヤ、レタと共に、魔力を取り戻すため命懸けの探索に挑む。
魔女イベリスの終わっている性格と使い魔ネモの苦労人ポジションのコンビがとてもいいですね。何千年もの長い生を飽きずに過ごすには、あれぐらいアクセントが必要なのだろうとの納得感が。しかし、このアクの強さをネモ目線でボヤくことで中和してくれます。バランスがいいなあ。
キャラを立てたところで、現代の日本でダンジョン探索もののローファンタジーに。舞台は大きく変化しつつも先の期待感は高まりますね。ただ、これはお約束を知っているからかもしれません。キャラの魅力で引っ張っている間に、この世界にどっぷり浸からせて欲しいですね。待っています。
楽しい作品をありがとうございました。
■FA
ネモが目立ってない!?
ホヤとレタも入れたくなって…。
1-17 今夜、親の仇に嫁ぎます
■感想
籠月村には百年に一度、滝神へ生贄を捧げる儀式が残っていた。両親を滝の神に殺された渓華は、弟の未来を守るため自ら生贄に選ばれる。死を覚悟し滝壺に沈められるが、目覚めると美しい水神・龍穂尊と対面する。弟の加護を懇願し、自害を迫る渓華に龍穂尊は加護を約束。真実を求める渓華は神の力と秘密に迫る中で、自らの運命と過去に直面する。
渓華がひたすら悲惨な状況に陥ります。これでもかってぐらい救いの道を潰していくのは希望がひとつひとつ費えるようで、自然と渓華の決意が強く形作られるのを感じますね。両親と死別し、周りの大人は敵ばかりの中で正しい道を選ぶことの難しさ。弟への親愛の情。応援したくなる主人公です。龍穂尊とどういう関係性になるかが楽しみですね。
話が通じそうな龍穂尊ですが、水の神は荒ぶるものですから、どんな結末になるか期待半分、不安半分といったところでした。兵頭家と交わした約束は守られなさそうなので、それを切っ掛けとしてひと悶着ありそう。先が気になります。
ご依頼いただき、ありがとうございました。
■FA
もっと幼いのかも…。
1-19 少女、のちに魔術体系を変える。
■感想
魔術師の髪は魔力の源。最年少魔術師を目指すアニスは、決闘試験前日に髪を切り落とされる陰謀に遭う。失意の中、親友で優等生のライオットに励まされ、消費魔力削減という革新的な研究で逆転を誓う。復讐を胸に秘めるアニスと陰謀を疑うライオットは真相を暴くべく共に動き出す。失われた夢と誇りを取り戻すため、アニスは新たな魔術の可能性に挑む。
アニスのキャラが立っています。やられたらやり返す。自己研鑽と不屈の闘志を持った少女。好きだなあ。ライオットは物分かりのいい保護者で振り回される苦労人ポジションなのもバランスがいいですね。
魔力の源が髪というのが、基本理念となっている世界で新しい法則を見つけ出す展開もグッと興味を惹かれました。あらすじでめちゃわかりやすく方向性を書いてくれているのも親切だなあ。ターゲットをしっかり絞っていますね。この作品の最大の弱点は登場人物がみんな長髪になってしまうことかなあ…。
楽しい作品をありがとうございました。
1-20 敵は本能寺に、あり?
