見出し画像

声に出して読みたい品種

「珍子」という品種をご存じだろうか。もちろん、読みは「チンコ」である。

これは、日本で栽培されていた品種の名前である。

国内外の古い品種を保存している、農研機構・農業生物資源研究所ジーンバンクで検索してみると、いろいろな作物がヒットする。

  漢字の「珍子」:大麦、小麦、ナタネ。

  カタカナの「チンコ」:稲、大豆。


15年ほど前、「トリビアの泉」というテレビ番組で、

お米には「チンコ坊主」という種類がある

と紹介された。

北海道の古い品種だったので、「きらら397」や「ゆめぴりか」などで有名な道立上川農業試験場(現道総研上川農業試験場)でロケが行われていた。

当時の“説”は、背が短くて稲穂がちょうど股間の位置に来るから、というもの。最後に「チンコ坊主」で作ったおいなりさんを食べるという手の込みようだった。

※情報がどこかにないかとググってみたら、放送では82へぇという高得点で「金の脳」を獲得していたようだ。よくそんなメモを残してくれている人がいたものだ。ありがたい。


しかし、どうもこの説は正しくないようだ。

「チンコ」は漢字で「珍子」、珍しい子という説が有力らしい。「珍子」の名がつく品種は、当時としては背が低いものが多いとのこと。自然におきた突然変異で、草丈が短いものを珍重して「珍子」「チンコ」と呼ぶようになったようである。(出展:佐々木多喜雄氏「イネ品種名こぼればなし(2)チンコ坊主」.北農 74(1), 112-117, 2007-01)

上にも示したとおり、イネだけでなく、いろいろな作物に「珍子」があると言うことは、そういう呼び方が一般的だったということだろう。


そして、これを知ったときは、とても残念だった。なんだか大きな夢が潰えた気がした。


気を取り直して「チンコ」である。


北海道にも独自のジーンバンクがあり、道総研中央農業試験場のサイトで「植物遺伝資源データベース」がみられる。ここで品種名を検索してみると、最強の「チンコ」に出会える。

「チンコ裸」

「鬼チンコ」

いずれも六条大麦の一種、ハダカムギとのこと。

裸ですよ!? そして鬼ですよ!?

私はこれらを、二大チンコと呼びたい。


そして若者よ、農業試験場に就職して古い品種を栽培すると、何のてらいもなく「チンコ」を連呼できますぞよ。


※農研機構ジーンバンク、道総研中央農試とも、まじめな研究のための施設です。一般の方への種子提供は行われていませんので、ご了承ください。