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「未来への大分岐」マルクス・ガブリエル、マイケル・ハート、ポール・メイソン、斎藤幸平/集英社/新書・352頁/発行・2019年8月

 「人新世の『資本論』」で、一躍その名を世間に知らしめた若きマルクス研究者、斎藤幸平氏が、その1年前に出版した対談集。哲学者マルクス・ガブリエル、ネグリとの共著「帝国」で著名なマイケル・ハート、経済ジャーナリストのポール・メイソンという、気鋭の3人との対談は、「資本主義社会をどう変革するのか?」という大命題について真正面から語り合っている。
 年代的に見れば、対談者の中でマイケル・ハートとポール・メイソンは斎藤氏より年長。マルクス・ガブリエルとは同世代。だから、年長者2人への斎藤氏のつっこみは鋭く、興味深い。一方、同世代であるマルクス・ガブリエルとの対話が一番はずんでいたように感じる。
 考えさせられる切り口はいくつもある。「コモン」の再生という課題もその一つ。〝民主的に共有され、管理されている社会的な富〟をコモンと呼んで、資本主義はコモンを破壊してきた、と主張。「その再生をめざす社会運動こそが資本主義体制を乗り越えるカギだ」と論じている。
 民主主義の本質は、国民国家体制とは相容れない、とするマルクス・ガブリエルの主張にも考えさせられる。ベーシック・インカムについてのマイケル・ハートの考え方に斎藤氏が疑問をぶつける下りもおもしろい。
 深く、静かに進行する地球生命体の危機。その危機を直感し、新鮮な視点から歴史に学ぶ若者たち。そこに可能性を感じることができた一冊。     (M)

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