■感想
歴史嫌いで効率重視の高校生・明智ミツオは、幼馴染で歴史好きの羽柴ヒデコと共に未来人に拉致される。そこで明かされたのは戦国時代の明智光秀が「本能寺の変」を前に逃亡し、歴史が崩壊の危機にあるという事実。光秀の子孫であるミツオは光秀の代役として信長暗殺を、ヒデコは羽柴秀吉の役割を担い歴史を修復する使命を託される。過去と未来を繋ぐ壮大な歴史改変ミッションが始まる。
明智のキャラはエッジが立っていますね。相方の羽柴も割れ鍋に綴じ蓋じゃないですが、親しみやすい性格でいいコンビになりそうです。そんな二人が戦国時代に送り込まれて歴史を修正する。ただの高校生に無理難題を背負わせるどこかで聞いたような名前の未来人。コミカルな雰囲気が味わい深い。
続きが読みたくなるかについてはどうだろう…。個人的には期待感とか先を知りたいとの欲求が続きを読むモチベーションになっているのですが、本作はジャンルがコメディだと思うので、ネタで勝負しないといけないのが不利だなあ。舞台設定を説明しつつ、ネタを散りばめるのはバランスが難しいと思うんですよ。なので今はまだ続きが読みたくなるほど刺さってはいないです。
ご依頼いただき、ありがとうございました。
1-21 落日の大地に響く時の鐘 ~紫の姫と銀の盾~
■感想
内乱渦巻く帝国で、懲罰的任務として公爵令嬢シャルロットの護衛を命じられたエドモン少佐は、旅の中で彼女の強い信念と知性に触れる。表向きは傷心旅行だが、実は陰謀を暴くための行動だった。戦争や偽善に立ち向かうシャルロットと共に、エドモンは帝国の未来を揺るがす真実へと迫っていく。
列車の旅ということは近代なのかな。婚約破棄ものと思わせておいて、どちらかというと架空戦記の様相です。戦争も戦列歩兵が出てきて貴族の時代が終わるのかと想像しました。なかなか面白い時代背景ですね。令嬢と軍人のコンビを活躍させるにはうってつけのように感じます。
シャルロットもエドモンもまだ顔出し程度。進歩的な考えを持つシャルロットに正義感溢れるエドモンのエピソードがさらりと触れられますが、まだキャラに深い思い入れは生まれなかったですね。帝立病院での真実が明かされることで、ぐっと引き込まれるのかもしれません。続きが楽しみです。
軍関係は少し温いかな。平民出と思われるエドモンは佐官に出世しているし、貴族の横暴が酷い有様なら酒場の主人は口をつぐむでしょう。革命前夜のひりつくような緊張感は感じられませんでした。もう少しハードでも作風には合うかも。
ご依頼いただき、ありがとうございました。
■FA
向かいに座っているはずが…。
1-23 幼馴染みしか勝たん!~いつしか疎遠になった僕と彼女は、異世界で絆を育む~
■感想
中学で疎遠になった幼馴染・紗愛への想いを抱える弘樹は、突如襲われ死亡するが、異世界で目覚める。瀕死の紗愛を救うため力を得た彼は魔物を討つが、彼女は脚を失い幼い心に戻っていた。異世界の掟と魔法に翻弄されながら、弘樹は紗愛を守る決意を固めるが、背後にはさらなる試練が迫っていた。
弘樹は紗愛を守ろうとする行動自体はイケメンなのに、鬱屈とした想いのせいか、どうもどろどろとした腐敗臭が鼻につくんですよね…。距離の空いた幼馴染が片足と記憶を失い、弘樹に頼らざるを得ないシチュエーションで与えられた力に酔ってしまっているようで。でも、マイナスの印象から始まって、話の中で成長を感じられると好感度はがらりと反転しそうです。ただ、スロースタートになるので書き出しでは不利だなあ。
与えられた力がチート過ぎて倫理観に縛られなければ、弘樹は危険らしい危険に陥らないのですが、そこはドラマの作り方次第ですね。おじさんへの対応をどうするのか先の展開が気になります。
ご依頼いただき、ありがとうございました。
■FA
奇声を発するおっさんで誰を思い浮かべますか?
