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我が家のようなコンビニ
ファミマに入るたびに実家を思い出す。
客の来店時に流れるメロディありますよね。あれ、以前の実家の呼び鈴と全く同じなのである。
北海道には最近までファミマがなく、あったとしても札幌近郊くらいにしかないので、実家でそれが話題に上ることはない。私は以前から出張で本州のファミマに入る度にニヤッとしていた。
実家が建て替わったのは私が中二の時だった。
それまでは年季の入った中古のボロ屋で、ネズミが走り回り、真冬でも隙間風が吹き込んだ。トイレは闇が広がる汲み取り式。真冬にはストーブの半径50cm以内でないと寒かった。朝起きると息で布団に霜がついていた。それでも楽しい記憶しか残っていないが。
新築の家に入った時、その立派さ、きれいさに感激した。
そして、それまでなかった玄関チャイムがついていた。さっそく押してみると、
♪ピンポパポピポッパ ピンポパポピン♪
驚いた。メロディなのである。そんなのテレビでも見たことがなかった。ずいぶんモダンなモデルを選択したものである。
慣れると楽しくなってきた。楽しいとメロディに合わせて歌う。
来客があるたびにメロディに合わせて「ピンポパポピポッ……」とか「フンフンフンフン……」とか適当に歌っていた。
なぜか最後の5文字だけは「イグアノドン♪」という歌詞だった。
当時小5の弟は、そこいらに流れるメロディに適当な歌詞をつけて歌う特技というかクセがあった。我が家の呼び鈴についても例にもれず、何の脈絡もなく「~イグアノドン」と歌い出した。その前の歌詞があったかどうかも覚えていない。
イグアノドンは恐竜の名前である。歯形から草食恐竜だと考えられ、肉食恐竜のティラノサウルスに捕食されてしまう側として描かれることが多い。弟の歌には、私が恐竜好きだった影響が間違いなくあっただろう。どうでも良い考察だ。
なお、実家の呼び鈴はもう10年以上前に壊れてしまい、今はごく普通のタイプに付け替えられてしまった。実家の近辺にはファミマはなく、家族のだれもファミマとの相同性に気づかないまま、普通の「ピンポーン」を受け入れている。
私はひとり、ファミマに行くと懐かしい中高生時代の「あの頃」を思い出すのである。心の中で「イグアノドン」とつぶやきながら。