おすすめ　という行為

ひとに自分の好きなものをすすめること。また、ひとからすすめられること。そのどちらもが私にとっては難しい。前々から興味を持っていたものでも、誰かにおすすめされると価値が薄れるように感じる。
何かを好きでいることは一つの自己主張だと思う。そこには人の興味関心趣向全てが現れる。だからこそ、きっかけを他人に委ねたくない。「誰かが好きだったから」好きになるというのは弱い。そう思ってしまうことが最近の悩みだ。

とはいえ近しい人間の好きなものはもちろん聞きたい。知りたいと思う。しかし彼らの好きな曲、映画、最近の趣味等々を聞くたびに「また自分が好きになれるものが減ったな」というような気がしてしまう。(言葉が強い)
その人個人に対する関心が強ければ強いほど、この傾向も強くなる。
純粋に興味を持ち、同じものを好きになり、同じように楽しみ、素晴らしさを分かち合えない自分を虚しく思う。

また、そんなふうに思うからこそ、他人に自分の好きなものをおすすめすることにも抵抗がある。秘密にしておきたいとかではなく知ってほしいのに、何ならハマってほしいのに、自分がそうできないせいで諦めてしまう。たまに発作的に振り撒いては、自分ができないことを相手に求めてしまった…と落ち込むこともある。

突然だが私はちいかわが好きではない。どこが嫌なのかと言われるとうまく言えない。世情を反映してのことだからだ。
大勢が関心を持つポピュラーなものに惹かれない。正確には、惹かれたくない。なんなら嫌悪感さえ抱く。そしてそんな自分がスレているような、ダサい人間であるような気がして落ち着かなくなる。良いと思っていたバンドがたちまち人気になったとする。私はおそらく何かにケチをつけたくてたまらなくなる。それまで心地よく感じていた歌詞、メロディー、ギターサウンド、全てが途端に陳腐なもののように思えて興味をなくす。そうやって好きなものを一つ失う。「有名になってからなんか曲調変わったよね」そんなことを言ってしまいたくなる。少しのプライドが邪魔をして言えないところがまたダサい。
みんな好きなの？じゃあ私に好かれなくてもいいね〜なんて。(意味がわからないですよねすみません)
しかし、有名なものを当てつけのように好きになることもある。私は物事を名があるかそうでないかで判断してはいないんですという風に。誰にアピールするわけでもないのに。過剰な自意識を認識し苦しむまでがワンセットだ。
マイナーなものなら手当たり次第に好きになるのかというとまた違う。微妙ななにかが私の中で常に渦巻いている。
こんなに不安定な私の"好き"には箔がないと感じたこともある。不確かに好かれるコンテンツが可哀想だとも。

結局は他人との比較でしか物事を見れないのだろうか。さまざまな比較から逃れ、自分だけの価値判断に基づいてなにかに熱中したい！と思う日々です。とにかくもっと素直でいたい。