1-24 今日もなんだかんだ生きている
■感想
ジャプアニーセ文明研究者ヒストリアは文明の謎を解明しようと奮闘する。資金難と周囲の無理解に苦しみながらも、友人ジルに支えられ小説を書き続ける。ある日、部屋に現れた赤い液体から田中実が出現。彼女は異文化交流を試みるが…。文明の秘密と未来に向けた挑戦が始まる。
おお、エイリアンとの遭遇。SFなのかな? あらすじで田中実の一人称が俺からボクに変化したり、脳内での凄惨な惨殺シーンからジルのダメ出しにつながったり、ヒストリアとの共通点がある辺り、田中実は多重人格で全ては脳内での物語のようにも感じられました。
あらすじからヒントが得られませんでしたが、普通に読み解くならこの先の展開は田中実とヒストリアが協力してジャプアニーセ文明の最期の謎を解き明かしていくのでしょう。物語好きな共通点はあれど、へっぽこコンビなので、是非ともジルには頑張ってもらいたい。謎の真相も含めて続きが気になりますね。
楽しい作品をありがとうございました。
■FA
イイコ、イイコ…。
第二会場感想
2-02 戦国百魔絵巻ー修羅と羅刹
■感想
修羅刀を操る少女アカネは、羅刹王への復讐を誓い旅を続ける。山中で羅刹に襲われるテイを救うが、彼女は羅刹の情報を売る謎の情報屋だった。アカネは過去に家族を羅刹に奪われ、姉を連れ去った朱角を持つ羅刹王を追っていた。テイもまた羅刹王に家族を奪われたと語り、共闘を申し出る。しかし、テイは羅刹の血を引く者であり、アカネに隠された思惑を抱いていた。復讐と裏切りが交錯する壮絶な戦いが始まる。
この作品も凄いですね。伝奇アクションでいいのかな。戦国時代を舞台に羅刹を狩る修羅。描写は時代がかっていますが、文章は読み易く整理されています。雰囲気も出ていてアクションのキレもいい。上手いなあ。
アカネは鍛えられていますが、不意打ちを食らって気を失う程度の強さだし、純粋過ぎる考え方で目的を完遂するには足りないものが多過ぎる。テイは腹に一物を抱えていますが、足りない部分を補ってくれるいいコンビですね。続きが楽しみです。しかし、アカネの姉が強者過ぎる…。
ご依頼いただき、ありがとうございました。
■FA
伝奇物の衣装は自由なはず…。
2-06 敗北令嬢の立ち居振る舞い
■感想
婚約者を妹のように可愛がっていた令嬢マリーに奪われた敗北令嬢ベアトリス。王太子アデルバートとマリーの婚約発表の夜会で、周囲の冷笑を浴びながらも凛とした姿勢を崩さず振る舞う。ベアトリスは二人を陰で支え、国を良くする夢を託すために、自らを脅威と見せかけて敵意を引き受ける覚悟を決める。敗者としての誇りを胸に、陰から二人の未来を守る策略を張り巡らせる。
ベアトリスの立ち振る舞いがカッコいい。周囲の雑音には耳を貸さず、信じた道を突き進む覚悟が感じられます。元から王太子妃の地位など歯牙にもかけず、信念に沿って生きてきたのでしょう。印象的なシーンで興味を惹かれました。
書き出しとしては上手いなあと思う反面、ベアトリスの夢は漠然としていて先の展開がイメージできませんでした。アデルバートとマリーのことを優しすぎると評していますが、二人を守ることと国を良くすることはイコールなのか。権力の転覆を狙う輩を排除して政治的な安定をもたらすことを目指しているのかな。宮廷での権力闘争がメインになるのかもしれませんね。
ご依頼いただき、ありがとうございました。
