買ってよかったもの。
買って悪かったものなど基本的にない。
もしあったとしても、それは買う判断をした私が悪かったのだ。もの自体に責任はない。
などと、栗山監督みたいなことを言ってみたいものである。
買うという行為自体なんとも気分の良いものであるが、買っただけで満足してしまうことがある。だけど本当は、手に入れたあとで、ますます愛着がわくようなものにめぐりあえることが、理想だ。
今年、買って良かったと心底思っているものがある。
革のショルダーバッグ、広島のTochca製エメ・ヴァリエ。
購入したのは大阪のレザーショップ、スナワチ。訪れたのは図らずも昨年のクリスマスであった。
いくつか店頭のカバンを見せていただいたが決められず、オーナー前田さんの私物を拝見した。ハードに使い込まれたそのカバンが素晴らしかった。見てしまった以上、もう、それしか考えられなくなって、その場で注文した。
大阪にて発注、広島で制作されたカバンが大阪を経由して、北海道に届いたのが今年2月。その時点ですでにかなりの旅をしてきたカバンとなった。
良いカバンを手にすると、しょいたくなる。しょったなら、出かけたくなる。「しょう(背負う)」って、ATOKが容易に変換しないところをみると地方性の高い言葉なのか。
ともあれ、このカバンを手にした瞬間、こいつを持ち歩きたいがために出かける、という行動原理が私の中に確立した。
見た目が良い。デザイン、大きさ、カタチ、色、におい。こういうカバンがほしかった、というのはおそらく後付けの感情だと思うが、違和感なくそう言ってしまえる。
使い勝手が良い。私が持ち歩きたい一式、財布とスマホとペットボトルとカメラ、あとエコバッグを入れてまさにちょうど良いサイズである。
ボタンひとつ、片手で開け閉めできる。
しっかりフタが閉じた状態になるので体の後ろにまわしても安心感がある。肩からからたすきに背負えるので、両手が自由になる。
なにより使い心地が良い。金属部品が少ないため見た目よりも軽い。幅広のベルトは重さを分散してくれるため、つかれにくく体にやさしい。
私用の外出では、すっかり、これしか使っていない。これを使いたい理由での外出が増えた。
そして、一年もたたないうちから、しっかり色の変化が現れてきた。前田さんの私物(5年もの)がさらに味わい深い色となっていたのを目に焼き付けている。使い続ける楽しみが、まだまだこの先も続くのだ。
気に入ったカバンを使いたいから出かける、という気持ちに我ながら驚いた。子どものころにあったかもしれない妙にウキウキした気分。
年齢を重ねてもそういう気持ちになれたことが、今年の重大ニュースのひとつであります。