浅生鴨さんが編集した本も素晴らしいのである
昨日のnoteを振り返りながら、言い足りないことに、気がついた。
浅生鴨さんの本は、自身の単著ばかりでなく、編集者・制作者として「ネコノス」から発刊している本も素晴らしい。
ということを、もうちょっと言いたい。
○単著
1.相談の森/燃え殻
新潮文庫の100冊に入っている燃え殻さんが、雑誌に連載していた人生相談を単行本化したもの。この人生相談が、実にいい加減で、優しい。決して否定しないで、いっしょに転んでくれる。表紙のイラストが、スゴくしっくりくる。
これは、いい本であります。
2.まちかどかがく/市原真・サンキュータツオ・牧野曜
もともと文学フリマに出展されていた同人誌に、あらたに著者の鼎談と、編集者・浅生鴨さんの前書きを加えて、文庫化したもの。
「ネコノス文庫」として「雑文御免」「うっかり失敬」の隣に並べると美しい。ただしぶ厚い。540ページある。最後まで読んでいないどころか、「はじめに」と鼎談しか読んでいない状態で紹介しようとしてごめんなさい。
3.What's on Your Mind, Tora-chan? (寅ちゃんは なに考えてるの?)/寅次郎・前田将多訳
決して媚びない、語らずともその佇まいから言葉が立ち上る、その姿はまさに哲学者。
哲学の猫「寅ちゃん」の言葉を翻訳する、という人気ツイートから生まれた、名言と写真をまとめた本である。ただまとめたわけではなく、1ページ毎にレイアウトが違っているなど、デザインから紙質、製本など細かい部分まで、大人達の本気の遊びとこだわりがつまっている。そういう本を所有していることが、嬉しい。
4.ラブレター/幡野広志
血液がん患者である写真家・幡野広志さんが、Webに掲載していた家族への文章=手紙を1冊の本にしたもの。本でありながら、「手紙」であることにこだわった装丁が、スゴい。
制作過程は鴨さんがnoteに記している。
鴨さんの記事が、やっぱり良いや。
もちろん入手済みであるが、ちゃんと心を整えないと読めない気がして、実はまだ開いていない。ひとりしかいない時間にしっとり読みます。泣くから。
○同人誌
5.異人と同人
執筆陣をみて驚く。『熱源』で直木賞を受賞する直前の川越宗一さんがいる(歴史小説家の著者と読みは違うらしいが)。後に新潮文庫の100冊に入る燃え殻さんがいる。社長になる前の田中泰延さんの名がある。早めに文フリで作家さんに会ってサインを集めておけば、数年後にとんでもないプレミアがついたのではないか。今からでも遅くないのではないか。そんなよこしまな期待を持たせる。
同人誌らしい遊びや冒険、ここでしか読めない話が、楽しい。私の特にお気に入りは、幡野広志さん「少しは写真の話を」、燃え殻さん「縦に裂きたい」、高橋久美子さん「ぼくのおばさん」など。
6.雨は五分後にやんで 異人と同人Ⅱ
「異人と同人」よりも執筆者が大幅に増えている。さらに、同人誌でありながら、最初の版は常識破りのハードカバーで制作された。作って売るほど赤字だったという情報は本当だったのだろうか。現在は文庫化したものが入手できる(上記リンク)。
前作以上に、バラエティーに富んでいる。個人的には、永田泰大さん「昼の個室に座って」と髙島泰さんの「東国の櫟」、山下哲さんのパズルが特に好き。あと浅生鴨さん「リベットと鞄とスポーツカー」と、、きりがないな。
7.ココロギミック 異人と同人3
書名でピンと来た方は鋭い。コロコロなんとかを目標にぶ厚くしたい、という意図で作られたらしい。執筆者はさらに増え、ページ数も600を優に超えている。入手して4ヶ月立つがまだ読み終える気配がない。読むものが尽きないというのは幸せなことでもある。
で、これは明らかに文芸誌ですよ。コロコロっぽい雰囲気をまとうことで、文芸誌へのハードルを超えやすくしてくれている。個人の解釈ですが。
どれが良いというのを絞るのは難しいのだが、前田将多さん「トルーマンを撃つ」(小説)、燃え殻・ムラ係長「僕たちに裏切りはない」(対談)は、これを読むだけでも本書を買う価値がある、というツイートがあった。ワシもそう思う。
「すべては一度きり」や「ぼくらは嘘でつながっている。」を読んだ方には、両書と関連する楽しみがあるのでおすすめ。
8.かもがも
ZINEという言葉をこの冊子ではじめて知った。文学フリマ用に制作された手作り感の強い小冊子。ファン必携。
よく考えたら、ネコノスのサイトに行けば、同じ情報が載っているのではないか。私が記事にする必要はなかったのではないか。
まあよい。
実物を見る機会の少ないこれらの本が、文フリとか、書店の特設コーナーで一気に揃うなんて、滅多にないことなのである。
いざ、札幌。