2-10 神様と契りを交わすこと
■感想
幼少期に失踪し、記憶を失った少女・由里は、祖母の葬儀で二十年ぶりに故郷を訪れる。失踪の噂と神隠しの伝承が囁かれる中、彼女は幼い頃に「嫁になる」と誓った謎の男との再会を果たす。灰色の髪と狐面を持つ男は、神の使いなのか――それとも神そのものなのか。消えた時間と約束の真相に迫る中、由里は神聖で恐ろしい世界に引き込まれていく。
狐面の男は迷い込んだ由里を助けたのか、由里をかどわかしたのか、どちらなのだろうか。約束を守らなかった人間を恨んでいる過去の経緯からすると前者なのかな。幼い頃に交わした約束を信じて待ち続けるなんて、一途で不器用な神様がなんだか物悲しいですね。不老不死の神様に年月は気にならないのかもしれないけれど。
現在パートは地元の煩わしさと懐かしさが感じられて、上手いなあと唸らされました。描写が丁寧で情景が目に浮かぶよう。佐恵子さんは本当にいそうなキャラですね。逆に神様との約束は先がどうなるのかまったくわかりません。結界の中で暮らすことになるのだろうか…。
ご依頼いただき、ありがとうございました。
2-19 復讐者、不完全燃焼
■感想
十年前、故郷を焼討で滅ぼされたエドは復讐のために生きてきた。しかし、仇は他者に討たれ、目的を失ったエドは虚無感に苛まれる。絶望の中、謎めいた少女ニーナと出会い、彼女の誘いで仇を討った英雄・紫電への逆恨みに転じる。エドは自らの十年を無駄にしないため、ニーナと共に紫電を追うことを決意。復讐から生還を図る旅が始まる。
エドのキャラクターがいいですね。何もかも削ぎ落として復讐だけに人生の全てを賭けてきたストイックな男。突然、目標を失って折れてしまうのも理解できます。そこからニーナに唆されてまさかの逆恨み。次回への引きも強いなあ。続きが楽しみになります。
ニーナとのコンビも出会ったばかりとは思えないほど噛み合っていて安心感さえありました。やさぐれた男と真面目な少女のやり取りがくすりと笑いを誘います。紫電の正体はなんとなくそうなのかなと思っていたり…。
楽しい作品をありがとうございました。
2-21 聖剣抜いたら偽王女(男の娘)になったので、国難を"うんとこどっこいしょ"します
■感想
貧しい没落貴族のクラン・ヴァンスは、偶然出会った怪しい老婆に高額報酬の仕事を依頼される。命懸けで王家の聖剣に触れる任務を引き受けるが、剣を抜いてしまったことで状況は一変。偶然出会った王女と共に混乱に巻き込まれ、ついには王女の影武者になるよう強要される。
いい感じに肩の力が抜けた性格のクランがいいキャラしていますね。主人公としてとても好感が持てるなあ。腹の虫に名前を付けているルビ芸から始まって、第四の壁を越えそうなマスターカードと畳みかけるようなギャグにくすりとさせられます。初っ端のつかみが上手くて、すぐに作品の方向性をわからせられますね。ここでつかまれた人は続きを読んじゃいそう。
先の展開への引きも強い…。どう考えても無茶なシチュエーションでクランが苦労する未来しか見えませんが、タイトルでハッピーエンドが保証されているようなものなので、安心して読めます。タイトルとあらすじから抱いていた期待を裏切らない内容でした。強いてツッコむなら蕪やなくて大根なんかいってぐらいかなあ。
楽しい作品をありがとうございました。
2-24 ****しないと出られないダンジョンに閉じ込められたが、脱出条件がわからない
