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徹底比較!【れいわVS維新ベーシックインカム】維新政治の果てに待ちうける大増税時代とは(10月25日号)

編集部 山田

 投票日迫る衆院総選挙。コロナ対策、経済再生をはじめさまざまな争点が提示されているが、「分配」=生活保障が最大の争点となりつつある。「バラマキ合戦」との揶揄もあるが、長引くコロナ禍で貧困・自殺が広がるなか、命と生活を守るための「分配」は、格差是正=平等社会へ向けた政策としても重要だ。
 日本でもようやく「分配」の究極ともいえるベーシックインカム(以下BI)が現実的政策として浮上してきた。
 特に維新は「日本大改革プラン」の目玉政策としてBIに言及。れいわ新選組も「れいわニューディール」を打ち出して、BIを含む、社会保障制度の強化を謳っている。
 北欧のデンマーク・フィンランドでは、社会実験も終わり本格導入の段階にあり、コロナパンデミックを経てインドなど導入を急ぐ政府も増えている。新自由主義に奉仕する財政規律論は、コロナ禍でなりを潜め、「困窮者の所得向上をとおした経済再生」という道筋が語られている。その方策としてもBIは現実的選択肢となりつつある。
 しかし、新自由主義派のBIと左派のBIは、似て非なるものである。れいわと維新のBIを比較しながらBI論議を深めたい。

ーーコロナ禍 世界で広がるベーシックインカム導入

 ベーシックインカムとは、「全ての人に個人単位で資力調査や労働要件を課さずに無条件で給付するお金」(「ベーシックインカム世界ネットワーク」の定義)。一律給付で生存と尊厳を守り、格差を是正する意義がある。日本では、竹中平蔵・東洋大学教授(元経済財政相)が、一定所得以下の国民を対象に毎月7万円を支給するBIの導入を提言した(2020年9月)ことで、政策課題として急浮上したが、生活保護や年金などの社会保障費削減とセットだったため、強い批判が沸き起こった。
 こうしたなか日本維新の会は、今年8月30日に記者会見を開き、「日本大改革プラン」を発表。1人6万円のBIを提示した。ただし、同党のBI案も、生活保護の扶助費一部、児童手当(1万5千円)、基礎年金等を廃止するとしており、大石あきこさん(れいわ新選組・衆院候補)の試算によると、①子どもが1人いるシングルマザーは、月約15万円の生活扶助が12万円に減り、②単身40代の障害者は、生活扶助費約10万円が6万円となり、4万円の減額となる。「ほんまに必要な人なのに、マイナスになる人が出る」と批判している。
 さらに橋下徹氏(維新・法律顧問)は、「解雇規制の緩和とセット」を強調。 「僕のBIは、最低限を保障する代わりに、徹底的に切磋琢磨、競争してねという考え方だ。額は生活保護よりもちょっと下がる」と語っている。
 維新の「日本大改革プラン」は、財政収支の黒字化を原則としており、増税と社会保障費削減は不可避。また労働市場の流動化、解雇規制の緩和、金銭解雇の導入も謳っており、新自由主義派のBIの特徴を備えている。
 一方、れいわニューディールは、積極財政、累進課税、格差是正を原則としている。具体的には、①コロナ禍3カ月は月20万円。その後は月3万5千円以上の給付を提案している。維新案よりも支給額が低いように見えるが、子ども手当=月3万円、デフレ脱却給付金3万円に加え、消費税廃止によって平均世帯では年間25万円の減税となり、生活保護などのサービスは削らないうえに社会保険料の負担削減として月5千円キャッシュバックするとしている。

ーー財源は一律増税の維新ベーシックインカム案


 では次に、財源を見てみる。維新案は、BIの予算を約100兆円として、すべて税収で賄うという。このため、所得税増税=所得控除の廃止によって年収500万円の人は約2万9千円の増税となる。
 一方れいわ案の財源は、新規国債を主な財源としている。国債を日銀が買い取り塩漬けするというものだ。反緊縮=積極財政論の立場から、格差是正のため富裕層への増税によって財源を補う案だ。
 国債発行の上限は金額ではなく、インフレ率2%を設定しており、インフレ率=2%を超えると調整・減額が検討される。
 れいわが参考にしたという薔薇マークキャンペーンが提案する「99%のためのベーシックインカム構想」では、2階建てを提案している。1階部分は、安定的な給付額を保証するもので、新税の設置や、所得税等の増税(所得控除の廃止と税率の引き上げ)によって確保できる税収額に応じて1人1月あたりの給付額が決められる。これで45兆円弱の増収が見込め、1人1月あたり3万円弱のBIが可能としている。
 2階部分は、政府と日本銀行の協調による貨幣発行(国債発行と日銀の買い入れ)によるもので、均等の給付を行うことで景気回復を促し、物価安定目標を達成することを目的としている。1階部分と2階部分の合計で、当面は1人1カ月10万円(三人家族で年額360万円)の給付が可能としている。
 「何があっても心配するな」(山本太郎氏)というれいわ案に対し、解雇規制緩和とセットで「徹底的に競争してね」という維新のBIは、格差是正どころか貧困者に厳しく、金持ちにやさしいBI。違いは明確だ。   (編集部・山田)

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