なぞの突き指
8月に入って最初の朝、起き抜けに洗面所の引き戸を開けたとき、違和感を覚えた。
この感覚は、突き指だ。
左手人差し指の第1関節が鈍く痛い。突き指は何度か経験があるのでわかる。しかし、なぜなのか。いつやったのか。どこで。え、こわい、身に覚えがない。
昨日は一日家にいた。運動はしていない。あ、ちょこっとだけ腕立て伏せをしたがすぐやめた。地獄突きの練習はしていない。お酒も飲んでいない。
ひとつ身に覚えがあるとすれば、土日たっぷりかけて600ページ超の文庫を読み終えた。本の持ち方がおかしかったのだろうかと、念のため昨日のスタイルで文庫本を持ってみたが、人差し指にはまったく負担がかからなかった。これは原因ではない。
いま確かなことは、いま突き指の症状が左の人差し指に生じているということだけだ。
寝ているあいだになにかあったのか。
布団を敷いた左側は壁だ。まさか壁と戦ったのか。夢の中で壁を超えてきた巨人と命がけで戦ったのか。いや、まったく記憶がない。
身に覚えのない身体の痛み、年齢を重ねるごとに増えてきている。
思えば、五十肩もそうだった。突然右の肩が痛くなり、気にならなくなったと思ったら左の肩が痛み出した。そして、いつの間にかその痛みも消えていた。
あれか。もしかして、五十肩が末端にきたのか。
五十指?!
十本の指それぞれが順に痛み出したら、それはそれで困る。