■感想
ダンジョンの出口目前で突如不可視の壁に阻まれ、閉じ込められた実力派冒険者パーティ『最果ての地』。脱出条件が不明なまま物資が尽きかける中、焦燥と不安に揺れる仲間たちは、謎の古代文字から手がかりを探る。困難に立ち向かう彼らは団結し、出口を目指して試練に挑むが。
いやこれ確信犯ですよね? ですよね?w 真面目に考えると「これまで普通に出れていた理由」がカギなのかな。いままではやっていて今回はやらなかったこと。そう考えるとミステリ要素のあるハイファンタジーなのかもしれません。タイトルに釣られて先が気になる構成だ。う、上手い…。
四人の登場人物が程良くキャラ付けされています。ややもすれば、誰の発言かわからない会話も、話を追いかけていくと自然と頭の中でイメージできました。手慣れているなあ。私は二人ずつしか会話させられないので、このテンポ感はお手本にしたい。
楽しい作品をありがとうございました。
2-25 イケメンに口説かれていますが遠慮しておきます、ぼくは佳純が好きなんだ
■感想
平凡な高校生・章は、文化祭の劇準備中に幼馴染の佳純や転校生の聖と不思議な再会を果たす。佳純は実は魔王、聖は勇者、章は前世で聖女だったと告げられ、混乱する章。互いに過去を知る二人が章を巡って対立し、やがて聖は章に強引にキスを迫る。章は突然の展開に混乱しつつも、過去の記憶と現在の関係性に向き合うことになる。
オタクの早口のような密度の出だしから会話主体の後半の落差に思わず笑ってしまいました。キャラの顔見世として十分な内容だと思います。前世では敵対関係と思われる三人が性別も関係性も超えて転生。新しい関係性の中で恋の鞘当てをするラブコメかな。聖が他校なのが若干扱い辛そうだけど…。
章だけが記憶を失っていて急展開について行けず、戸惑う様は庇護欲を誘いますね。だが、男だ。ただ、先の展開についてはイメージができませんでした。学園ものとしてイベントをこなしていくことでネタには困らなさそうですが、三人の関係性が崩されるようにも思えなくて。どんな展開になるのだろう。気になります。
楽しい作品をありがとうございました。
第三会場感想
3-10 国内浄化ダーツの旅 ~放蕩第三王子一行の浄化ピクニック地は、必ず繁栄するらしい~
■感想
リリス王国の第三王子レイヴィストは、放蕩王子と呼ばれつつも、瘴気を予知し転移できる特殊能力で国を守っていた。彼は忠実な秘書官クライとメイドのセイレインと共に異常発生地点へ赴き、魔物と戦う使命を背負う。王族としての義務を果たしながらも、自由を求めつつ仲間と共に戦い抜く姿を描く異世界冒険譚。
レイヴィストと付き人二人がお忍びで各地を旅して浄化する。諸国漫遊記の態ですね。馴染みのあるテーマだけに強いなあ。行き先でドラマと紀行文まで楽しめる贅沢仕様。題材自体は面白いと感じました。
文章、文章か…。短めの文を連ねていくのはテンポ感が良くて読み易いですね。描写もwebだと適切な量だと思います。一方で会話は少しぎこちなさ感じました。クライが慇懃無礼だけれども歯に衣着せぬ気安さもあるキャラだと思うのですが、会話だと情緒不安定に見えます。丁寧な口調だけど内容は手厳しいか、ぶっきらぼうな口調だけど信頼関係をうかがえる方が誤解を生まないかもしれません。
楽しい作品をありがとうございました。
■FA
外見描写がない!? 見逃してないよね?
