旬がわからなくなる技術
いちごの旬といえば、元々は春だったはず。元春。サムデイ。
それがだんだん早まって、冬~春という表現になっている。そしていまや、夏でもいちごが作れるようになってきており、いちごの旬がわからなくなる日も近いのではないかとさえ思う。サムデイ。
いちごは、もともと夏から秋に畑に植え付けて、冬の寒さを乗り越えて、春に花が咲いて実るものだった。だから春が旬なはずだった。
それが、ビニールハウスで栽培するともっと早い冬の時期から実をつけられるようになった。当然、「旬」の時期は出回り量が多いので、値段が安くなる。「旬」より少しでも早く出荷することで、より高い値段で販売できて有利なのだ。
さらに、冬から実をつけた方が緩やかに収穫できるので、労働力が一時期に偏らず長い期間収穫できることも利点だった。このため、本州のいちごは基本的に冬~春に生産されるようになった。これが定着して、いちごの旬は冬~春ということになっている。はず。
北海道の冬はビニールハウスの中でも氷点下になるので暖房が必要となる。燃料代が嵩むと採算が合わないため、いちごの旬と言えば春となる。
北海道のいちごは、寒い冬を耐え忍んだあと、春になって一気に花が咲いて実をつける。まさに旬の様相となる。北海道の春いちごは美味しいが、短期間に一気に実るので、収穫する方は結構たいへんだったりする。
最近は夏にもいちごを見かけるようになってきた。ケーキ屋で一年中いちごのショートケーキを見ることができるようになったのは、それほど昔のことではない。輸入品もあるのだが、日本国内で夏に実をつけられる品種が開発されたことの影響が大きい。
いちごは、本来暖かくて日の長い時期には花芽をつけない。ところが、いろいろないちごの仲間を調べてみると、日の長さや暖かい時期にも花が咲くものが見つかっていた。これを利用して改良された品種が、夏にも実る「四季なりいちご」として栽培され、出回っている。
少し前までは味が落ちるというのが定評だったが、最近の品種は冬~春いちごに匹敵するような美味しい品種が開発されているようだ。
ビニールハウスと品種開発などの「技術」で「旬」がどんどん拡大してきたといえる。
それでも「旬」がいちばんと言う人はいるだろう。それを否定するつもりはないし、実際に自分で畑で作ったら旬は春だと実感するだろう。
それでも、「旬」がわからないくらいに年中美味しいいちごが食べられるなら、それは地道な技術開発のおかげであると、誰かにどこかで気づいてほしくてこんな文章を残してみたりするのである。サムデイ。
そして、今日は寒かった。鼻声である。サムぃデイ