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国会質疑で教科書の「従軍慰安婦」記述が削除。教育への政治介入で戦前回帰を進める維新の醜悪さ

高校教師 木坂 明

 2020年12月に「新しい歴史教科書をつくる会」(つくる会)が、中学社会の教科書に「いわゆる従軍慰安婦」という用語があることを問題視し、萩生田光一文科相(当時)に訂正申請の勧告を出すよう求め、2021年には日本維新の会や自民党の議員が国会で問題視する質問をした。「『従軍』には『軍による強制連行』という誤ったイメージがつく」という主張である。
 「『従軍慰安婦』または『いわゆる従軍慰安婦』ではなく、単に『慰安婦』という用語を用いることが適切であると考えており、近年、これを用いているところ」とする4月27日閣議決定の答弁書の背景には、日本維新の会の馬場伸幸幹事長の質問主意書がある。
 文部科学省は5月、既に検定に合格した教科書であるにもかかわらず、教科書会社を対象に異例の説明会を開き、記述の訂正申請は「6月末まで」と示した。個別の記述についてわざわざ説明会を開くのは極めて異例であり、文部科学省側は「あまりないことだが、国会の議論を紹介する目的で、訂正は発行者の判断」と説明するが、発行者側には、訂正せよとの指示と受け止められてしまう。
 結果的に、教科書会社7社が訂正申請を文部科学省に出し、9~10月に承認された。中学社会や高校の地理歴史、公民の教科書にある「従軍慰安婦」と「強制連行」の用語は削除された。
 大阪府の教育への介入を進めてきた維新の会が、国のレベルでも今後介入を進めてくることが想定されるなかで、それをはね返す人権教育の構築が求められる。今回の教科書記述統制の動きに対して日本軍「慰安婦」問題全国行動は抗議声明を発表しているし、11月には、同関西ネットワークによる集会も予定されている。
 大阪の小・中学校では、平和教育・人権教育に関連づけて修学旅行や総合的な学習の時間で沖縄戦や広島・長崎原爆をテーマにしている学校も少なくない。近年、人権教育のテーマとしてはLGBT当事者による講演等も増えている。また、SDGs(持続可能な開発目標 Sustainable Development Goals、17の世界的目標)にからめて人権問題や社会問題について生徒の主体的取り組みを促す実践も増えている。
 BTS(防弾少年団)に代表される音楽やファッション、ドラマの世界では、韓国に親しみを感じ、憧れている生徒の方が多数派に思える。維新による介入を許さない人権教育の構築が求められている。


写真:日本維新の会 馬場伸幸衆議院議員(本人ツイッタ―より)

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