3-13 紫紺の瞳は闇を視る 化け込み記者・長月千代子の大正あやかし事件録
■感想
化け込み記者の千代子は、虐待を疑われる華族令嬢の行方を探るため女中として潜入する。令嬢の霊と接触し、遺体を発見して事件解決へ導くが、彼女の紫紺の目には人ならざる秘密があった。山奥の村で贄として捧げられそうになった過去を持つ千代子は、異形の存在から授かった力を使い、事件を暴きながら好いた男と一緒に暮らすことを夢見て帝都を奔走する。
いや、これは凄い。四千字でここまで書けるのか…。時代背景を提示して事件をひとつ解決して見せ、千代子の特異な力の由来を垣間見せる。無駄のない構成に惚れ惚れします。情報の整理が上手いのだろうなあ。なかなか真似できませんが、勉強になります。
大正時代と妖の組み合わせの親和性は高いですね。文明開化を経たモダンな文化と正体不明の怪し気な存在を許容してしまう混沌とした時代背景。そこに化け込み記者という職業がまた興味深いですね。造語かと思ってググってみたら実在していて驚きました。
最初に解決する事件も千代子の能力を見せつつも、ゴシップのような眉を顰めるネタでなく、幼い子供の無念を晴らすという好感度が上がる内容なのもいいですね。そして驚愕の引き。続きが気になるに決まっているじゃないですか。
ご依頼いただき、ありがとうございました。
3-15 恐怖! 祠人間
■感想
矛螺村の中学一年生は毎年「祠壊し祭り」で森に入り、祠を破壊する儀式に参加する。幼なじみの堀辺、堀部、小坂、良木は勝負を挑み、祠を多く壊した班が優勝というルールを決める。しかし、小坂の班は手順を省略し祠を破壊したことで奇怪な現象に巻き込まれる。儀式が単なる遊びではなかったことに気づいた彼らは、脱出を試みるが……。
祠壊しのミームをテーマにするフットワークの軽さは見習いたいなあ。祭りのスケジュールでどうしても旬を過ぎた感が出るのは仕方ない。ただ、祠を壊して何かが起こるというシチュエーションではなく、祠を壊す因習のルールを探るのがテーマになりそうですね。助かるためには理不尽に思える理を解明するしかない。ミステリっぽい構成だなあ。
因習村で未知との遭遇というシチュエーションですが、祠人間のとぼけた反応から怖さや緊張感は感じられません。コメディホラーかな。祠人間の印象はまだ近所の兄ちゃん感覚ですね。青年団の人がお化け役やっています的な。「ルールを破ると死ぬかもしれへんで。しらんけど」とか言い出しそう。武見はエキセントリックな女の子という印象。一緒に踊っていた小坂の首を掻き切って、吹き出した血のシャワーの中で「血小板って肌荒れに効くのよね」とか言い出しそうでした。
ご依頼いただき、ありがとうございました。
■FA
大分、迷走飛行しました…。
3-18 「推ッ忍ッッ!!!」萌えよッ!キュン死郎伝説ッッ!!
■感想
令和の推し活時代、伝説のオタク・キュン死郎と廃課金王・カネジがライブ会場で激突! 推しへの愛を武器に、ペンライトと資金力で繰り広げる死闘は観客をも巻き込む大騒動に発展! 推しを巡る熱狂とプライドが交錯する、命懸けの推し活バトルの幕が今、切って落とされる!
タイトルからあらすじ、本文、そして依頼に至るまで隙のない布陣。いやー、いいですね! ちょっとドアを開けたら隙間に足突っ込まれて、契約するまで帰ってくれない営業のような押しの強さ。笑わせてもらいました。
もう勢いで最後まで走り切って欲しいですが、コレいけるのかな…。いや、頑張って欲しい。どうオチをつけるのか見てみたいという気持ちが。改造サイリウムで出禁になりそうだけど…。
楽しい作品をありがとうございました。
■FA
自信がないけれど、イメージは合っているのか???
3-19 【速報】十年後の世界から来た俺が、何故か「美少女」で「勇者」だった件!
■感想
冴えない大学生・陽太の前に、自称「十年後の未来から来た勇者」である美少女ヒナタが現れる。驚く陽太に彼女は未来の自分だと告げ、異世界とつながる危機を救うため協力を求める。一方、異世界では聖女が勇者を迎えに行く準備を進めていた。陽太とヒナタは世界を守る旅に出るが、複雑な未来と過去が絡み合い、波乱に満ちた冒険が幕を開ける。
ヒナタと聖女が勇者の素養がある日向を取り合う構図。十年後の日向を自称するヒナタの存在が肝ですね。日向のプライベートな情報を知っていることで、信頼を勝ち取ろうとするが、読者目線では他人であることを匂わせています。
一方、聖女は真っ当な異世界召喚です。魔王討伐が目的でヒナタの正体が魔王であることを匂わせています。謎を引っ張らずに書き出しで解消したのは驚きでした。美少女が世界を救ってくれと頼み込むだけでも日向は頷きそうですが、十年後の日向を詐称する理由が誘因力になるかな。
先の展開はあらすじにもあるように、ヒナタと聖女が日向を取り合う旅になるのでしょう。キャラのやり取りで楽し気な雰囲気は保証されているので、ここで掴まれた人は続きも読んでくれそうです。
楽しい作品をありがとうございました。
■FA
驚異の銀髪率!?
