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【2/14労働は廃絶できるのか?】『労働廃絶論』久保一真×『悪口論』小峰ひずみ対談を開催しました

 2025年2月14日(金)に人民新聞社で、昨年「悪口論」を出版された小峰ひずみさんと、「労働廃絶論」を出された久保一真さんとの対談を開催しました。簡単な報告を書かせていただきます。(編集部・朴偕泰)

 「悪口論」は社会に溢れている私たちを隷属させる言葉の暴力性を紐解き、それへの反論や対抗するための方法を論じています。また、運動家の生き方を強く問い、さまざまな場面で何を私たちは考え抗うのかを語られています。

 「労働廃絶論」はデイヴィット・グレーバーの「ブルシットジョブ」にも影響を与えた本で、アメリカの作家のボブ・ブラックによって書かれました。労働の本質を「強制され苦役」とし、そのせいで休日が労働からの疲労を癒すための時間へと変貌し、私たちの自由時間を奪っているのだと論じています。

 今回はダブル出版記念と銘打たれて開かれましたが、そのほとんどが【労働は廃絶できるのか】に割かれ、休みなく2時間半に及ぶ熱烈な議論が繰り広げられました。毎日noteに労働廃絶への思いを投稿し続ける久保さんの本気度に感化され、今回の対談をオファーしたと小峰さんは語っていました。小峰さんから久保さんへ、矢のような質問が放たれ、労働廃絶への活発な議論が交わされました。

 元々、求人広告の仕事をしていた久保さん。労働をあっせんする側として、求人広告の一番の取引先である「劣悪な労働環境の会社」と様々な現場の矛盾を見てきたと言います。その中でnoteに労働の悪を書いてきたのが「労働廃絶論」執筆のきっかけになりました。

 「労働廃絶論」の解説ページの締めとして、ベーシックインカム(基本所得保障)導入によって労働廃絶を実現すると書かれていました。対談でも久保さんはベーシックインカムについて、「子や孫の代まで路頭に迷わない」という生存への安心感だと言います。生きることへの無条件の保障、それこそが私たちを縛り付ける労働からの解放につながるのです。
 そして、「たとえば尾田栄一郎の子供にパワハラできますか?財産状況が豊かであれば脅しは効かない」とも。どこでも生きていけるという安心感があればこそ、私たちは抑圧への抵抗を実践できるということです。

 加えて久保さんは、他者のために何かしてあげたいという「貢献欲」は誰にでもあるにもかかわらず、労働によって生産と遊びが切り分けられるようになり、他者への貢献がさも面倒なお世話かのように思い込まされていると言います。
 確かに現代ではテーマパークに遊びに行ったりYouTubeを見たりするような、最初から最後まで消費者側でいられるものだけが遊びとみなされ、休日にわざわざ被災地へボランティアに行く人たちを変わった人だと思ってしまいます。休日にデモへ行く私たちも一定数の人からは変人だと思われているでしょう。それこそが私たちから相互扶助の意識を奪い去り、“遊び”によって私たちにもたらされる喜びの質が極めてジャンクなものに変えさせられている原因なのです。食欲/性欲だけで人の願望が完結しているという誤りから自分自身を解き放たなければいけません。

 「悪口論」について久保さんから小峰さんへ質問がありました。それは、「“そこで働くのは生きるために仕方がないんだ”という言葉は、“良い暮らしをしたいから”だと誤魔化さずに言わなければならない」という箇所についてでした。正しいけど厳しい言い方だと久保さんは言いますが、小峰さんは「“飯を食うために働かなきゃいけない”という言葉が、なぜ比喩的な表現になっているのかを考えなければいけない」と返しました。
 なぜ本来は不必要な消臭剤剤を売るためのCMを作っているのか、なぜ自分は働かず他の従業員の働きぶりを監視して評価しているのか、なぜ辺野古の海を埋め立てるために土砂をダンプカーに積んで運んでいるのか、なぜ、なぜ、、、。生きるためだけなら他の仕事もあるわけで、つまりは給与がいいからであり、広い部屋で美味しいものを食べて暖かい布団に寝られるからです。その欲望を小峰さんは否定しません。
 しかし、もしそれを“生きるため”と自分で誤魔化し続けていると、ブルシットジョブを正当化し続けることになります。意味のない、もっと言えば有害な仕事に意味を“見出さないように”し続けるのは人生の意味を毀損し続ける、ある種の自傷行為ではないでしょうか。自分の感情を正しく捉えて直すことによって、労働の意味を自分の中で問い直し、他者貢献の中で生きる実りある生を実現することになるでしょう。そんな風にして労働廃絶へと接近する大事な問いだと感じました。

 また久保さんが「悪口論」の中で一番お気に入りのフレーズとして、【人の感情以上に尊重されるべきものなんてない】を挙げました。
近年の「社会的弱者さまのお気持ちwww」と嘲笑うような姿勢がネットで広がる中、気持ち以上に大事なものはあるかと言い切ることが重要になっています。

20人もの方に来ていただき大盛況で閉幕となりました。ありがとうございました。

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 今回の対談の様子はアーカイブにも残っています。小峰さんのYouTubeチャンネルで限定公開されていて、人民新聞の1月20日号と2月5日号ともに8面に掲載されてあるQRコードからご視聴いただけます。定期購読も募集中です。QRコード掲載の過去号もともに送ることができますのでお気軽にお尋ねください。XやFacebookのメッセンジャーなどでも受け付けています。

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