流氷観察係
網走では今日「流氷初日」を迎えたという。
「流氷初日」とは、網走地方気象台の屋上から肉眼で流氷が確認できた最初の日、という定義だそうである。
流氷が来たというニュースを聞くと、いよいよ厳寒期を迎える心持ちになる。「大寒」の時期と重なるのだ。今年はすでに年末から大寒並みの寒さだったから、これ以上厳しい寒気は勘弁して欲しいところだが。
思えば、「流氷初日」は季節を感じるおなじみのニュースである。おそらく全国ニュースでも流れているだろう。
ということは、肉眼で調査する気象台の職員にも、全国に注目されるというプレッシャーが当然あるのではないか。どんな人が担当しているのだろうと考えると、ちょっと気になってくる。
毎日、屋上にのぼって観察しているのだろう。同じ人が毎日休みなく見ているとは考えにくい。
網走気象台の勤務シフト表には、日直ならぬ「流氷観察係」のマークが付いているに違いない。
うっかり自分の担当日を忘れて、見逃してしまったらたいへんだ。
見逃さないため、日中は何回も観察のために、屋上に上がっているのではないだろうか。今日は自分が係だと思うと、気になって他の仕事が手に付かなくなるんじゃないだろうか。
晴れていれば良いけど、雪の日だってある。猛吹雪ならどうせ見えないから、なんてサボるわけにもいかない。市民の方に「俺は昨日見たけど、気象台はまだ発表しないのかね」なんて言われたら面目が立たないではないか。
肉眼の観察だから、視力も大事だ。目が悪いと、よほど近づかないとわからないので、「初日」は間違いなく遅れるだろう。逆に、視力3.0相当など、ずば抜けて良すぎて、ひとりだけ「見えた」と主張されても困る。
流氷を見慣れている人じゃないと、間違える可能性だってある。流氷なのか、蜃気楼なのか、はたまたアザラシかの区別がつく人じゃないと。そこを間違える人がいるのかどうかは知らないけど。
たぶん、流氷観察係にもベテランと若手がいて、「見え方」の伝授なんかしているんじゃないだろうか。
流氷とアザラシの区別がつかず、いつもベテランに叱られていた若者が、次第に成長して、、、
「おやっさん! み、見えました! 初日です!!」
「ああ、もう、お前に教えることはねぇ」
そんなドラマが生まれたり、していて欲しい。
オホーツク地域に10年ほど住んでいたが、恥ずかしながら流氷を見に行ったことがない。世界的で最も低緯度に生じる流氷である。離れて気付く、あれはちょっともったいなかった。