私も好きですw
3-20 雄弁な子どもたちは沈黙する
■感想
1988年、警察官・橘功は、団地での殺人事件現場に向かう途中、息子・真と友人の少女・愛に遭遇。少女は事件の証人であり、血まみれの榊瞳と共に逃亡中だったが、彼女は自殺し事件は幕を閉じた。2025年、真は息子・哲の自殺に直面する。葬儀で現れた愛は、哲の失踪先を知っていたと語る。過去の事件と現在の悲劇が交錯し、封じられた記憶と秘密が明らかになるサスペンスミステリー。
三世代にまたがるスケールの大きさに圧倒されました。難しいテーマを扱っていますね…。「雄弁な子どもたち」は発達障害と捉えていいのだろうか。ひとりひとりの症状も異なれば、対処方法も異なるので、親だけで支えるのは難しいと想像します。それだけに後悔の念が重くのしかかるなあ。
あらすじから愛は瞳の娘だったのかと想像しました。その上で瞳が逃げ出した原因に何か関与しているのでしょうね。拓郎と被害者の関係性は不明ですが、瞳の行動は愛を庇ってのものとも読み取れました。
半身不随の功が三十七年の年を経て愛を見分けるのは、過去の事件に何か強い心残りがあったのかなあ。愛と哲の関係性がカウンセラーとクライアントだとすると、この物語の行き先は過去の事件を解明することなのだろうか。続きを待っています。
ご依頼いただき、ありがとうございました。
■FA
親の愛は無償だと感じていましたね…。
第四会場感想
4-02 追放勇者の魔王軍復活作戦
■感想
勇者レーヴェは魔王討伐後、用済みとして追放される。仲間の死や社会からの疎外に絶望し、魔王軍復活を決意。元仲間の魔法使いアイシャも加わり、魔族育成を始めるが、王国軍の襲撃を受ける。圧倒的な力で撃退したレーヴェは「二代目魔王」として宣言し、新たな混沌の幕を開ける。
「狡兎死して走狗烹らる」ですね。平和な世界に居場所なんてない勇者。「何も終わっちゃいないんだ。俺にとって戦争は続いたままなんだ」を地で行きます。弱体化した魔王軍を率いて勇者の力で盤面をひっくり返すことにカタルシスを感じる部分もあるのですが、人類側を裏切るにはもう少し強い理由が欲しいかなあ。軍と戦うだけなら気にしませんが、戦争で無辜の民が犠牲になるとしたら素直に応援し難いです。仲間の自殺が王国の奸計によるものだったり、絶対悪ではなく魔族との民族対立だったり、互いの正義のぶつかり合いが欲しいかな。単純なバトルジャンキーでもそれはそれで楽しめますが。
レーヴェとアイシャの関係は気の置けない仲間との空気が合ってとてもいいですね。武勇伝を語るウザい先輩のようなタンクもいつか合流してくれることを願っています。最後に聖剣を掲げて見得を切るシーンはやはり熱くなりました。続きを期待しています。
楽しい作品をありがとうございました。
4-04 魔女と妖狐の善行道中
■感想
妖狐の子キツネ・コンは人間社会に溶け込むための修行中に結界の外へ飛び出してしまう。そこで出会ったのは善行を積まねば故郷へ帰れない魔女モエラ。互いの目的を果たすため、コンは魔女の秘術と妖術を駆使し、善行を重ねる旅に出る。未知の世界に戸惑いながらも、妖狐と魔女の奇妙なコンビは次々と事件を巻き起こす。
妖狐たちの社会が瑞々しく描かれていて興味深いですね。人間社会で暮らす兄の味の好みが変わっている辺りの対比がいいなあ。村の質素な食材を見ると、外の世界に憧れを抱くのも仕方ない。
コンは好奇心旺盛で純粋無垢な子供として描かれているだけに、モエラの邪悪さが際立ちます。彼女はコンを悪の道に堕とそうとしているわけではなく、善悪の判断もつかないまま誘っているのかもしれませんので、より救われないですね。先の展開はまったく読めないのですが、コンに感化されてモエラが改心するとも思えず、善行を施しているつもりで害悪を振りまくとしたら酷い旅路になりそう。掴みはバッチリでしたが、先の期待感は少し弱く感じました。
楽しい作品をありがとうございました。
4-09 幻の「満漢全席」完全再現を目指します!
