均衡

君に釣り合う私になりたくて、今日も小さな努力を重ねてる。朝すぐに布団から這い出ること、フランス語の授業の予習をすること、疲れて帰ってきてもすぐお風呂に入ること、排水溝の掃除をすることなど日常の些細な「だるい」シーンは君への気持ちでギアをかけている。もっと大仰な、例えばジムに通う、英語をありえないくらい勉強して留学に行くなど革新的な行動を起こして安心したい気持ちはある。近頃は何かどでかいことをはじめて、面白い人間だと思って欲しくて落ち着かない。私が恋人でよかったと、早く思って欲しくて仕方ない。しかしそんなことにあまり意味がないことはわかっている。彼は(幸運にも、本当に幸運にも)ありのままの私を好きと言ってくれたからだ。そのため、私は私のまま素敵になろうと思う。無理な背伸びはせず、長所を磨くことを意識し、裏切るような行為はしないよう努めようと思う。女としてというより、人として善くありたい。だから日常の一コマを丁寧にしようと試みている。
しかし、恋人という定員1人の貴重な枠を、あんなに素敵な人が私に使ってくれたことがまだ信じられない。交友関係だって広いのに、女子(しかも可愛くて素敵!)なんて腐るほどいるのに、その中で私より関わりが多い子なんてきっと無数にいるのに、自発的に私を選んでくれたことが未だに新鮮に嬉しい。(未だに、といっても大した時間は経っていないのだが私の時間感覚は浪人を経てからずっとおかしいのだ)
私は高級ブランドの唯一のセール品だったのかもしれないが、それでも嬉しい。というかもはやそれでよい。じゃないと永遠に信じられないから。初対面から今まで彼はずっと素敵なままで、私が理想だと感じた彼のままで、聞く限り日常も大いに充実していて、きっと恋愛なんてしなくても100%の楽しさを得られるのに私に時間や労力を割きたいと思ってくれたことが、たまらなく嬉しい。この嬉しさだけで私が何度自炊をしたかわからない。(おかげで肉じゃがが上手くなり、家庭的な女とは恋愛過多なのではないか?という謎の理論に到達した)
次会う時まで、日常を誠実に生きたい。彼に言えないことはしたくないし、言いたくなるようなことを増やすために様々なことに挑戦したい。しかし、いつだって言おうと思っていたことの半分も言えず帰途につく。その場その場の会話が盛り上がりすぎて、そして彼の話がおもしろすぎて、またたくさんのことが言えなかったと思う。また会ったときに話そう、反応が楽しみだと上機嫌になる。そう思えることがただ幸せで、この大学を選んでよかったと改めて感じる。今までの全ての選択が正しいと思える。
LINEも電話も会えないときの代替として素晴らしいツールなのかもしれないけど、面白いことがあったら対面で伝えて反応の全てを目に焼き付けたいし、会えない間に日々を頑張るために、会うことを貴重に位置付けるために些細な連絡を少しだけ我慢している。
それにしてもやりたいことばかりが膨らんでいく。乗っていた電車が止まっても、人混みに押しつぶされても、荒野で野宿することになっても、彼とならきっと楽しいだろうと思う。心からそう思える人が私のことを好きだという奇跡に今はただ身を委ねていたい。
朝起きて、好きだよと思う、君に誇れる私でいたくて起き上がる。どんなに疲れていても、だるくても、起き上がって1日をはじめる。授業へと向かう。私に何もなくてもせめてこれくらいは誇れる自分でありたいから。
寝る前に、今日も好きだったと思う、明日も君の彼女でいられることが幸せだと感じる。今何してるのかな、もう寝てるかな、いや、まだゲームかな、などと思いながら眠りにつく。
こういう日が、続けばいいと思う。一年先も二年先も、もっと先も、君と私の間にあたたかい時間が流れていますように。今のこの奇跡といつかわからない未来の間に、明確な断絶がありませんように。願う。

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