ハンガリーで残業時間の上限引き上げに怒り
【視点論点】「奴隷法」と専制政治へのハンガリー人民の反乱 1670号 2019年1月20日 脇浜義明
2010年、ハンガリーで極右のヴィクトル・オルガーン政権成立、日本の反動勢力と同様、議会の3分の2を占め、好き放題をしている。移民排外を掲げて登場した極右政権を嫌って、皮肉にも西欧へ逃亡する移民が数十万人規模に達している。2018年12月、オルガーン政権は一連の反人民的法案を成立させた。
例えば、三権分立を無視する政府直轄裁判所の設立法。シンクレア・ルイスの小説『イット・キャント・ハップン・ヒア』で、ポピュリスト戦術で独裁大統領となった人物もそういう裁判所を作った。
トランプ大統領も、自分に都合のよい判事を任命するが、さすがにそういう裁判所は作っていない。安倍も同じだが、裁判官が自主規制して安倍にすり寄ることにとどまっている。
特に民衆の反感を買ったのは、新労働法だ。年間250時間を残業の上限としていたのを年間400時間とし、そのうえ残業手当支払いを3年間遅延することを認めるという内容で、民衆は「奴隷法」と名付けて反対デモを行っている。
政府は、ドイツの投資家がもっと投資に適した労働環境を整備せよと要求していること、外国で働く若年・中年労働者が多くなったこと、高齢退職が増加したことなどに起因する労働力不足を理由にあげたが、移民排斥政策には触れなかった。
野党と民衆が共闘し政権にすり寄る国営TV局を占拠
日本の安倍は、人権無視と低賃金で外国人労働力を輸入する方法を選択したが、オルガーンは移民排斥を訴えて政権を取った手前、移民依存を打ち出せないのだ。
また、ハンガリー人民にとっては、オルガーンのポピュリズムに乗せられて彼に権力を取らせたことへのしっぺ返しともいえる。移民に吐いた唾が自分に返ってきたのだ。しかし、反対する権利は当然ある。主として若者が中心の街頭反乱がブタペストを揺るがしている。「このままだと俺たちも外国で働くために出国するぞ」と叫んでいる。
日本の安倍政権は、残業上限を原則として年間360時間としているが、臨時または特別条項として年間720時間まで認める場合もあるとしている。ハンガリーよりも酷い内容だが、反乱は起きない。
反乱は「奴隷法」に対してばかりでなく、オルバーン政権に協力するメディアにも向けられた。12月17日、いつも内紛ばかりやっていた野党議員が共闘し、民衆とともに国営TV局へデモ、建物を占拠した。翌日に警察によって排除されたが、野党が統一して民衆とともに行動したのは初めてである。日本の安倍はメディアの社長と夕食会を定例化してメディアを子飼いにしているが、それに抗議してTV局を占拠した国会議員はいない。
世界的に右傾化・専制主義化の潮流が進行しているが、それに対する反乱も芽生えている。
(参考文献…「Hungarians Rise up Against Anti-Worker “Slave Law”and Growing Authoritarianism」リアルニュース・ネットワーク2018年12月21日)
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