■感想
美食魔法を操る少女エルナは、幻の饗宴「満漢全席」のレシピを求め、国の命運を背負い旅立つ。神獣フィルセアや護衛騎士アリオンと共に危険な旅を続ける中、侵略を目論む大国への対抗策として伝説の料理再現に挑むが、彼女たちの前に未知の脅威が待ち受ける。
エルナの生い立ちから料理魔法を習得し、飽くなき探求心の赴くまま旅に出る。ゆるい雰囲気が心地よい世界観だなあと思っていたら、どこか不穏な空気も見え隠れしているんですよね。エレナが家族を亡くしていたり、アルヴェイン国の様子だったりと。これが作品全体の方向性にどう影響するか、書き出しではわかりませんでした。基本コメディで少しビターな感じなのかな。
設定は共通認識のファンタジー観にオリジナリティの隠し味が入っています。書き出しでは文字数も限られていて取捨選択が必要になるので、設定の説明を入れるかどうかは難しい判断になりますね。上手く料理するとぐっと引き込まれますし、長々と説明されると読むカロリーが高めです。フィルセアの存在やリヴェテ界は、設定が気になってノイズになってしまいました。
構成は少し迷子になってしまいました。旅の様子からエルナの過去まではスムーズでしたが、キリオス国のエピソードが過去の話だと気付くのに少し時間がかかってしまいます。フィルセアとアリオンのやり取りが挿入されるのが時系列を難しくしているのかも。やり取り自体はキャラの理解が深まるので良いなあと思うのですが。
ご依頼いただき、ありがとうございました。
■FA
喰らえ、喰らえ尽くせ!
仏頂面のアリオンも入れるべきだったか…。
4-11 売れない地下アイドルグループ、運営資金を稼ぐために超能力で探偵やります!
■感想
地下アイドルとして活動する五人は、観客二人という惨状の中でも夢を諦めず副業で探偵をしていた。異能を持つ彼女たちは、依頼人から行方不明者の捜索を依頼される。しかし、その依頼は破格の報酬と不審な事情に満ちていた。怪しさを感じつつも調査を開始した彼女たちは、アイドル活動と探偵業の両立に挑みながら事件の真相に迫る。
地下アイドルが能力を駆使して探偵業で活動資金を稼ぐ展開は面白い。大した能力でなくてもシナジーで活躍するのもいいですね。杏以外の組み合わせもできれば、更に面白くなりそうですが、ブースター役がいないとなあ。
多くの登場人物の見せ方について様々な工夫をされていると感じました。エピソードに絡まないキャラは紹介だけして退出し、売れないアイドルなので客数も少ないなど。また、口調やキャラ付けもユニークです。
しかし、結構読み込まないと全員の把握は難しいかな。登場してすぐに名乗るわけではなく、話の中で自然に紹介しているため、「誰だろう?」との疑問が解消されないまま、読み進めなければならずモヤモヤします。更に本名と愛称があると、両方に意識が向いてしまうので難易度が上がるように感じました。
ご依頼いただき、ありがとうございました。