無視されたシングルマザー・障がい児の存在/一斉休校に苦しむ貧困家庭/ごはん処「おかえり」上野 敏子さんに聞く

 初動が遅れた安倍政権の新型コロナウイルス対策は、政治利用と強権性を強めている。政府は「緊急事態宣言」を可能とする特措法「改正」案を国会で通過させ、現場を無視して前代未聞の一斉休校を指示した。それは人々に莫大な被害を与え、中でもシングルマザーや障がい児など弱者の声と被害は無視されている。
 大阪府豊中市でシングルマザーの支援を続けてきた上野敏子さんが営む「ごはん処・おかえり」は、2019年9月2日、阪急庄内駅近くにオープンした。子ども食堂として始まり、今では大人も含めた地域の居場所、シングルマザーにとってはセーフティネットとなっている。
 庄内の小学生は、学校から「自宅待機のための休校。外で遊んでいないか巡回する」旨を通達された。家に居場所がない児童のことは考慮されていない。
 3月16日、現場の声をきくために上野さんのもとを訪れた。上野さんは「親が働きに行く間、発達障がいをもった児童が来ています。私にも発達障がいの小学生の子どもがいますが、せっかく登校リズムがつくられていたのに、長期休校によって崩れてしまいました。学校が再開しても登校を渋って混乱が起きるでしょう。このまま不登校にならないか心配です」と話した。
 障がいのある児童は、予定の変更やキャンセルが理解しにくく、パニックを起こして暴れるなど、厳しい状況に追い込まれる場合もあるという。
 また、「気分が落ち込み引きこもっている母親が増え、『おかえり』にも顔を出さなくなりました。LINEでメッセージを送っても、返事がありません。年度変わり目のこの時期は、ただでさえ出費がかさむのに、コロナ不況と休校が追い打ちをかけました。お金がないからどこへも行けない。母親たちは息をひそめ、孤立し、ただただ過ぎ去るのを待っているようです。
 仕事は減ったのに休校で子どもが家で騒いでいる。ごはんをつくらなくてはいけないし、発達障がいをもった子どもは、急な癇癪など、対応に労力がかかり、親はストレスがたまります。この母親たちの心の疲弊が、子どもへのネグレクトや虐待につながりかねません」と心配している。
 ネグレクトされた児童は、自傷行為などのサインを出すという。「おかえり」に来る児童のなかにも、壁に頭をぶつける、爪を噛む、指の皮を剥くなどの行為が増えたという。自傷行為をしている児童に「痛くないのか」と聞いても「痛くない」と答えるケースがほとんどだそうだ。
 ひどい場合は、指の皮を剥きすぎたため、肉までえぐれ、壊疽してしまった児童もいた。上野さんが病院へ連れて行くと、医者に「ここまで自分でしといて痛くないんだったら大丈夫だよね?」と麻酔なしで生爪を剥がされ、「二度と行かない!」と病院を怖がるようになったそうだ。
 「おかえり」の経営は毎月赤字が続いている。現在は、上野さんの持ち出しと僅かなカンパで賄われている。しかし、これもいつまで続けられるか見通しは立たない。「カネがないこと」は、弱い立場の家庭にとっても、それを支えようとする地域の取り組みにとっても大きな障壁だ。「家賃・光熱費・食材の仕入れだけでも月16万円が必要です。ぜひカンパをお願いします」。  (編集部・村上)
■ごはん処 おかえり
住所:TEL 080―5319―1368(上野)
子ども0円:20歳以下の子どもは、いつでも無料でご飯が食べられます。月額会員(1万円)募集中!

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人民新聞
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